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四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2018年7月~9月 
Published:2018-07-05

いま採用現場で起こっている5つの動き~人事担当の皆さんへの提言~

2018年5月期の完全失業率(季節調整値)は2.2%。就業者数は6698万人。前年同月に比べ151万人の増加。65か月連続の増加となりました。この水準は、1990年前後のバブル期と変わらない状況といわれています。また有効求人倍率も1.60倍と極めて高くなっています。2017年度の平均有効求人倍率は1.54倍でしたが、2010年から8年度連続で増加した結果、1973年度の1.74倍以来、44年ぶりの高水準に戻っています。

「日本の失業率は本当の数字をとらえていない」という意見があります。これだけ求人が多いのに賃金があまり上昇していないことや、就労活動を行わず失業保険ももらっていない人が一定数いる点をとらえたものです。またこれだけ求人案件があっても、希望の職が見つからないという声も度々耳にします。どれも頷ける意見ですが、キャリアマーケットにおける求人数の増加はたしかで、「超売り手市場」ともいうべき状態は続いています。

このような売り手市場下における売り手側(個人/求職者側)の課題は折に触れてのべてきましたので、今回のコラムでは、買い手側である求人企業の採用担当者の皆さんを対象として、現在のキャリア採用・中途採用マーケットについて解説し、その課題と解決案を私見ながら述べさせていただきたいと思います。(ミドルマネジメントやトップマネジメント人材の皆さんにとっては、転職された場合には、すぐに採用者となり立場が逆転することになりますので、採用側の課題を知っておくことも重要です。ぜひご一読ください。)

資本系や業種、企業規模によってもちろん課題と対処に違いはあるのですが、本稿ではアクシアムが得意とするグローバル人材、イノベーション人材、あるいはミドルマネジメントやトップマネジメント人材の領域について、主にお話をさせていただきます。

アクシアムはこれまでの約25年間で、多くの企業の採用支援をさせていただき、マッチングを積み重ねることができました。その内訳としては、日系企業はもちろんのこと、外資系企業、ベンチャー企業、事業再生や事業継承を課題とする企業、革新を進めたい中堅企業などです。

これらの企業の採用で特徴的なのは、単なる人手/社員数の充足が目的なのではなく、その質が問われるキャリア採用であること。経営改革や革新を進める経営能力やマネジメント能力を備えたコア人材、リーダー人材を社内で見い出すことができず、社外からの登用が必要だった点です。具体的には、大手企業のグローバル化に伴うミドルマネジメント、日本に参入する外資系の日本支社長、ベンチャーや事業再生・継承案件のCxO、PEやVC、あるいは経営にかかわるプロフェショナルファームの求人をイメージしていただくとよいと思います。

これらの領域で起きている新しい動き、課題は以下のようなものだと考えています。

採用現場で起こっている5つの新たな動き

(1)オファーテイク率の低下

今まで採用に優位だったメジャーな企業でもオファーを辞退する人が急増。この動きは外資系大手企業やプロフェッショナルファームでも同じです。知名度も報酬も高い会社であっても、その採用対象となる人材は必ずといっていいほど他にも採用通知を手にしており、オファーテイク率が下がっています。たとえ業界ナンバーワン企業でも絶対に有利ということがなくなりました。

(2)ベンチャー間での人材争奪戦

ベンチャー企業の求人が多くなったことで、ベンチャー同士での優秀な人材の取り合いが生じています。かつてに比べてベンチャーを志向する若手人材は多くなっていますが、CxOクラスでは、まだまだマーケットに出てくる人材は限定的。一見、大企業からベンチャーへの転職者が増えたかにみえますが、ベンチャーが求めるコンピテンスや強みをもつ人材は大企業出身者に少ない傾向で、たとえ年収を下げて飛び込んだとしてもその職歴・職能が生かせなくなっていることがそもそもの問題です。特に45歳以上では顕著で、ときに大企業での成功体験が邪魔になるほど。しっかりとしたコンピテンスをもった大企業出身者やプロフェッショナルファーム出身者の供給が少ない状況です。大企業とベンチャー企業が候補者を取り合うことは、候補者の志向性の違いから少ないのですが、優秀な候補者をめぐるベンチャー同士の争奪戦が激しくなっています。

(3)採用スピードが加速

選考から採用決定のスピードが上がっています。もちろん企業は質の高い候補者を見極めるべくしっかり審査すべきなのですが、他社のオファーまでの所要期間が短くなっていることで、従来のままの審査プロセスをとる企業が採用に苦戦しています。優秀な人材かつ積極的に動き始めた人材には、転職活動をはじめて2週間もしないうちに、必ず企業の直接採用部門あるいはサーチ会社から多数の声がかかります。審査プロセスを4週間などで設定している企業は、自社の採否が決定できる頃には、すでにその候補者には多数のオファーが出ていて、先にそちらに意思決定されてしまっている、といった状況が見られます。

(4)貴重な人材のマーケットイン

現在のような売り手市場では、本当に優秀な候補者、普段なら転職を考えなかった層の人材もマーケットに出てきます。「売り手市場だから採用が難しい」とばかり捉えるのではなく、売り手市場に合わせた採用方法を模索し柔軟に対応すべきです。通常なら出てこない優秀な候補者を発掘し、採用に成功している企業があることを知っておいてください。

(5)報酬額の問題

採用人材のスペックや要件を非常に高く設定している割に報酬が低い企業は、やはり苦戦を強いられ、採用活動が長期戦になっています。最終面接を終えていよいよオファーを出しても、高い報酬提示をする他の企業に候補者を奪われる・・・そんな状況が見られます。候補者の強みや人柄を厳正に審査し、候補者もその企業が第一希望で、当人との報酬レンジのすり合わせを終えているにも関わらず、です。最終段階で家族が報酬の低さを受け入れられず、転職に反対してしまう例を最近よく多く耳にします。売り手市場では本人も家族も「探せばもっと条件や報酬の良いものがあるはず」と期待しがちなもの。採用側が高いスペックを期待するのと同様に、個人側も高い報酬を期待する傾向がみられ、どちらにも妥協がなくなっています。

それでは、このような状況では採用側はどのように対応すべきなのでしょうか? 今後のマーケットの変化を踏まえつつ、その対策を私見ながら申し上げます。どれもベーシックに感じられるかもしれませんが、意外にも対応できていない企業が多いものです。ぜひ自社のご状況を振り返りながらお読みいただければと思います。

対策(1)募集活動前に、しっかりと自社の情報をまとめておく

採用の場では、自社の戦略、強み、魅力、業界動向、現状や将来の見通しなどを、企業としての認知度が高くてもそうでなくても、改めてゼロからストーリーとして伝える必要があります。業界として一般にネガティブな情報が伝わっているようであれば、それも払しょくする必要があります。ベンチャーなら「報酬が悪い」「倒産の可能性がある」「将来に不安がある」と考える方もいますし、プロフェッショナルファームは「労働環境が劣悪」「離職率が高い」などのイメージを持っている人もいます。そのような意識・不安をじつは持っている候補者に対して、「そんなことは心配しなくても大丈夫」というだけではまったく意味をなしません。例えば「実際の残業時間はこのようになっています」など、より具体的な説明を面接の早い段階から行っておき、候補者の不安の芽を摘んでおくべきです。

対策(2)募集要項はできるかぎり正確に、内容が濃いものを

ポジションの職責や求める要件が曖昧なままでは、募集情報も薄くなります。候補者からすると応募の是非を判断できないことになり、サーチ会社にとっても多数存在する潜在候補者から、どの候補者に声をかけるべきか絞り込みが甘くなります。また審査が始まった後も、候補者側の職責・求められる要件等に対する理解が遅れ、相互に無駄な時間や行程が生じてしまいがちです。募集要項はできるかぎり正確に、内容の濃いものを作成してください。

まずは所属部署、タイトル、レポートライン、職責、そのポジションに求められるミッション、そしてそのポジションの職責をこなせる候補者の要件(経験、資格、スキル、強み、人柄。能力要件と意識要件。年齢層や報酬レンジなど)を明文化しましょう。例えば「経営企画部門の部長を探したい」という情報のみの場合、年齢と業界と職種を合わせるだけの応募あるいはサーチ会社からの紹介となってしまい、求人求職の双方にとってハッピーな結果につながりません。

プロファイルがしっかり設計されている場合は、ムダな書類選考や面接をする必要がなく、期待できる候補者のみに審査時間や労力を投下できます。また早い段階から候補者の理解も深まりますので、モチベーションがアップしやすく、さらには条件交渉や合意形成も容易になります。最初の段階で手間はかかりますが、トータルにみると審査のスピードアップ、採用人材の質の向上、オファーテイク率の向上が期待できます。

対策(3)サーチ会社を使いこなす

一般募集できない機密性の高いキャリア採用・募集においては、候補者の紹介実績や潜在候補者とのネットワークの有無、担当コンサルタントの実績、そのサーチ会社独自の強み(紹介領域)などでサーチ会社を厳しく選定すべきでしょう。対象にならない候補者を出してくるところや、候補者を出せないところに依頼するのは無駄となります。ちなみに最近はリテーナー型のサーチに依頼しても成果が出ないことも増えているようです。早期に結果が出せる場合と、何ヵ月かかっても成果が出ないケースの二分化がみられます。

対策(4)候補者発掘に長けた担当者を

SNSや採用ポータルの普及により、自社での直接採用に力を入れる企業が増えてきました。ですから採用担当者として、候補者発掘に長けたいわゆるキャリアコンサルタント経験者を置くのも方策のひとつになるかもしれません。

対策(5)上手くいかない場合には、設計を変える

しっかりプロファイルを設計して募集要項を明文化しているのに採用が上手くいかない場合には、設計を変更して採用目標の達成にこだわることも必要でしょう。求める要件を変更する、報酬をアップする、対象年齢を広げる、社内で人事配置を見直しポジションそのものの採用の是非を再検討する、など。目安として2ヵ月経っても成果が見えない場合は、これらを見直すことをお薦めします。

対策(6)トップまたはエースを採用の前面に

いま採用で大きな成果を出している企業の特徴、共通点が一つあります。それは、トップまたはエースが採用の前面に出ていることです。それらの企業は、書類選考の時点で採用対象として可能性が高いと判断できれば、初回面接からトップやエースを投入して、審査ではなくスカウトをする勢いで候補者を口説きにかかっています。ベンチャー企業なら創業社長、外資系企業なら人事の役員クラスや日本支社長、あるいは採用部門の採用決定者などになります。最初からトップクラスが投入されますので、口説きながら、かつ採否の決定も行うスタンスです。そして2次面接では部長や他の役員、その他重要ステークホルダーが具体的なスキルセットやカルチャーなど、募集要件へのフィットを確認します。このように、スタッフ、ジュニアマネージャークラスの採用プロセスでは、下から順に上にあげていくのが一般的でしょうが、その逆のやり方で成功している企業があります。(ただし、このやり方の場合には書類選考が重要です。エクゼクティブクラスに最初の面接に出てもらうことになりますから、応募書類の目利きがいるとも言えます。)

いかがですか?

現在の売り手市場がいつまでも続くことはなく、反転が起こることは必至です。そうなれば買い手が有利になるかと思えば、一概にそうとも言えません。経済がひとたび反転すればリストラが横行し、応募者だけがやみくもに増加します。優秀な候補者を取り合うことは少なくなりますが、マーケットになかなか優秀な候補者が出ない現象が起こります。

どんな市況のときにも採用計画を達成するためには、候補者からの意見を真摯にヒヤリングしつつ、しっかりとした設計と柔軟な対応をとることが必要といえるでしょう。日ごろから候補者からは直接聞き取れない本心や本音の部分を、サーチ会社などを通じて集めておくのもひとつです。また、募集前の立案段階からサーチ会社を上手く活用し、自社ならびにそのポジションの採用戦略、採用計画についてパートナーとして意見交換を行い、広い視点で採用活動を進めることをお薦めします。

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