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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2026年1月 2026.01.08
新しい秩序とキャリアを見つけるために
社会の不確実性の高まりにより、雇用の継続性や組織への帰属意識が急速に弱まり、他者との関係性も弱まっているように思います。一方で、新しいキャリアの機会は従来の枠組みの外側、思いもかけない接点から生まれています。
私たちはいま、単年度の変化ではなく、数十年単位で進行するキャリア構造の大転換の只中にいます。
所属型からJOB型への構造転換
日本におけるキャリアは、会社名・肩書(タイトル)・年功序列を軸とした「所属型」から、役割・目的・貢献価値を軸とする「JOB型」へ明確に移行しています。従来の「所属型キャリア」では、「選ばれること」が目的化し、過去の実績や序列に依存した意思決定になりがちです。変化の速度が上がるほど、こうした前提は機能しなくなります。一方、「JOB型キャリア」では、会社名や業界ではなく「何を実現したいか」を起点にキャリア選択が起こります。選ばれようとするのではなく、相手との関係性を創ることを重視し、変化そのものを機会として捉えます。
まず、「所属型キャリア」思考の人と、「JOB型キャリア」思考の人の違いを述べます。もしご自身が「所属型キャリア」のタイプに近いと感じたら、一刻も早い「JOB型キャリア」へのシフトをお勧めします。
所属型キャリアの特徴
会社名、肩書(タイトル)、年功序列など、過去の常識に捉われたキャリア選択は、自己否定的で悲観的なものになりがちです。応募先が見つからないのは「選ばれていない」のではなく、主体的に「選んでいない」「見ていない」「変化を捉えていない」、すなわち自ら“ドアを開けていない”だけなのです。
会社の知名度や他人からどう見られるかが判断軸となり、求人への応募(エントリーシステム)を通じて「選ばれよう」「評価されよう」とする行動様式になります。自分の学歴や職歴を高く評価してくれる場所を探し、キャリアアップや右肩上がりの年収、線形的なキャリアデザインそのものを目的にしてしまいがちです。その結果、いわゆる「勝ち組」に所属することが最終目的となり、自分の人生の意味を見失うことも少なくありません。科学技術の進歩や政治経済の変化に翻弄され、既存の既得権益のヒエラルキーを肯定する側にいたにもかかわらず、そのループから外れた瞬間に仕事ができなくなってしまうこともあります。
JOB型キャリアの特徴
「JOB型キャリア」は、“目的”から選びます。会社名・肩書(タイトル)・業界ではなく、自分が何を成したいのかという目的を起点にします。過去の常識・価値観・既成概念に捉われず、社会や時代の変化を見つめます。大きな潮流から小さな変化を見つけるために、積極的に動きます。「選ばれよう」とするのではなく、相手と自分の関係性を生み出そうとする行動規範を持ち、相互に選ぶ行為の結果として、新しいキャリアの機会につながるのです。
転職活動においてレジュメをばらまくことはしませんが、自分の目的=Aspiration(人生の目的、軸、意思)に触れる可能性があるものについては、幅広くアプローチ(カジュアル面談からスタートするなど)します。異なる価値観を持つ人々との対話を通じて、キャリアを見つけていきます。新しく始まる科学技術の進歩や、政治経済の変化にも敏感です。
「JOB型キャリア」で新しい機会を見つけるための2つのポイント
つぎに、「JOB型キャリア」思考の方がどのように新しい、発展的なキャリアを見つけているのか。数あるケースの中から、マッチングに成功した人たちに共通する特徴を2点述べます。
1)スピード
グローバルマーケットで10年後の時価総額1兆円企業を目指す、あるディープテック系グロースベンチャーからCFO求人の依頼を受けたときのことです。私は即日20名の潜在候補者にコンタクトし、募集要項を説明しました。うち5名の方から即座に応募同意を得て、その週末に英文レジュメをアップデートしてもらい、週明けには当該企業へ推薦を行いました。しかし、依頼から9日目にはすでに採用が決定しており、残念ながら5名の方は面接の機会すら得られませんでした。
衝撃的なスピードです。海外のサーチファーム(紹介会社)では、3日以内に100の単位で採用企業へレジュメを提出するともいわれています。候補者もサーチファームも、それだけのスピード感で動いているということです。日本での企業の知名度がなくても、株主、ビジネスモデル、テクノロジーを理解する意味でも、とにかく早くドアを開ける必要があることを学びました。
この経験から、私自身も過去の常識を捨てました。もはや事前に十分な業界研究を行ってから応募可否を判断する余裕はなく、常にアップデートされたレジュメを持ち、カジュアル面談等から素早く相手(採用企業)と関係性を創ることが、機会損失を防ぐ鍵になります。重要なのは、できるだけ初動を速くし、逆に最終判断は慎重に行うことです。スピードとタイミング、2つの時間軸を意識する重要性は増しています。
2)100社の中の1社(99%と1%)
「所属型キャリア」思考による転職では、過去の学歴・職歴を高く売ることや「やりがい」を得ること、あるいは転職そのものが目的になりがちです。一方、「JOB型キャリア」思考での転職では、会社を変えることではなく、新しい環境で自分がどれだけ貢献できるか、組織や社会に意味のあることができるかを問います。20代であろうと50代であろうと、年齢に関係なく「これからの人生の時間をどこに投資するのか」を見つける活動といってもいいのかもしれません。これはまさに、私たちアクシアムが提唱してきた展望ある転職=“展”職と重なるものであり、『JOB型“展”職』といえるものです。
上記のような本当に自分に合ったキャリアを見つけるには、100社の中の1社を見つけるくらいの覚悟、99%が無駄でも残りの1%を探すような覚悟が必要です。ただ実際には、100社にレジュメを出すことも、100社と面接することもできません。だからこそ、私たちのようなサーチファームの意義は今まで以上に高まっていると感じています。
AIがレジュメを読み込み、求人を検索・提案し、志望動機まで作成してくれる時代が始まっていますが、AIが提示するものは過去のデータの延長線に過ぎません。キャリアコンサルタントは、対話の中で候補者自身も気づいていないAspirationを引き出すことがあります。これはAIには不可能です。そのAspirationを起点に、100社の中から最適な1社の機会を見つけ出します。
エジソンが、以下のような名言を残したことは有名です。
“Genius is one percent inspiration and ninety-nine percent perspiration.”
(天才とは、1%のひらめきと99%の努力である)
しかし後年、「99%の努力も、1%のひらめきがなければ意味がない」と言いたかったという趣旨の日記が見つかったという話もあるようです。
1%のひらめきが、いつ起こるのかはわかりません。努力に努力を重ねた最後にひらめきが訪れるのか、努力を重ねている間にひらめきが生じるのか、失敗から偶然に異なるひらめきを発見するのか・・・わかりませんが、エジソンの言葉にあるように、努力だけでもひらめきだけでも成果は生まれません。
キャリア選択も同様で、正解が用意された選択肢はなく、自ら仮説を立て、修正し続ける自由記述型の意思決定です。変化が常態化する時代においては、変わらないAspirationを軸に、環境に応じて役割を更新し続けられる人が、結果として持続的に成功します。
『JOB型“展”職』とは、会社を変えることではなく、「人生の時間の投資先」を見極める経営的意思決定であると、結論付けられるのかもしれません。ますます変化が激しくなるであろう2026年のスタートに際し、この『JOB型“展”職』こそ、私たちが提唱したいキャリアの形であるとお伝えしたいと思います。
関連情報
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)
