転職コラム注目企業インタビュー

株式会社TRYFUNDS2019.06.06

「挑戦をカルチャーに。」 この言葉をビジョンとして掲げ、世界中の誰もがその環境に関わらず、挑戦できる仕組みをつくることを事業の根幹とする気鋭の企業があります。株式会社TRYFUNDS(トライファンズ)です。

社名が意味するのは、「TRY=挑戦」を「FUNDS=蓄積させる」こと。未来をより良くするための良質な「挑戦」を数多く生み出し、それを蓄積させ資産とすることで、さらに大きな「挑戦」への投資ができるようなカルチャーを創りたい、との想いがそこには込められています。

そんな異色の企業を率いるのは、代表取締役CEOの丹野裕介氏。幼少の頃から水泳選手として活躍され、オリンピックを目指すもケガをして挫折。しかしそこからビジネスの世界へ転身し、早稲田大学在学中にアスリート支援ビジネスを起業。卒業時に入社したリクルートでは人材紹介事業に携わり、海外ビジネスの経験を積まれました。その経験とネットワークを活かし、2012年、24歳で株式会社TRYFUNDSを創業されています。

同社が手掛けるのは、日本企業の海外進出支援、ファンド運営、事業投資、ハンズオン支援、戦略コンサルティングなど様々。2018年からは『M&A革命』をテーマに、オフラインでのM&Aアドバイザリーのほか、オンライン(Web上)で海外企業とのマッチングができるグローバルM&Aプラットフォーム『BIZIT M&A』もローンチさせました。またCEO直轄で、M&AやJVなども含めた新規事業開発を積極的に行っています。

創業7年目ながら躍進を続け、独自の存在感を放つ同社の特長とは? また、そこに集ったメンバーの共通項とは? 丹野氏ほか同社でご活躍中の2名の方にお集まりいただき、ざっくばらんに語っていただきました。

(インタビュアー アクシアム・渡邊光章、伊藤嘉浩)
[掲載日:2019/6/6]

株式会社TRYFUNDS

唯一無二の企業体、ビジネスの源泉はどこに?

AXIOM伊藤:

ご無沙汰しております。本日はお忙しい中、丹野さんはじめ、田上さん、渡邊さんにもお時間をつくっていただき感謝しています。どうぞ宜しくお願いします。

AXIOM渡邊:

個人的にトライファンズ様のビジネスや組織形態というのは、他にはないものだと感じていて、その源泉は御社が掲げるビジョン(※)にあるのではと思っています。つまり「この世界は挑戦の連続でできている。だから意志ある挑戦が、次なる未来を創り出す」という丹野さんの強い想いに、その根幹があるのではと。

これを24歳のときに自覚し、明文化し、創業をされたのには驚くばかりですが、そこから7年が経って31歳になられ、御社のメンバーも50人以上になりました。いま、その想いはどのくらい実現できたとお感じですか?

(※)VISION~私たちの目指すこと~ 『挑戦を、カルチャーに』
https://tryfunds.co.jp/company/philosophy/

丹野氏:

こうしてビジョンとして言語化したこと、その想いは今もまったく変わっていません。個々人がやりたいこと、逆に社会から求められることは色々ありますが、この言葉は、社会から求められている様々な事柄の中に自分がやりたいことを本気になって見つけ出して、それをいかに事業化できるかについて考え、自分たちなりに紡いだもの。いまどれくらい実現できているか?と振り返ると、本当にまだまだ1-2%だなと捉えています。

AXIOM渡邊:

1-2%ですか。どんどん新しい領域、事業へと挑戦を進めていらっしゃって、もっと達成されているように思いますが。

丹野氏:

いえ、まだまだですね。確かに手掛ける領域に枠を設けず、挑戦を続けてきていますが。ここにいる渡邊は、いま投資先である株式会社ゼネラル・オイスターにCOOとして派遣され、「あたらない(食中毒を起こさない)牡蠣」を作り出すことに情熱を燃やしてもらっています。そういった食品の領域で問題意識を持ち、「食料自給率の問題に対してアプローチする事業をやるべきだ」「それを俺は人生をかけてやるんだ」と思えば、業界や事業の領域に関係なくそれはすべきで、それでいいと思っています。

私たちの周りには社会のためにやるべきことはたくさんありますが、そのテーマに対して本気になれる人はごく一部。そういう人が自分自身の課題を持って私たちのところにやって来たとき、トライファンズでどうやって花開いてもらうかが現在の課題だと認識しています。

AXIOM渡邊:

これまで何千人もの方にキャリア相談という場でお会いしてきましたが、おっしゃるように、そのような社会課題に本気で取り組むことを考えている方は少ないですね。

丹野氏:

はい。そんな夢を持ったメンバーあるいはクライアントが、まさに挑戦を実現させる仕組みを創ってきたというのが今までのフェーズでした。現在の弊社の事業体というのは、挑戦を実現するためのサービスで出来上がっています。当初の事業は日本企業の海外進出を支援するコンサルティング業でしたが、その時に必要となるお金を供給するためにファンドの仕組みを作ったり、一から事業を立ち上げなくても買収で可能になるならと『BIZIT M&A』のサービスを立ち上げたり。また、CFOやCOOあるいは戦略コンサルタントとして後方支援できる部隊を作ったりなど、挑戦をするために求められるサポートを会社の事業として行ってきました。

AXIOM伊藤:

なるほど。海外進出支援、M&Aアドバイザリー、戦略コンサルティングサービスなど、その事業のすべてが「挑戦を実現するためのサポート」という一本の線でつながっているのですね。

丹野氏:

これからは、自分たちが自ら挑戦をしていくフェーズになると考えています。アクシアムさんからご紹介いただき、入社してもらったメンバーが、ちょうど社内起業の第一号になりそうなんです。社内のメンバーであれクライアントであれ、挑戦を事業として実現させていくこの流れをどんどん加速させていきたいですね。

『経験のない世界』へ、飛び込む

AXIOM渡邊:

丹野さんご自身が、経験したことのない領域の中にも目標を見い出し、そしてそこへ踏み出せるごく一部の方なのだと思います。普通は自分の経験の上に目標を立て、経験を活かしてそこへ到達したいと考えるのに。なぜ、そんなことを思いつくのか、またなぜ恐れずに飛び込むことができるのでしょうか?

丹野氏:

私は0歳から18歳まで水泳に真剣に取り組んでいて、本気でオリンピックに出場して金メダルを獲ることを目指していました。子どもの頃から、そんな自分の夢を口にするのが恥ずかしいと思ったことはありません。子どもの頃はたいていの人がそうだと思いますが、私は思春期になっても当たり前のように夢を語ることができました。その大きな理由は、つねに水泳という得意なことがあり、家族も含め周囲に応援してもらえたから。「何を大それたことを」と、揶揄されたりバカにされたりすることなく過ごせたからだと思っています。だから夢を持って、それができると信じることを常に繰り返ししてきたんですね。

ですが大学に入り、水泳を辞めてしまった後、一気に自信を失くす経験をしました。大学ではスポーツ科学の学部に属していたのですが、周囲の友人にはやはりスポーツで活躍中の人間が多く、「将来はどうする?」と尋ねたら「プロ野球の●●球団に入る!」「金メダルを獲る!」と彼らは億面なく語るんです。ただその頃の自分には、語る夢がない。これまでは自分が夢を語るほうだったのに…と、友人たちを羨ましく思う日々が続きました。

AXIOM渡邊:

そこからどうしてビジネスの道に?

丹野氏:

たまたま大学で受講していた「ベンチャー起業家養成基礎講座」という授業の中でコンペがあったのですが、そこで私のチームのプランが1位をとり、起業することや経営することの面白さを知りました。自分が熱中できるものを再び見つけられた・・・それが今につながっています。

AXIOM渡邊:

そのような幼少から大学時代のご経験が、御社のビジョンに影響を与えているのですね。

丹野氏:

はい。夢を語っていた自分が挫折を味わい、いったん夢を語れなくなってしまったのは「自分には何もやりたい事はない」という内向きの思い込みだったんだと気づきました。そして、それって面白いと思ったのです。内向きの思い込みを排除して少しでもやりたいという事を見つけられるようにする。そして笑われることなく周囲が許容してくれる環境さえあれば、誰でも子どもの頃のように小さな夢をいえる。つまり夢の実現に向けた“挑戦”の種を創ることができるのではと思い至りました。

現状では社会のために何かしたいと夢を語る人はごく一部ですが、本当はそうではなく、もっと多くの人が潜在的に想いや問題意識を持っている。ただ環境や所属する組織、その人の歴史によって言えなくなっているだけではと。

ですから会社を始めるにあたっては、夢を語るための阻害要因はすべて排除する、と決めました。例えばトライファンズでは何か事業をやりたいとの話がもちあがったとき、「実現のためにはもう少しこの能力を鍛えてから実行したら」「事業計画はもっとこうがいい」というアドバイスはしますが、それ自体を決して否定しない環境です。

AXIOM伊藤:

そこから、夢を実現するための事業・サービスを、という発想なのですね。

丹野氏:

そうですね。夢は語ったが、では実際にどうすればいいのという人のために、どんなサービスが必要なのか。ファンドもM&Aもコンサルティングも人材紹介も…という風に広がっていきました。背中を押し、サポートして一緒に進めてくれる人がいれば、もっと夢=挑戦が実現していくのではないかと思っています。

仲間に求めるのは、3つのバリューが示す、譲れない“価値観”

AXIOM渡邊:

御社では、クライアント企業に「社内に海外進出をリードできる人材がいない」「経営できる人材がいない」という問題が出てきた場合、人材紹介もされますね。以前、丹野さんは採用で課題を感じている顧客企業からの相談を受けて、「なぜ人が採用できなかったか?」「どうやったらこの人が採れたのか?」と突き詰めて考えたと話していらっしゃいました。するとその原因は非常にシンプルで、『組織』『事業』『仕事』『待遇』の四つのフレームしかないと、おっしゃっていました。

まったくそれには同感なのですが、私自身、長年人材紹介を行ってきた中で感じるのは、その4つに加えて“価値観の合致”がとても重要ということ。それについて丹野さんはどう思われますか? また、御社の皆さんが持つ共通の価値観、大事にしていらっしゃるものについてお聞かせください。

丹野氏:

はい、私も価値観の共有は非常に大事だと思っています。トライファンズでは「組織としての姿勢」として、3つのバリュー(※)を設定し、行動指針としています。この他にも、メンバー個々の姿勢として6つのリーダーシップを規定していますが、よりこの3つのバリューを大切にしています。

(※)VALUES ~組織としての姿勢~
◆世界基準で、事業機会を切り拓く
◆枠にとらわれず挑戦し、主体者としてやりきる
◆チームワークで、未踏の高みを目指す
https://tryfunds.co.jp/company/philosophy/

例えば1番目の「世界基準で、事業機会を切り拓く」には、グローバルスタンダード以上のパフォーマンスを出す、という意味を込めています。これは目線の置き方の問題で、もっと高いところを見て、目指して、事業を進めるということ。この点は、私たちの最大の特長かもしれません。

2番目のバリュー「枠にとらわれず挑戦し、主体者としてやりきる」は、自分の得意なビジネス領域や専門分野だけではなく、さまざまな領域に関する知識や知見を獲得するため、学習を続けるという意図を含めています。多くの人は自分自身で作った枠に囚われがちですが、トライファンズでは、むしろ個人の興味から仕事を創ることも大歓迎です。M&Aの知識が十分ではないメンバーでも、手を挙げればM&A実務に参加する等の登用も歓迎しています。

また、ちょうど先日入社してもらうことになった人は、「経験はないが海外で事業のハンズオン支援がしたい」という希望を持っていました。今回、その人にはいきなり海外へ行ってもらうことを念頭に採用を決定しています。もちろんそれが実行可能なベースのスキル・能力があるかは厳しく見極めますが、海外での勤務経験がなくとも適応できるかどうか、挑戦をやりきれるかどうかを重視しています。経験は関係ないですね。私自身、学生時代に起業してから今まで、何も経験がないことへチャレンジしてきてばかりですから(笑)。そんな風に、採用やアサインの場面でも一切の枠なしで考えています。

AXIOM渡邊:

まさに、自分ができることを越えていく、その先へ挑戦するということなのですね。では3番目のバリュー「チームワークで、未踏の高みを目指す」についてはいかがですか?

丹野氏:

トライファンズでは、コンサル、M&A、投資などその道のプロフェッショナル人材が揃っていて、かつそれらのチームの距離が本当に近いんです。今日参加させていただいている田上は戦略コンサルティングのプロですが、田上がM&Aチームの人間と2人でクライアント先に出向き面談すると、2人が持つそれぞれ違うプロフェッションの接合ができて、会社としてさらに良いバリューが生み出せるところがあります。多くの会社はそこの縦割りが強いために、その接合が起きにくいのかもしれません。ですから、そこのフレキシビリティを残していこう、チームワークで提供する価値を高めていこうと考えています。

AXIOM渡邊:

御社の事業のスタートは、日本企業の海外進出支援でした。バリューの中にも「世界基準」とあります。なぜ丹野さんはじめ皆さんは「世界」に関心があるのでしょうか?

丹野氏:

人それぞれの部分はありますが、創業時の理由は「日本を救いたい」「日本のプレゼンスを維持し、上げたい」というものでした。これは私のごく個人的な問題意識ですが。

AXIOM渡邊:

日本を見たうえでの「世界」への意識、だったのですね。

丹野氏:

現在は、ある特定の国のために働きたい、この国のインフラを何とかしたい、という夢を持って参画しているメンバーもいます。そのフォーカスが負の方向に向かえば勿論だめですが、何らか社会的価値を作り出すとか、より社会事情を良くするものであれば、どの国の何であってもいいと思っています。

そういった夢を事業化したいとなった際、ちゃんと世界を基準にして考えられているかを評価・判断基準にしていますね。「私はこの国のこれがやりたいから、この国のことだけ知っていればいい」というスタンスではいけなくて、世界はどう動いているのかを詳細に調べ、そこから逆算してさらに上の価値を作り出すには何をすべきか、という思考で進めることを大切にしています。

他者の“プロフェッション”をリスペクトする重要性

AXIOM伊藤:

丹野さんはじめ、御社の皆さんが行動指針とし重視されているものがよくわかりました。では別の角度から、今後仲間として御社に参画される人には、どんな素養・キャラクターの方を求めていらっしゃいますか?

丹野氏:

そうですね…「素直な人」でしょうか。今後トライファンズに来てもらう人の多くは、きっと何らかの分野のプロフェッショナルです。例えば仕事を進める中で、コンサルティングのプロとM&Aのプロの意見の食い違いなど、日常茶飯事で起こります。日系企業出身者、外資系企業出身者などの間でも、これまで培ってきた仕事の進め方や組織でのふるまい方が違っていて、戸惑うことがあるでしょう。

そんな時、他者のプロフェッションをきちんとリスペクトし、受け入れられる素直さが、より高いパフォーマンスを生むと思うのです。採用面談の段階で価値観が一致する方々に入社いただくわけですが、そのような仕事の進め方や組織での振る舞いがトライファンズ流になれるかは、入社後の次のステップだと感じています。

起こったことに対して自分のこれまでやってきたことに囚われて固執するのではなく、いったん引いた眼で見て、その上で正しいと思うことは主張し、受け入れるべきことは受け入れる姿勢こそ重要。それができる素直さを備えた方がほしいですね。

AXIOM渡邊:

たしかに“過去”は成長を阻害する側面がありますからね。ご本人が枠を作ってしまっているだけなのに。では逆に、御社が新しい仲間となる方々へ提供できること何でしょうか?

丹野氏:

ひとことでいうと、それは『挑戦』です。残念ながら多くの企業では、努力して成果を出してもなかなか「機会」が与えられないことがあります。成果につながったあとに、何をさせてもらえるのか。私たちは、そこにきちんと応えられる会社です。社内起業もありえます。その方法は自由です。そこがトライファンズで働く一番の楽しさではないでしょうか。

弊社の経営層が新規事業案件を差配する会議では、一定の信頼をおいたメンバーがやりたいと手を挙げてくれたことに対し、ビジネスモデルや投資回収についての議論はしますが、社内リソースが足りないからできない、という結論は出しません。例えば、その実現のための人材が足りないなら採用しようという流れになります。マネジメント側がちゃんとリスクをとって、メンバーに挑戦をさせる方針です。

ただ、“一定の信頼をおいたメンバー”と申しましたが、スキルが足りない、ビジネスモデルに問題がある、などの場合は勿論NOです。私は事業者・経営者をどんどん創っていきたいと考えています。ですから、本当の意味での経営志向がある人に来ていただきたいですね。

多くの選択肢のなか、なぜ“TRYFUNDS”だったのか?

AXIOM伊藤:

丹野さん、ありがとうございました。では次に、トライファンズ様へ転職され活躍されている田上さん、渡邊さんにもお話を伺いたいと思います。現在のお仕事について、具体的に教えていただけますか?

田上氏:

私はCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)という役職を拝命し、全社の経営戦略に携わっています。先ほどから代表の丹野がお話しているように、社内にはやりたいことが溢れている状態。ストラテジーとは、究極的には「選択と集中」ですから、その社内にたくさんある“夢”や“挑戦”を、整理整頓していくのが自分の役割だと考えています。また、ビジネスアドバイザリーユニット(コンサルティングの部門)のリードもさせていただいています。トライファンズへの参画からは、7カ月が経ったところです。

渡邊氏:

私はビジネスアドバイザリーユニットという部門に所属しているのですが、トライファンズの出資先である株式会社ゼネラル・オイスターに半常駐しており、現在はそちらでの業務が主です。同社は2000年に創業した会社で、「あたらない牡蠣をつくる」ことで食文化を変えたいというビジョンを持っています。じつはキャビンアテンダントの方々など、牡蠣を食べられないという制約のある職業が世界にはいくつもあります。誰にでも安心して提供できる牡蠣を作り、ひいては食文化を変えたい…そんな挑戦をしている会社です。いわゆるハンズオンでゼネラル・オイスターの皆さんとタッグを組み、そのバリューを上げていこうとしています。もうすぐ入社2年になります。

AXIOM伊藤:

ありがとうございます。では、そもそもお二人は、なぜトライファンズ様に入社されたのでしょうか? 多くの選択肢があったと思うのですが、トライファンズ様への入社を決断された一番のポイントは何でしょう?

田上氏:

私はこれまで経営コンサルタントとして約14年間働いてきましたが、コンサルタントというのは、やはりどこまでやっても第三者であるという気持ちをぬぐえませんでした。現在40歳なのですが、このままコンサルタントを続けるのではなく、「産業界の構造的課題に一プレイヤーとして挑んでいきたい」という気持ちが臨界点を超えたことに尽きます。所属していたBCGは素晴らしいファームでなんら不満はなかったのですが、「この世に生を受けたからには何か自分にしかできないことをしたい」と考え転職を決めました。

じつは私は「自分は何を果たすために生きているんだろう?」といった気持ちを抱いている子どもでした。その想いは、小学生の頃から持っていたように記憶しています。ノブレス・オブリージュではないですが、成長するにつれ、「何かの社会課題があって、そこにおかしいと気づいてしまった者はそれに対して行動する責任がある」、「社会に自分の能力や持てるものを還元しなければならない」という考えが強まっていきました。ですから経営コンサルタントとして働きながらNPO活動などにも携わっているのですが、本業においても、そのような自分自身の問題意識を発現できるところはないか…と漠然と思案していたときにトライファンズと出会い、決断しました。実際に代表の丹野に会って「ベンチャーは“公私混同”できるのがいいところだ!」という言葉を聞き、ぐっと心に響いたことを覚えています。

AXIOM渡邊:

なるほど。小学生の頃にそのような問題意識を持たれていたこと、またそれを現在まで持ち続けていらっしゃるのは素晴らしいですね。現在のお仕事の中には、コンサルティング部門のリードもありますが、コンサルティング業界の中での転職、つまりファームを移ったという感覚はないですか?

田上氏:

それは、まったくないですね。よく誤解されますが、トライファンズはコンサルティングファームではないですから。クライアントの挑戦を実現するためにヒト(ヘッドハンティング)・カネ(資金調達)の手当てを含め、“自分事”としてサポートするプレイヤーだと感じています。事業開発集団、次世代投資会社といったところでしょうか。

AXIOM伊藤:

渡邊さんは、いかがですか?

渡邊氏:

私は銀行に勤めた後、英国のビジネススクールに留学してMBAを取得し、MBAでの学びを使っていわば修行をするつもりでコンサルティングファームへ入社しました。転職する気持ちはなかったのですが、たまたま縁あって声を掛けてもらい、白髪(取締役・CFOの白髪亮太氏)と話す機会があったんです。その時に、まずは日本企業の海外進出を支援するというトライファンズのビジネスが、自分のやりたいことにフィットすると感じました。

というのも、英国へ留学していた際、約60人のクラスメートには世界27ヵ国の人たちがいましたが、日本のプレゼンスの低さをひしひしと感じていました。授業でのケースもしかりです。そんな中、日本人の持っている強みは絶対にある、日本企業がもっと世界で活躍できるよう支援したいと考えるようになりました。

もうひとつは、採用面談の中で丹野・白髪と食事をする機会があり、当時企業再生の仕事をしていた私は「企業価値向上の手段の一つとして、M&Aを自分のプロフェッションとして持ちたい」と話しました。ところが二人からは「もうそれだったら経営者となって、M&Aを決定するところに立ったらどうですか?」と言われたのです。これは想定外の答えで、自分の視座を一段上げられた気がしました。「ああ、ここで働いてみたい」そう強く思いましたね。

実際に入社し、トライファンズで良かったと思ったことは、クライアントを支援することに関して制約がほぼないこと。トライファンズでは事業買収、資金調達やヘッドハンティングも活用して、ビジネスをドライブさせるためにクライアント社内に足りないリソースは外から持って来ます。これは私が以前従事していた企業再生コンサルティングにはない発想で、日々、発見や驚きを感じていますね。

それから、トライファンズはベンチャーですから、会社自体の組織づくりに加われる醍醐味はあると思います。自分が属する器そのものを変えていけるので、自分も主体者になれます。それを面白いと思えるタイプの方は非常にハッピーではないでしょうか。

「MBAでの学びを使う」から、「MBAの教材を創る」へ

田上氏:

渡邊同様、私も働きながら日々ワクワクしています。MBAで学んだことを使いたい人が多いのですが、今の仕事では“MBAの教材”をどんどん創り上げられる感覚。つまり、MBAの授業で取り上げられるような、ケースとなるような事業をやれるという手ごたえを感じています。

丹野氏:

「MBAの教材を創る」、か。いいこと言うなぁ。勉強になります(笑)。

AXIOM伊藤:

ご本人を目の前に言いにくいかもしれませんが、ずばり丹野さんの魅力とはどんな所でしょうか?

田上氏:

トライファンズには私と同い年の社員が(私を含めて)3人いるのですが、食事をしながら「どうしたらこんな起業家が生まれるのだろう?」と、よく“丹野研究”をしています。丹野はやはりビジョナリーですよね。それからフェア。私利私欲ではなく、常に「社会性の軸」、ロマンをもっている点が魅力だと思います。

AXIOM渡邊:

たしかに。丹野さんはピュアで、どんな人の話にも耳を傾ける姿勢をもっていらっしゃいますし、想いを言語化する努力もすごい。そこがトライファンズそのもののアドバンテッジにもつながるのかもしれませんね。

渡邊氏:

私はじつは昔から落ちこぼれで育ってきた感覚をもっており、いわばTier2の人間だと思ってきたんです。ただ、丹野はつねに「Tier1であれ」と言う。ですから本気でこの人のように働いたら、自分もTier1の景色を見ることができるかもしれないと思いました。それから丹野は、ものすごく先を見ている。自分もそこの世界を目にしたい、と惹かれています。

丹野氏:

なんだか照れくさいですが…私自身、これまでの事業はすべて未経験からのスタートでした。けれど他の人より「できる」と信じているから、リスクや失敗した時の不安などに力を削がれることなく、成功するための手段を考えることに集中できたのかもしれません。それの繰り返しをしてきたような気がします。これからも、どんどんやりたいこと=「挑戦」を語り、それを実現していきたいですね。


AXIOM渡邊・伊藤:

本日は、貴重なお話の数々を、ありがとうございました。

(了)

インタビューを終えて/渡邊光章

今回、丹野代表・田上氏・渡邊氏のお話を伺い、まさに新しいタイプの組織が生まれているな、と心躍りながらインタビューをさせていただきました。そして、2005年にスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学で行った有名なスピーチの中で述べた言葉「Connecting The Dots」を思い起こしました。

過去を活かそうとして今を考えるのではなく、未来の点(目標)に向かって到達しようというのでもなく、ただ目の前の現実や自分に真摯に向き合って没頭し、走っていたら過去とつながった…。トライファンズの皆さんは、かつてジョブズ氏が語ったこの言葉を実践し、体現している組織のように感じました。

Profile

丹野 裕介 氏

代表取締役CEO

世界58カ国への海外進出コンサルティング、ビジネスプロデュースを経験。国内のナショナルクライアントを中心に、自動車、鉄道、等の重厚長大なものから飲食、ITまで、250プロジェクト以上のコンサルティングを行う。自らは、戦略立案、M&A、組織開発をプロフェッショナルとしている。また、リクルートホールディングス時代には、アドオプティマイゼーション推進室にてIT事業、現リクルートキャリア社にて組織開発や採用コンサルティング事業に従事。こうした経験から、インターンシップ生向けに、グローバル人材育成を前提とした教育推進を行い、商社・外資企業等の大手企業に対し、複数の内定者を排出している。また、現在も人材斡旋やヘッドハンティングを行うこともある。その他、売上1,500億円を誇る両備ホールディングス社の顧問や、「大阪焼肉ホルモンふたご」を運営するFTG Company社の社外取締役も兼務。

田上 純 氏

CSO

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング、ボストン コンサルティング グループ(BCG)を経て現職。M&A(デューデリジェンス、PMI)、事業戦略、経営管理、コスト削減などのコンサルティング業務に従事。著書に『トップマネジメントの教科書』(共著、ダイヤモンド社、2016年)、『”清き0.6票”は許せない!』(共編著、現代人文社、2010年)、『日本の自治体外交』(共訳、敬文堂、2009年)など。

渡邊 史人 氏

ビジネスアドバイザリ―ユニット・マネージャー

三菱UFJ信託銀行での勤務を経てイギリスに渡り、経営学修士(MBA)を取得。帰国後はEYトランザクション・アドバイザリー・サービスでコンサルティング業務に従事し、その後トライファンズへ入社。現在は、ビジネスアドバイザリーユニットのマネージャーを務めるかたわら、トライファンズの出資先であるゼネラル・オイスター社にてCOOとして経営に携わっている。

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

伊藤 嘉浩

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

伊藤 嘉浩

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。

日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)

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