転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第6回 
2005.10.20

どうなる?成果主義 vol.3

今回は、成果主義人事システムの必要性を、採用企業側の立場から考えてみたいと思います。

企業の採用をお手伝いしていて感じることですが、ごく一部を除き、優秀な人材を十分に確保できずに困っている企業が多いようです。特にベンチャー企業ではその傾向が顕著です。その一つの要因に、『入社時に十分な報酬を約束できない』というものがあります。

では、それらの企業はどのようにこの問題を解消し、優秀な人材を確保するのでしょう。

この問題をうまくカバーし、人材の確保に成功している企業では『入社後、活躍いただいて会社が成長したときに、報酬を大きく上乗せする(あるいはストックオプションなどを付与する)』『活躍いただければ短期(3年位、あるいはもっと早く)マネジメントなどの責任あるポジションにプロモートする』といった条件の提示を行っています。

つまり、転職のリスクや金銭面のデメリットを、入社後の成果に対する短期的な報酬(職務機会を含む)というメリットでカバーしているのです。

しかし、ベンチャー企業でも、採用時にこの点をしっかりと示せているところは決して多くありません。人事制度、評価制度もしっかり構築されてはおらず、属人的要素で決まる『年俸制』のもと、将来の職務機会もあいまいなままにされることが多いのです。

以上を踏まえて考えると、今後の成果主義は「仕事の成果を評価し、目先のお金で報いる」ことだけに主眼を置いたものではなく、

  1. 高い成果を上げる優秀な人材(リーダー)を正当に評価する
  2. 評価された優秀な人材には、年齢にかかわらず相応の職務に就ける機会を与える
  3. 個人の成果だけでなく、組織や事業の利益、成長もバランスよく連動させた金銭報酬として還元する

という点を実現し、また、それをしっかりと示すべきだと考えます。

企業にとって「人材への長期コミットによりもたらされる日本的経営の強み(チーム主義による生産性向上、顧客重視志向、柔軟な構造など)」は重要ですし、決して失ってはいけないものでしょう。

しかし、成果主義がそもそも、その日本的経営の強みとうらはらに存在する弱み(相互依存や甘えの構造、意思決定の遅さなど)を補うために導入されたことを考えると、優秀な人材を確保し長期に活躍してもらうために、いま一度、『日本的経営の強みを生かす、本当に有効な成果主義人事システムとは何か』を考えていただきたいと思います。