転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第2回
2006.09.19

外資系日本支社のコントローラーではなく、CFOとして活躍したい

現在私は、ある外資系企業の日本支社の常務をしています。日本の商社に10年勤め、さらに外資系医薬品メーカーの財務会計担当として10年間勤務し、今のポジションに就きました。既に40代ながら、本社の意向に従うのみよりも資本政策などを考え、実行できるような経営を手がけてみたいと考えています。

コントローラーではなく、CFOを希望しております。ベンチャー企業を視野に入れ、可能性はあるでしょうか?子供が高校生という事情もあり、現状の年収1,800万円を下げたくありません。そのような転職は可能でしょうか?

Answer

1997年~1998年頃から、日本でも法律や政策、株式市場が整備され、本格的にベンチャー企業がベンチャーキャピタルなどから資金調達できるようになりました。10年前には存在しなかった新興産業市場で公開したベンチャーは、2,000社を越えています。したがって、そのようなベンチャー企業は自社のきちんとした組織化、成長のグロースのための経営強化を目的に、公開企業の財務会計経験者をCFOとして迎えるニーズを持っています。その意味で、チャンスは多いといえます。

ただし、日本のベンチャーでも、これまでのご経験業界と重なるバイオ産業は2006年に急速に失速しています。多大な資本を研究に投じながら、株式の公開基準が厳しくなったこともあり、公開後も赤字のままという企業が少なくありません。今後のバイオ系ベンチャーのCFOは、とても厳しい状況にあることを知っておいてください。

もちろんバイオ系のベンチャーを探される方がチャンスが多いので、そちらを中心に据えつつもバイオ以外のベンチャーも選択肢に入れ「これは本物だ」「これは絶対伸びる」とご自分で確信が持てる会社を探しましょう。

また収入についてですが、現在の年収と同額でCFOとして迎えてくれる可能性は、ベンチャー100社中、数社程度だと思います。相場観としては、おそらく1,000万円が基本でしょう。公開前のベンチャー企業で1,800万円を提示するには、よほどの資本があるケースに限られます。転職先としてベンチャーをお考えの場合には、年収が1,000~1,200万円になっても問題がないように生活設計を変えておくなど、何らかの方策を立てておくべきといえます。

最初の二年ほどは報酬が大幅に下がっても心配ない貯金をしてから転職する、あるいは二年間だけチャレンジしてみて、成功しなければ再度1,800万円の外資系に戻る……というのもプランのひとつです。やはり報酬面では、外資系企業のコントローラーでいたほうが良い条件であるのは明白です。しかし今回、例えば1,200万円に年収を下げてベンチャーに転じ、ストックオプションをCFOとして発行する立場となり、ご自分と社員の努力で成果を出し、そのオプションを現金化できる時の喜びを考えてみてください。現職では得られない経営の喜び、そして億単位の報酬が得られます。もちろん考えておくべきリスクとして、ベンチャーへ転じたものの、二年後、成果が出ずにご自分の判断と努力、苦労が無駄だったという事態もありえます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)