転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第13回
2007.03.08

いよいよ役員面談。事前の準備と心構えは?

現在、転職活動中の32歳です。とある上場ベンチャーの経営企画のポジションに応募し、選考が進んでいる途中です。次のステップとして先方の役員との面談を控えているのですが、初めての転職ということもあり、勝手がわからず不安です。

何か事前の準備や心構え、注意すべきポイントなどはありますか?ご教示いただければ幸いです。

Answer

当たり前ですが、ご相談者の現在おかれていらっしゃる状況によって、様々なご助言がありえます。「候補者としての適性がポジションに真に合致しているのか」「候補者の方がより積極的なのか」「採用側の方がより積極的なのか」「両者とも積極的なのか」「双方にとってすり合わせるべき点を抱えているか(年収の思惑・職責内容・将来の展望・具体的なキャリアプランなど)」の細かい点を踏まえた助言でないと、かえってマイナスとなってしまうこともありますので、本来なら私のようなキャリアコンサルタントを利用し、二人三脚でご準備いただきたいところです。

また、創業社長・COO・CFOなど誰と面談するのか、あるいはその役員の年齢によってもベストの対応が変わると思われます。例えばインタビュー予定の役員が大手企業をスピンアウトしたCEOで技術畑出身、55歳の方である場合。それなりにきちんと礼節を重んじる態度で臨んだほうが良いでしょうし、あるいは学生ベンチャーとして会社を立ち上げた28歳の創業社長なら、比較的フランクで本音をぶつけていくような姿勢が好まれる傾向にあります。ベンチャー企業の役員といってもさまざま価値観は異なることをご承知おきください。

さらに、選考のプロセスによってもご注意いただきたいことは異なります。すでに役員以外のインタビューがすべて終了して「最終面談」と呼ばれるものであるのか、早い段階での役員面談であるのか…など。

ベンチャーの多くは、採用決定者がいわゆる人事部・人事担当者ではなく社長や役員だったりします。大手企業では人事部や配属予定の部門が採用を基本的に決定しますので、役員面談は形式的である場合が多く、よほど失敗しないかぎり審査が進んできた候補者を最終で落とすことはありません。しかし、ベンチャーの場合は初回がいきなり役員面談で、採用がその場で決定することも珍しくないのです。

前提が長くなりましたが、役員面談の準備・心構えは、個別状況によることが大きい点、ご理解いただけたと思います。それらを知った上で普遍的に参考にしていただけるポイントを、以下にお伝えします。

ベンチャー企業の役員との面談では『就職したい』『入社したい』という気持ちではなく、『自分の人生をそこに投資したい』という決心(自発性、積極性とも言い換えられます)が何より大事です。ベンチャーが歓迎するのは、指示されれば何でもやりますという受動的な人間ではなく、自発的な人材です。ましてご相談者のように経営企画のポジションであれば、しっかりしたスキルを売り込み、プロアクティブな姿勢を示し、重視する価値観を率直に隠すことなく伝え、ご自分を理解してもらうことが重要になります。

率直に提示した価値観がそのベンチャーに合わないことから採用に至らなかったとしても、それはご本人にとって良いことだといえます。最も不幸なケースは、スキル・年齢・年収といった表面上のスペックだけが合致して、価値観が違うのに採用されてしまうことです。きっと短期間で「こんなはずではなかった」とご本人もベンチャー企業側も思うことになります。

何もかもすべてがフィットすることはないにしても、譲れないものは何か、しっかりご自身の価値観を理解しておかれることが、何よりも大事な準備だと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)