転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第19回
2007.06.14

海外勤務を希望するも可能性薄。転職を決断すべきか?

大学時代に留学経験があり、海外勤務を希望している理系出身の26歳です。

とある日系の大手銀行で働いてきましたが、いまのところ海外拠点での勤務の可能性が極めて低い状況で、悩んでいます。早く海外勤務を実現化し、グローバルに活躍できる能力を身に付けたいのですが、転職すべきでしょうか? また、どのようなキャリアプランがあるでしょうか?

Answer

海外勤務を希望されているということですので、TOEICで900点以上、金融実務も英語でできる語学レベルをお持ちだと想定してご回答します。

ご相談者の場合、すぐに海外でできる仕事は残念ながらごく限られています。ローカル採用のスタッフワーク(サポート、リテールサービスといった分野)、年収300万円以下であれば、世界中でふんだんにポジションがあります。金融のスキルを使わなくてよいなら、ホテルビジネスや旅行業などが仕事に就きやすいでしょう。

しかし、何からプロフェショナルなキャリアを考えておられるなら、日本人で英語が得意な26歳を求める企業は海外において少ないと思います。金融機関はこの先2010年頃まで、若手人材を海外に投入するはずですから、現職におられたほうが、海外勤務の可能性が高いでしょう。

「グローバルに活躍できる」という漠然とした願望ではなく「どんなプロとして世界に出るのか」を考え、先にプロフェッショナルになるべきだと思います。

スポーツ・芸術のプロの世界では、早々に海外に出て成功する方が多くおられますが、ビジネスの世界では、まずしっかりスキルセットを高めることを優先しましょう。M&A、財務、商品開発、事業開発、アライアンス、セールス、マーケティング、HR、会計、税務、戦略コンサルティング……なんでもかまいません。

英語で仕事ができるようにすることに加え「専門的を高める」「ビジネスフレームを習得する」「競争に勝てる精神を持つ」ことが重要です。実際の競争概念、現実的な情報に接しながらそれらを鍛えるなら、海外のビジネススクールに行かれる道もあります。(そうして鍛えながら、しっかり将来のプランを練るというのもいいかもしれません。)

人材マーケットの実情に目を向けず闇雲に海外へ行くと、帰国してスタッフしかできない35歳になってしまいます。くれぐれも、そのような”海外帰国・浦島太郎”にならないようになさってください。

厳しいようですが、”長期滞在型観光”のような海外経験だけから得られた価値観だけでは、ビジネスのプロとしては到底使い物になりませんので、その点もご注意ください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)