転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第20回
2007.06.28

超多忙な投資銀行業務。ワークライフバランスを考え転職したい

現在、とある証券会社で投資銀行業務に就いている者です。収入も高く、やりがいある仕事ではあるのですが、非常に多忙な日々が続き、プライベートの充実など望むべくもない状況です。

そろそろ、もう少しワークライフバランスをとれる環境へ移りたいと考えるようになってしまったのですが、私のこれまでの経験等を活かしながらキャリアを重ねる道には、どのようなものがあるのでしょうか?前職は、やはり某金融機関に勤めており、アメリカのビジネススクールを卒業しています。

Answer

今までにも筆者は、ご相談者同様、投資銀行に勤める方々の激務の様子を聞いてきました。新たに投資銀行に転身されていった方は、こういった状況を入社前に知っていながらも、チャレンジしていく自信・気概をお持ちの人材であったと評価しています。これらの方々は、投資銀行の仕事がプライベートを犠牲にしてもやりがいある内容であること、経済面でも魅力的であることを、異口同音におっしゃっています。

しかしながら、ワークライフバランスというのは、極めてプライベートな面との関連性、すなわち、年齢・家族・出産・結婚・離婚・教育・介護・勤務地・体力・精神力などの事情にかかわる大切な課題だとも思っています。ハードな環境を変えたいご事情が、何らかプライベートな理由から発生したという設定でお答えします。

インベストメント・バンキングの中でも、どんな職位(アナリスト、アソシエイト、VP、ディレクター、マネジングディレクターなど)で、どんな分野(Fix Income、Equity、Corporate Financeなど)の仕事をしておられるのか分かりませんので、本来は、個別でご事情を仔細に伺ってから、コンサルティングをさせていただくのが一番です。その点をご了承いただき、ここではキャリアの展開先にどのようなものがあるのかを、大枠としてお話したいと思います。

1)金融機関

同じ金融機関でも、職位や職種、会社が変わるとワークライフバランスを変えられる可能性があります。

  • 投資銀行からファンドへ、あるいはプライベートエクイティからベンチャーキャピタルへ移り、土日の休みが取れるようになった
  • アナリストからアソシエイトにポジションがアップしたことで、精神的に格段に楽になった
  • セルサイドからバイサイド、あるいはカバレッジからアセットマネジメントに移り、仕事量が減った
  • 大手メジャーからブティックタイプに変わり、生活のバランスが取り戻せた
  • 外資系から日系に移り、報酬は減ったが生活のバランスは良くなった

などのケースが過去にありました。

同じ外資系ファンドでも、A社では昼夜なく働いていたがB社ではパートナーの信条がワークライフバランスも大事にすることであったので休暇がとれるようになった、という方もおられ、一概に「金融=ハード」とは言い切れません。金融機関すべてを否定しなくても、変化を求めることはできます。

2)コンサルティング・リサーチ・情報産業

財務・税務などのコンサルティング、経済分析・調査会社などへの転身もありえます。これらの業界の中にも、投資銀行より多忙な会社・職種がありますので事前のチェックは必要です。しかし概ね、毎日市場に追いかけられたり、プロジェクトに追いかけられたりすることは少ないといえます。

シーズナブルな仕事や定型業務を主体とできれば、より生活設計がしやすくなります。そのような状況を知った上で、うまくキャリア選択をしている方もおられます。

3)事業会社

35歳以下なら、事業会社や商社などへの転身を図ることは容易です。しかし、35歳を越えて高い年収を得ていた方が製造業や商社に移る場合には、ワークライフバランスと報酬をトレードオフしなくてはなりません。それ以上に、刺激のある生活に慣れてしまっているなら要注意です。生活のバランスは良くなったものの「刺激のない毎日で、かえって苦痛になった」という方も実際おられますので、この点、ご自身によく問うてみてください。

大手事業会社の企業財務部などへ転職できるのは、極めて稀なケースです。商社の金融部門子会社に移る人は増えていますが、これも40代中盤あたりまでのチャンスになります。

ベンチャーの場合はCFO採用の可能性がありますが、決算?管理系業務の全般までこなせることを要求されます。単にIPOのための資本政策といった業務だけを期待して入社すると、不幸なことになりかねません。半年もたたない間に、逆に「経理さえ分からない人材」として低い評価を下されることになりますので十分気をつけてください。さらに、ベンチャー組織ですから、場合によっては投資銀行よりもハードワークになることがあり、その点でも本末転倒にならないようご注意ください。

同じベンチャー企業でも、IPOが終ってさらに事業拡大を狙うステージにある会社では、良いオポチュニティを期待できます。たとえ表面上のタイトルが単なる営業であったとしても、投資銀行時代のスキルを活かせるやりがいある仕事を手にし、キャリアチェンジに成功されている方がおられます。

4)起業・マイクロビジネス

金融機関で著名な実績を出した方が、評論家やコンサルタントとして個人事務所を開くというのは良くあることです。意外に、起業して社長になったほうが、ワークライフバランスが良好になるケースもあります。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)