転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第22回
2007.07.26

COOと経営者の違いを痛感。この先、本気でマネジメントを目指すなら…

戦略コンサルティングのファームで約5年働き、その後、あるベンチャー企業のCOOとして同様に約5年勤務している者です。2年前に会社が店頭公開を果たし、仕事も順調なのですが「公開できれば役員にする」という当初の社長の言葉は実行に移されることなく、現在に至っています。

このままCOOを続け、会社を大きくしていくという夢もあるのですが、一方でCOOとマネジメントでは、やはり決断すべきこと(経営判断)が違う気がしてなりません。このまま社長のもとで判断を常にゆだねることに慣れたくないと思うようになってきました。これは傲慢でしょうか? マネジメントを目指したいなら、いま、外に出るべきでしょうか? ぜひご助言をお願いします。現在、年齢は40歳です。

Answer

マネジメントを目指して外に出るべきか否か、というご質問に対する答えは「どちらともいえない」です。理由は、社内に残るのが良いか外でチャンスを見つけるのがベストか、いただいた情報のみでは判断できないからです。

今回のご相談者のような失望と悩みをもたれるケースはキャリアコンサルタントとして比較的よく耳にし、今までにも何度か似た境遇の方のご相談をお受けしたことがありました。特に、ベンチャー企業で活躍されている方の悩みとして多く見受けられたように思います。大手の日系企業や外資系企業に勤める方の場合は、このような質問はそもそも発生しにくい環境だからかもしれません。

日系企業(特に大手)では、マネジメントを目指している40代までの人に「役員にする」と口約束がなされるということはありません。それどころか、もっと年配になっても「役員になるも、ならないも時の運」のような教え(ある種の常識)のようなものが社内に浸透している面があります。少なくとも50歳前後になられた方からしか、このような質問は出てこないと感じています。

外資系企業では、名刺上”取締役”と形式的に役員にすることは比較的容易で、就任までのプロセス・ハードルの高さ等、日系企業等とは異質なものがあります。もちろん口約束などありませんし、そもそも日本支社長に約束できる権限がないことが多いはずです。(一部、日本支社がしっかり経営の決定権を持っている外資系企業もありますので、その場合は、日本支社長の言質は信頼に足るといえます。)

したがって、このような質問が発生するのは、圧倒的にベンチャー企業に多いといえます。会社の大株主でもある社長が「役員にする」と口約束をして、その後それを反故にしてしまうケースが、今回のような問題を生じさせると思われます。すこし横道にそれましたが、まず組織形態・カルチャーの面から状況を整理してみました。

お話をご質問内容に戻すと、「公開できれば役員にする」と言った社長に、本当に貴殿を役員にする権限・力・責任があるのか、再度お考えください。約束を果たせる状況の人がその約束を履行しないなら、その理由は何であるのか…当たり前のようですが、率直に尋ねるべきです。

もしも実際に履行する権限・力・責任のない社長の約束を信じてしまっていたのなら、その状況を把握できなかったご自身の問題も認識いただく必要があります。厳しいようですが、まだ貴殿は、マネジメントになるための知識、あるいは準備が不足しているといわざるをえません。このままでは、たとえ外に出ても、また同様のことが起きてしまう可能性があります。

つぎに、履行できる権限・力・責任を持った社長の約束だと仮定して、役員に就任させられない理由がご自身で納得できるものなのか、そうでないのか。この点を押さえて今後の道を判断されるべきといえます。

理由が貴殿の能力や実績、運にあるのなら、まずは会社に残ってその点を克服し、役員となってさらにマネジメント力を磨かれるのがよいのではないでしょうか。現在順調に進んでいる仕事を放棄して、あえて外に出る必要はないでしょう。

しかしながら、理由が貴殿の側にはなく、なんらか貴殿ではコントロールできないもの(たとえば株主の意向など)であり、またそれを社長がコントロールせず、あたかも貴殿側の理由のように説明するのであれば、明らかに今後もマネジメントへステップアップできる道は社内にはないでしょう。そのような状況であれば、ぜひ外にキャリア機会を探しにいくべきといえます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)