転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第41回
2008.05.29

経営企画・管理を実務で経験してきたが、体系的に学ぶべきか?

現在、あるベンチャー企業にて、経営管理部の部長職に就いている38歳です。これまでの経歴としては、新卒時に入社した事業会社にて、社内ベンチャーの立ち上げや不採算事業の再生、海外合弁会社の立ち上げ・マネジメント等を手がけ、成果を上げてきました。その後、現在の会社に転職をして2年程が経つのですが、社内状況の変化等により、再度の転職を考えています。

これまで、現場での実務として経営企画・経営管理といった仕事を経験してきましたが、それらを体系的に学んだことはなく、ビジネススクールへ通うことも検討しています。私の年齢を考慮した場合、MBAを取得することは今後のキャリアにプラスになるでしょうか? また、就学する場合に、海外の2年制/1年制、国内スクール、夜間プログラムなど様々な選択肢がありますが、どれが最も有効といえるのでしょうか?

キャリアの目論見としては、やはり経営職を希望しています。ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

「社内ベンチャーの立ち上げや不採算事業の再生、海外合弁会社の立ち上げ・マネジメント等を手がけ、成果を上げてきました」とのことですが、それらの業務を通じて学んだ企業財務・会計・セールス・経営戦略・マーケティング・事業開発・経営管理などのノウハウ、経営に関わる知識・見識は、既に身に付けられているはずです。それなのにこのようなご質問が出てくるというのは、少し問題に感じます。

「成果を上げた」とおっしゃっていますが、その成果を上げることができた要因は何だったのでしょうか? それらを一度しっかり見直すことで、今後に必要なものが見えてくるかもしれません。

厳しいようですが、本当は上司あるいは経営者が結果を出すに足る知識・ノウハウ・スキルを持っていたのであって、ご本人は単にその指示に従い、動いただけだったということはありませんか? もしそうであれば、行動力はあるものの知識・ノウハウ・スキルの習得が十分できておらず、上司抜きでご自分で考え、分析し、判断し、決断することができないといえます。この場合は、当然学ぶ必要もあります。

おっしゃるように体系付けて学ぶために、ビジネススクールは選択肢のひとつとなるでしょう。ビジネススクールのクラスに出れば「あの時、上司がこう判断したのは、この論理・考え方・ケースを事前に知っていたからだ」などと、経験の裏付けができます。しかしながら、知識・ノウハウ・スキルを得ることだけならビジネススクールでなくとも可能であり、38歳というご年齢から考えて最良の選択としてはお勧めしません。

もしビジネススクール行きを検討しておられる理由が「業務を通じて知識・ノウハウ・スキルを習得できたが漏れがある。それらを補完したい」というものであったとしても、やはり時間・お金をかけてわざわざ通うほどでない気がします。書籍等を使って自分で学ぶこともできると思います。

ただし、唯一ビジネススクールに進学したい理由が、以下のようないくつかのパターンに当てはまるものであれば、ビジネススクールへ行かれることにも意義があるでしょう。

  • 知識・ノウハウ・スキルも習得したし、自分でも判断できる。リーダーシップについてもある程度自信がある。しかし、もっとスケールの大きなビジネスやグローバルな企業、異なる業界でも力を活かすべくチャレンジしていきたい。
  • そのためも、まずは過去に得たものをさらに確実にし、磨き上げたい。

  • 優秀な学友たち、特別な業務領域(財務、マーケティング、M&A、HR等)で最新の考えや経験を備えた学友たちと競って、次世代の社会や産業がどうなるか、いろいろ語り合いたい。
  • 仕事をしながらだとなかなか自分自身が見えないが、いったん実務を離れて再度、社会と自分を見直してみたい。

など。

また、実務で経験し習得した知識・ノウハウ等が合理的なものなのか、どの会社にも通じるものなのか、確認したいという場合にもビジネススクールへ行くことは有効です。ご自身がこれまで経験したケースが、他学生の経験してきたケースと相まって、いろいろな面白い議論や価値を生み出す可能性もあります。同時に、他の会社では通じない、普遍的でない知識・ノウハウ・スキルについては、これを機会に捨て去ることができます。

(エクゼクティブコースという企業からの派遣生向けプログラムがありますが、これは、先に述べたように実務経験から得たものの合理性・普遍性を確認したり、エンジニア・セールスなど中堅人材になるまでおよそ経営管理とは関係のないところでキャリアを積んできた人が、今後、経営管理職に就く際に必須となる財務・会計・人事・組織・マーケティング等について学んだりすることが主な目的となっています。また、アメリカのトップスクールなどでは、コース参加者が世界のトップ企業からの派遣生のみで構成されているので、その友人関係が商談に発展することが少なくなく、ネットワーク作りも目的のひとつになっています。このような場へ個人で私費留学したところで見向きもされず、寂しい留学となっている方が見受けられます。)

まとめると、ビジネススクールに38歳で進学することは、転職の上であまり有利ではありません。再度の転職に際しては、きちんと実務から知識・ノウハウ・スキルを習得されていると仮定して、おっしゃるような実績をお持ちであれば不足はないと思います。ビジネススクールに留学してさらに年齢を重ねるリスクの方が、学ぶメリットより高いでしょう。

本当の人生のゴールがどこにあるか、それにMBAが必要かどうか、考えてみてください。2年後には社会情勢も当然変化します。いま転職をして2年後を迎えるのか、進学・卒業して2年後を迎えるのか…30代の残りの2年をどのように過ごすべきが、じっくりご自身に問われることが重要です。

その上でもし進学を希望されるなら、単に費用や在学期間等の条件で決めるのではなく、卒業生を調べられるなどして、しっかりとした経営観・価値観・人生観を備えた人材が集まるスクールやプログラムを選択されることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。