転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第40回
2008.05.15

コンサルタント経験を、事業会社の経営企画として活かしたい

コンサルタントとして、某コンサルティングファームに勤務してきた38歳です。これまで新規事業立ち上げや事業・業務改善など、クライアントの経営企画・戦略立案に携わってきました。現在はマネージャーとしてチームをまとめ、それなりの実績も残せています。

今後はこれまで積み上げてきた経験・スキルを、コンサルタントとしてではなく、事業会社の経営企画業務(できればマネジメント職かそれに近いポジション)で発揮したいと考えているのですが、どのようなキャリア・チャンスがあるでしょうか?

Answer

経営コンサルタントの38歳、色々な可能性が産業社会に存在します。ただし、2つの点で、残念ながら欧米ほどその多様性がありません。

1つは、上場企業の経営陣に、すぐにポジションがないこと。 2つめは、ベンチャーを創業するチャンスが少ないこと。

日本では様々な事情から、上記のようなキャリアの可能性が少ないのですが、筆者は常々この2つのパターンが増えてほしいと切に願っています。そのあたりの話は別の機会に譲るとして、それ以外には、色々な機会があるといえます。

まず、もっともチャンスが多いのは、外資系事業会社への転身になります。

日本で事業を展開している大手でマーケティングや事業開発などのディレクターレベル、あるいは新規参入してきた企業のゼネラルマネージャー等がよくある例です。セールスのPL責任を持てるコンサルタント出身者であれば、さらにチャンスは広くなります。しかしながら、経営コンサルタントの方はセールスが苦手である場合が少なくなく、財務マネージャーやディレクターとして、CEOの直下で事業戦略・経営管理を手がける職に就くケースが多くみられます。外資系企業は日系企業と異なり、いわゆる経営企画室というものがありませんので、同様の役割を担う日本支社のCFOとなる方もおられます。

つぎに考えられるのが、中規模の企業(資本金1億以上)の執行役員や経営企画室長、部長など。経営陣の支援をし、リーダーシップを必要とするポジションです。これらは社内コンサルタント的な仕事から始められますので、非常にスムーズにキャリアを展開できます。ベンチャー企業や企業再生、MBO案件への参画などもここに含まれると思います。

また、少ないチャンスにはなりますが、投資銀行やプライベートエクイティなど、金融機関への転身もあり得ます。資本政策・企業財務などに関わりながら経営判断についての見識を高めることが可能で、経営者になるひとつの道として有効といえるでしょう。

ご希望されている「事業会社への転身」とは異なりますが、やはり比較的良くあるのは、別のコンサルティングファームへプリンシパル(ここではマネージャーの上、パートナーの下という位置付け)としてや、ディレクターとして転職するパターンです。経営戦略コンサルティングからITコンサルティング、HRコンサルティング、業務コンサルティングなど、スコープを変えて特化型のファームでパートナーとなるケースもあります。

コンサルタント職としては継続することになりますが、コンサルティングファームもひとつの事業を行う会社であり、その経営を目指すことも選択肢のひとつとして考えて見られてはどうでしょうか。

以上、大きくは4つの方向になるのですが、最後に、経営コンサルタントご出身の方が経営者となっていく場合に、避けて通れない注意点についてお伝えしたいと思います。

コンサルティングファームと異なり、事業会社の組織は、高学歴者・高度なビジネスフレーム所有者だけで構成されているわけではありません。様々なタイプの方と仕事ができる人、それらをリードできる人がマネジメントとして望まれます。

修羅場の経験、泥臭さ、判断力、意志決定力、リスクテイクできる力、責任を取る力、リーダーシップ…など、色々な要素が事業会社経営には不可欠な力として求められています。それらは、実践を通じてしか獲得できないことも事実です。

いかがでしょうか? 以上を理解されたうえで、ぜひ日本を牽引する経営者を目指して頂ければと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)