転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第48回
2008.09.11

面接の場で、応募時と異なる職種を打診されてしまいました

現在、転職活動中で、いくつかの企業との面談が進んでいます。先日、自分が第一志望にしている企業の面談の場で、志望したものとは異なる職種を提示され、そちらでの採用も検討していいか、というお話をいただきました。

自分が志望していたのは、同社のマーケティング部のブランドマネジメントに関わる部門で、上司となるリーダーがPLも見ているところになります。一方、今回お話があったのは、同じマーケティング部ながら市場分析などに軸足を置いたポジションでした。選考中に企業から別のポジションを提示されるのは、よくあることなのでしょうか? また、このお話を断った場合、不採用とされてしまうのでしょうか?

募集時の職種に関心が高かったのはもちろんですが、こちらの企業や事業そのものにも強い魅力を感じており、どのように判断をすればいいか迷っています。ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

採用面談の場で、企業側から異なるポジションを提示されるのは良くあることです。以下、ご相談者の第一希望のポジションを仮にAとし、提示された別のポジションをBと呼称してお答えしていきます。

まず「ご本人がやりたいこと」「やれること」「採用企業がやってほしいこと」の3つの視点で、AとBのポジションを整理してみてください。それぞれ、どのような状況なのかをしっかり見極めて分析し、判断すべきだと思います。

やれないことをただ「やりたい」と主張してみても、企業に取り合ってはもらえません。もちろん、別の魅力や将来性等を見込まれてポテンシャルで採用に至るケースもありますが、基本的には「やれる」というスキル・知識・実績による証明が、オファーを勝ち取るためには不可欠だと思います。Aのポジションについて、それらの証明をきちんと行えたか、ご自身の単なる願望を述べただけではなかったか…振り返った上で判断してください。

つぎに、異なるポジションを提示された理由について、ご質問の中では述べられていませんが、はっきりさせておく必要があると思います。

  • Aは他の候補者の採用決定で充足してしまい、同じ部署のBを提案された。
  • Aには適正がないが、Bなら適正があると判断された。
  • Bを管轄するリーダー(採用担当者)が、Aのリーダー以上にご相談者に関心を持った。

などなど、さまざまな可能性が考えられます。先方の事情や意図を、可能な限り広く面談を通じて知ることが重要なのですが、今回の面談では、残念ながら裏側にある企業の事情や意図を、十分に伺えなかったのかもしれませんね。

Aというポジションに興味が強く、かつ、やれる自信をお持ちだったのであれば、Bを提示された際に即座に「Aについて状況はどうなっているのでしょうか」「Bをご提示いただいた理由をお聞かせ願えますか」と切り返し、詳細を知ることができたはずです。持ち帰って悩むこともなかったと思います。面談の現場で言われたことの意味を的確に捉え、しっかりその場で情報を聞き出す力を持つこと。それを、今後はぜひ意識していただきたいと思います。

推察するに、きっと面談の場では、マーケティング系のキャリアを強く志していること、採用企業の事業に高い関心を持っていることを既にアピールされたと思います。そうだとすれば、Aを志望しすぎるあまり「Bなら嫌です」と回答しまうことは、自らアピールした内容と一貫性を欠くような印象を持たれ、マイナス評価につながる可能性があります。

今回の場合は、Bを断る理由がAに関心が強いというだけでは、不十分に思います。ですから厳しいようですが、NOという回答されるなら「すべて不採用となることもある」と覚悟をもって申し出る必要があるといえます。(きちんと回答をする前に、再度、企業側へBを提示した理由について問い合わせることができそうな状況でしょうか? もしそうであれば、ぜひ問い合わせるべきです。)

今回のご相談者のようなケースは、転職・採用の現場ではよく見受けられます。個人と企業の間に立つ我々のようなキャリアコンサルタントがいれば、こんな場面でも企業側の情報をできる限り候補者にお伝えすることができます。これは個人にとって、キャリアコンサルタントを介した転職活動をする大きなメリットといえます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)