転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第49回
2008.09.25

採用企業から、次のステップへ進めなかった理由を聞き出したい

現在、転職活動中の29歳です。あるマーケティング系のコンサルティング会社に在籍しているのですが、今後は事業会社に移ってキャリアを積んでいきたいと考え、いくつかの企業と面談を進めています。そのうち、これまでの経歴を活かしながら、マーケッターとして自社のプロダクトに関われるということで第一志望にしていた企業から、「今回はご期待に添えない結果となりました」という残念な回答を頂いてしまいました。

自分自身としては、開示されていた募集要件に外れていないと感じており、面談時の感触も良かったことから、つぎに進めなかった具体的な理由が思いあたりません。今後の活動の参考のためにもその理由を知りたいと思うのですが、企業からこれ以上の回答をもらうことはできないものでしょうか?

Answer

インターネット経由での募集・応募が始まって以来、書類選考ならびに面談結果でNGとした理由について「開示しない」という方針を持つ採用企業が増えています。

ひとつには、応募者の数が爆発的に(ゼロが3つも4つも!)増えてしまい、型どおりの回答しかできないほどの処理量となっている事情があります。人気の企業ほど当然、その応募者数・応対数は天文学的に増えてしまっています。

個人の方が直接応募するよりは、我々のような人材紹介会社経由の応募の方がまだ理由をヒアリングできる可能性は高いといえますが、それでもなお「会社の方針」として全く開示されないケースが増えていることも確かです。もちろん、これは応募者にとってあまり好ましいことではありません。しかしながら、大手企業やコンサルティング会社など、人気の企業では致し方ない状況のように思えます。

また、そのような企業内部の事情のほかに、不採用となった人がインターネット上で様々な反論や持論を書き込むことが多くなってきていることも、企業が理由を開示しない要因の一つでしょう。

人事・採用活動のご経験があれば逆に良くわかることなのですが、”ご本人の後学のため” “良かれ”と思ってアドバイスも含みながら不採用となった理由を伝えたところ、候補者が採用側の誠意を理解できず、逆に屁理屈をいって敗者復活戦を希望してくる場合が実は少なくありません。昨今、巷でいわれる「モンスター」と化した候補者が出てきており、一旦そのようなことがあると採用企業ではこの経験に懲りてしまい「今後は一切どのような事情があっても不採用の理由を開示しない」と方針が決まってしまうのです。

例えばこんなケースを耳にしました。応募要件として「海外勤務経験、ならびに海外での経営経験」となっているポジションに対し「日本の企業では相当年齢が上でないと経営職に就けない。私は経営職とはいえないが、海外で経営のアシスタントをしていたのでそれに準じる。だから適格だ。落とすのはおかしい」など。ご本人からすれば、積極性から生じるもっともな申し出とも受け取れますが、採用企業が求めているものとのギャップを、一歩引いて冷静に感じ取っていただきたいものです。

また、候補者に表面上伝える理由とは何らか別の要因があり、それをストレートに伝えると候補者に失礼になるなど、苦慮すべき点が想定されると、本当の理由を開示しない判断が下るケースもあります。

以上のような採用現場の状況から、不採用理由が開示されない場合、さらに深追いして聞いてみても回答が得られる可能性は低いと思われます。

理由が開示されているのであれば、それを真摯に受け止めるのはもちろんですが、もしなくとも、開示できない採用側の事情があることを理解する必要があるでしょう。開示されたコメントにいたずらに反論し、開示する意思を持った企業に方針転換をさせる事態を招くことは、広くはつぎの候補者の学習機会の損失に繋がることをくれぐれもご理解ください。

顧客企業(採用企業)から不採用の理由が開示されている場合に限ってのことになりますが、私のようなキャリアコンサルタントは、プロとして、その理由が公平に見ておかしい、書類や面談での見落としや誤解が起因していると判断した際には、仲介者としてそれらを是正する動きをします。それが顧客企業の不利益(優秀な人材を逃す)を正すことですし、候補者の皆さんのキャリア機会を守ることに繋がるからです。

最後に…本当に真摯に候補者のことを考えて、不採用となった理由について助言してくれる採用企業も当然多数あります。その回答は、候補者の方に新たな考え方をもたらしてくれるでしょう。しかし残念なことに、到底妥当性のない理由を挙げてくる企業も一部にはあり、そのような企業からの助言は何の役にも立ちません。逆にそのコメントを真に受けることで、キャリアプランについて思い悩む・考えすぎることでマイナスになる場合もあります。

いずれにしても、個別事象よりも、全体を広くみながら進めていかれるのが良いでしょう。理由が開示されていなくても、合否に囚われすぎるのではなく、ご自身が求めているものが相手側にはなかったと解釈されて、つぎの機会を前向きに探すことをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)