転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第47回
2008.08.28

公認会計士として監査法人に勤務中。今後は事業会社へ移りたい

公認会計士として、ある監査法人で会計監査の業務を行っています。現在の業務に就いて7年目をむかえ、今年で34歳になります。ここ数年、同僚の離職が相次ぎ、一人に対する業務量が増え、それもあってか業務が流れ作業的になりがちで、このまま現在の仕事を続けていくことに疑問を感じ始めました。

今後は監査という第三者的な立場ではなく、自ら何かを生みだすような仕事をしてみたいと思い、事業会社への転職を考えています。ただ家族がおり、極端に年収を下げることは避けたいとも思っています。このような自分に、これからどんな展開が考えられるでしょうか?

Answer

弊社アクシアムでは、過去にも多数の公認会計士の方々の展職をご支援してきました。

監査法人におられる方は、30歳ぐらいまでは概ね600万円から1000万円(監査法人の規模や勤続年数などで勿論異なります)までの報酬で、実践での経験を積んでおられます。しかしながら、マネージャーになられる30代半ばからは報酬が急激に上がり、顧客がしっかり信頼できるコンサルタントとなると、30代でも2000万円を超える方が出てきます。顧客へのアドバイザリーとして、あるいは監査業務にご自身の適正が合っている方は、そのまま代表社員となるまで、順当に監査法人で長くキャリアを積んでいかれます。

一方、30代に入ると、今回のご相談者のように、違った道を考える方も出てきます。

ひとつは金融業界への転身、もうひとつは事業会社への転身。変わったところでは、海外で力を発揮したいというような方もおられます。また、「財務・監査・決算・税務などの業務から離れたい」と、まったく別の職種へのキャリアチェンジまで考える方が過去にはおられました。

現職の年収がどの程度なのかご質問からは分かりませんが、34歳で1000万円の年収を得ておられると仮定してお話を進めると、外資系企業であれば、800~1000万円程度から最大1200~1400万円程度まで可能だと思います。しかし、日系では大手企業でも現年収と同様の金額が提示できるのは大手商社のみでしょう。事業会社、製造業などでは1000万円はきってしまうといえます。

ベンチャー企業であれば、何か特別な状況でもなければ、年収は600万円程度になります。潤沢な資本を持つベンチャーで、年収1000万円のCFOというチャンスもないわけではありませんが、想定としては最大でも800万円が現実的なところだと思います。どちらかといえば、ストックオプションなど別の形での報酬に期待することになります。

ましてや今後希望する職種が、財務・会計・税務に係わらないものとなると(例えばマーケティングに展開したいなど)、十分な職歴がなくともポテンシャルで採用を検討してくれるベンチャーで、まずは職歴を得ることを優先し、そのトレードオフとして年収が半額の500万円になることも覚悟する必要が出てきます。

以上のように、年収を極端に下げれば職域を広げることはできますが、監査法人から事業会社に移ることと現在年収の担保を第一義とするなら、外資系企業でのチャンスを探すことになると思います。英語力をお持ちであれば、十分案件はあると思います。もし英語が苦手であれば、日系の大手企業で1000万円を最大目標としつつも、若干下がってしまうかもしれないとして転身先を吟味することになるでしょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)