転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第53回
2008.11.20

外資系企業の面談に通らず。理由は”押しの不足”というのですが…

先日、ある外資系企業の面談を受けました。自分自身では話もスムーズにでき、うまく運んだと感じていたのですが、次のステップへ進むことができませんでした。お断りの連絡をくださった際、担当者がおっしゃっていたのは「とても優秀な方だが、押しの強さを感じなかった」ということでした。

これまでのスキルや経験などについては、きちんとお話できたと思っていただけに残念でなりません。もっと積極性を出すべきという意味だとは思いますが、もう少し具体的に、面談の場でのアピール方法などについて教えていただければと思います。

Answer

初対面の間柄では、見かけで相手を判断することのほうが、人間にとって容易です。採用面談という場で、プロであるインタビュアーが応対したとしても例外ではありません。現実的には相手の内面を理解するよりも、まず外面の理解をするほうが簡単で早いのです。人というものは、頭よりも先に視覚で判断し信じようとする傾向があるようで、服装・顔立ち・声の大きさ・話し方・態度等がインタビュアーの心理に与える影響は、決して少なくありません。月並みなことかもしれませんが、まずネクタイの色を赤に変えて臨むなどの工夫をされてはどうでしょうか?

また、より意欲を感じさせる質問や、相手を高揚させる質問を事前にしっかり用意しておくことが有効だと思います。例えば「御社のサービスはここが素晴らしいと思うが、○○の点では特別の配慮がされているのでしょうか?」というような質問は、相手の事業を十分理解していると暗に仄めかすことになり、また意欲的だと捉えられる内容です。

かつ、その指摘ポイントが正しく的を射たものなら「良く聞いてもらえました。じつは、こんな工夫をしているのです」と相手が自社の自負なども語り、話が弾み、面談そのものを肯定的に記憶してくれる可能性があります。このような良い空気、良い流れを作れれば、ご自身のスキルや実績・経験を伝える段階に話が及んだ際にも、有利に運ぶでしょう。

無限に時間をかけて候補者を理解しようとするインタビュアーなど存在せず、面談の場ではどうしてもYES/NOを判定しようという動きになります。ですから(すこしあざとい表現になりますが)候補者としては、短時間の中でいかに相手に肯定的な記憶を残すかがポイントになってくるのです。

また、あるレベルの「押しの強さ」は、事業会社でもコンサルティング会社でもベンチャー企業でも、採用企業側の基本的な要求ポイントになります。今回ご面談された企業や職務の詳細は分かりませんが、本国サイドとのやり取りの中で、外国人と対等以上にわたりあっていけるようなエネルギー値の高さが重視されていたのかもしれませんね。(外資系企業では、このような理由で候補者の積極性をとても重視する場合が見受けられます。そして、大変優秀ながら、この点が不足だとの評価を下され、採用に至らない日本人候補者の方が少なくありません。)

それから、貴殿の中に「赤いネクタイをつけて面談にいくなんて」というようなお気持ちはありませんか? つまり、外見的な工夫を凝らすよりも中身、頭脳・スキルこそを売り込みたいなど。勿論、もしそのようなお考えをお持ちであるとしても、それを否定したいのではありません。ただ、採用面談は限られた時間内での勝負であり、ご自身の内面を理解してもらうには、まず外面(服装・顔立ち・声の大きさ・話し方・態度等)について肯定的に捉えてもらわなければ始まらない、ということもぜひ念頭においてください。

何らかご自身が努力して対策をされなければ、初対面の相手が、まず外面で「控えめなタイプの人だ」「冷静沈着だが情熱を感じない」「ビジネスを引っ張る強さがあるか?」というような印象を抱いてしまい、肝心の内面の判断にまで行き着かない場合が今後も起こってくるでしょう。ぜひインタビュアーとの心理戦、当日の作戦をしっかり立てて次回の面談に望み、良い結果を手にしていただければと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)