転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第54回
2008.12.04

いよいよ留学2年目の秋。MBA後はコンサルか事業会社かで悩んでいます

アメリカのビジネススクールに留学している32歳です。いよいよ就職活動が本格化する2年目の秋をむかえ、十数社にアプライをしました。ある一社からは既にオファーをいただき、数社から次の面談や最終面談をしたい旨のお申し出をいただくことができました。

アプライした企業には、戦略コンサルティングファームと事業会社の両方が含まれるのですが、自分の今後にとってプラスなのは「コンサルか、インダストリーか」という点について迷っています。MBA卒業後のキャリアとして、どのように考え選択をすればいいのか、ぜひご助言をお願いします。

Answer

既にオファーを手にされたとのこと、なによりです。32歳というのは多数のオファーを手にできるご年齢ですが、ご承知のとおり2008~2009年は、金融業界や世界経済が大きく揺れ動き、転換点をむかえる年となりそうです。

業界や会社の名前、年収で判断をするのは禁物です。時代の動きやご年齢(自分の人生の時間軸)の方が、考慮すべき重要なポイントです。35歳になられるまでの3年間、世界がどう変わっていくのか。2012年、さらにその先の2015年にどうなっていたいのか。このような時代だからこそ、しっかりとお考えになられ、ご自身のキャリアのビジョンとデザインをもって、意思決定をしていただきたいと思います。

35歳以降は、今回のように多数のオファーを同時に手にできる可能性は低いでしょう。ですから、それまでに確固たる実績や自信を持った人材となっていることが何よりも大切になります。MBAで学んだことや過去の経験を活かし、どんな価値観を基準に(何にプライオリティーをおいて)何を成し遂げておきたいのか…ぜひ熟考いただければと思います。

さて、前段が長くなってしまいました。コンサルティングファームと事業会社についてですが、MBA卒業直後のキャリアとして”こちらが良い”という明快な答えはありません。コンサルティング業界に身をおくことの主なメリットは「広く業種を見られる」「経営レベルの問題を扱える」「年収が他業界より高め」などの点であり、主なデメリットは「意思決定力を磨くチャンスが少ない」「リーダーシップを体得しづらい」「優秀な人としか仕事ができなくなる」という点だと筆者は考えています。そして、事業会社に身をおくメリット・デメリットは、ちょうどこれらの逆であると考えます。

どちらも一長一短です。もちろん、前職(MBA留学をする前のキャリア)によっても、個別に考慮すべきことはあると思いますが。

そこでお勧めしたいのが、それぞれの業界(あるいは具体的な企業があれば、その企業)へ進み、35歳から40歳あたりの年齢になったときのご自身をイメージされてみること。きちんと他者に提示できる実績を作れており、自分に自信も持てている姿が浮かぶようであれば、コンサルティングファームでも事業会社でも、どちらでもかまわないのです。

そのイメージがあいまいであればあるほど、未来がぶれてしまう幅は大きくなるでしょう。時代の流れを掴んだ現実的なビジョンを持ち、そのビジョンの実現のために「○○歳では、こんな自分になっていよう」「ここなら、なれる」と考えられるものが、選択すべき道といえます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)