転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第79回
2010.02.11

35歳で転職が5回目。なかなか面談に進めない。

現在35歳、第二新卒でインターネット業界に飛び込んで以来、転職とともにキャリアアップをしてきて、現在勤めている会社が5社目になります。

大学卒業時には大手企業に入社したのですが、98年当時、ネットビジネスに夢をもって第二新卒でベンチャー企業に飛び込みました。戦略コンサル出身の社長が創業した、当時流行りのSIPS系のビジネスを行う会社で、インターネット・ビジネスコンサルタントになるべく仕事に打ち込みました。

その後、コンサルティングでは売上増加が望めなくなり業務縮小を余儀なくされているところ、Eコマース事業で成長している会社の社長に誘われ転職しました。その会社は順調で、入社後まもなく部長となり、40名の部下をもつようになりました。ここで、マーケティングや新規事業開発、Eコマースについての知識とスキルを身につけ、また実績を上げることができました。さらに、BtoBを基本とするネットビジネスの立ち上げを行うベンチャー社長から役員候補で来て欲しと誘われ、チャレンジングだと思い転職しました。無事にその社長の期待に応え、会社は株式公開することができました。

しかしながら公開後は組織マネジメントが業務の中心となり、自分としてはチャレンジングと思えることもなくなってしまいました。そんな時に、モバイル時代を切り開くベンチャーの社長から誘われ、執行役員待遇で転職しました。33歳の時です。ところが、2年経っても思ったような業績を上げることができず、現在転職を考えています。

自分から転職活動するのは第二新卒でベンチャーに飛び込んだ時以来になるのですが、まったくと言っていいほど書類選考を通過せず、面談に至りません。転職回数が多いというのが各社からくる回答です。最初の転職以外はすべて誘いがあったためなのですが、あまり理解を得られないようで焦っています。どうしたらいいのでしょうか?

Answer

面談・面接に進まない本当の理由は、単に転職回数が多いからということではない可能性が極めて高いといえます。貴方は度重なる転職を「誘われたから」という理由で説明されていますが、その説明もよくないですね。説明の仕方さえ変えれば、事態は好転すると思います。

どのような説明をすればよいのかをお話しする前に、転職回数やその理由について、採用側がどのように考えるかをご説明しましょう。

採用側は、苦労して採用したのにすぐに(1-2年で)辞めてしまうということをまずなにより避けたいと考えています。この点、転職の理由が自らすすんでだろうと他から誘われてだろうと、関係ありません。その理由の如何を問わず、転職回数が多いという確かな事実から、また転職を繰り返す可能性が高いと判断されてしまいます。これは仕方がないことです。

この事実は極めて真摯に受け止める必要がありますが、もう一つ重要なことがあります。

部下の採用をしたことのある方ならお分かりだと思いますが、採用側は「即戦力になるだろうと思って採用したら、まったく期待はずれだった」ということも、何としても避けたいと考えているということです。そのために、採用者は、候補者のレジメや説明されている転職理由の行間から、できるだけ多くのことを読み取ろうと努力します。「もっとチャレンジしたかった」とか「新しい挑戦がしたい」とか「事業の成長余地に限界を感じた」とかあるいは「社長と合わなかった」とか、どの候補者もが並べるありきたりの理由や言い訳は聞き飽きていて、そこに隠れている別の理由を探ろうとしているのです。

ここで、貴方の自尊心が大きく傷つくかもしれない質問をあえてさせていただきます。

だいぶ厳しい話となってしまうかもしれませんが、現状を打破し、さらに大きく成長したいと思うのであれば、次の問いにもう一度真剣に向き合ってみてください。(これは、採用側が持つ疑念でもあります。)

  • 二社目を辞めた時は、業務縮小に伴う会社都合解雇だったのですか?それとも自己都合ですか?
  • 三社目で役員を目指すことは考えなかったのですか?
  • 四社目で株式公開を果たした後、本当にチャレンジできることはなかったのですか?
  • 人を育てたり組織を作ったりすること(組織マネジメント)はチャレンジではないのですか?
  • 現職に執行役員待遇で誘われた時、それを断ることは考えなかったのですか?
  • 現職で思ったような業績が上がっていないことについて、貴方に責任はないのですか?
  • 転職の1年後、また他から誘われたらどうしますか?

いかがですか?

お分かりかと思いますが、貴方は「実は主体性が低いのではないか」、「困難な状況に陥るとまたすぐに辞めてしまうのではないか」、「責任逃れをする人ではないか」などと疑われている可能性があり、結果的に転職を繰り返す人なのではないかと思われているかもしれないのです。

 

ここで、さらに気付いていただきたいことが三つあります。

第一に、貴方の説明には、「自分から進んで転職するのは今回を含め2回なので、誘われて転職した他の3回は、カウントしていただきたくない。転々としているわけではないということがなぜ理解されないのか?」という意識が強く表れているということです。

これは、甘えであり、責任逃れと捕らえられてしまいます。自発的な転職でも誘われた転職でも、転職に変わりはありません。自分が選んだ選択であり、貴方の意思決定なのです。

第二に、会社が倒産したり、ダウンサイジングしたりした場合の転職は「致し方なし」とみなしてもらえるということ。ただしその場合でも、指名解雇されるなど恒常的に成果が上がらずに解雇となっていないかを当然ながら気にされます。

第三に、転職の理由が真実かどうかということ以上に、納得してもらえる理由かどうかがより重要だということ。採用側は、「それなら話はわかる。今度は自社でしっかり活躍してくれそうだ。」と納得したいのです。

前述の「ありきたりの理由」にもしかしたら真実があるのかもしれませんが、それでは納得してもらえないと思って間違いないでしょう。

これを踏まえて考えてみると、貴方がどのように転職の理由を説明すればよいか、一つの方向性が見えてきます。

それは、100%主体的な立場をとって話すこと、責任逃れをしないことです。

 

具体的には、次の三点について考えてみてください。

  1. 誘われて転職したと言わない

    人に責任を押し付けている感覚を採用者に与えてしまわないよう、しっかり自分の選択であった点を強調しましょう。

  2. 自分の失敗を受け入れ、至らなかった点を認める

    自分がベスト、常に正しかったといわんばかりの説明になってはいけません。失敗を受け入れ、自分の非や至らなかったところを認めましょう。そのほうがよほど真実味があり、相手に納得感を与えます。

  3. 失敗からも学びがあったことを説明し、だからこそ次は上手くやれることを説明する

    おそらく採用側は、「貴方は、成功の後、現在挫折している」という認知をしているはずです。この点はかなり深刻です。ただ、逆にこの挫折から学び、立ちあがってさらに大きく成長できることを示しさえすれば、それは大きな武器になります。そのために失敗や挫折から学んだことを示し、次は上手くやれるということを説明する必要があるのです。

 

たとえば、以下のような説明を考えてください。聞き手の印象はどのように変わるでしょうか?

「今現在上手くいっていないのは、私に・・・が不足していたからだ。過去の実績を過信し、自信を持って今の会社に転職してきたが、実際には力不足であったと思う。そのために、部門の業績は上がらず、私は厳しい立場に追いやられることとなってしまった。残念ながらやり直す機会は得られそうにない。しかし、・・・ということを大きく学んだので、再度のチャレンジの機会をもらえれば成果を上げられると考えている。どうかその機会をいただきたい。」

ここでもう一つ、蛇足ながら知っておいていただきたいことがあります。

それは、「ベンチャー企業ばかり経験している方は、失敗から学べない方が多い」と思われている可能性があるということです。

失敗することをおそれず進めるベンチャーのデメリットとして、「失敗しても気にしない/振り返らない=失敗からの学びが少ない」ということが言われているのです。確かにその傾向はあると思われます。(「失敗することが許されないから一度の失敗からしっかり学ぶが、一方で新しいことにチャレンジしなくなる」という大企業文化と対照的です。)起業家精神は良いことですし、技術やサービス、市場にイノベーションをもたらすべく新しい知識を吸収できる点も素晴らしいのですが、冷静に失敗の分析を行ないそこから学べることも、やはり重要なことです。 過去の成功までが単なる運が良かったためと言われないよう、時に失敗からの学びもしっかりとしていただきたいと思います。

以上を考慮し、説得力のある、納得してもらえる貴方自身の転職ストーリーを作ってみましょう。

きっと状況は変わると思います。

ちなみに、小職の知る限りでも16回も転職を重ねている方がいます。このような方は、さすがに40代後半で会社に所属するという転職はできなくなり自営業となっていますが、なかには大手企業ばかりの転職で11回という豪の方がおられます。

これは、転職の度にしっかりと学び、納得感のある転職理由を示すことができ、そして一貫性のあるストーリーがありさえすれば、10回程度まで転職は可能ということを示しています。

大企業に長くお勤めの方には考えられないことでしょうが、中小、零細などすべての労働市場の正社員の転職市場をみてみると、転職数回は当たり前で、10回という方も決して珍しくはないと言えるのです。

とはいえ、転職回数が多くても良いと思っているわけはなく、できるだけ転職しないほうが良いとは思います。日本に限らず、長期雇用が企業にとっても個人にとってもプラスになると筆者は信じているのです。

もっと長期の視点で、転々としないようにしっかり考えることがなにより大事なことだと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)