転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第93回
2010.09.16

紹介会社経由で応募済みの企業の別の求人に、他のサーチファーム経由で応募できるか?

サーチ会社A社から求人企業X社を案内されて応募したのですが、2か月経っても選考結果の連絡がきません。A社に選考結果について問い合わせたのですが、「結果はまだ出ていません、もう少しお待ちください」という回答が続いていたため、「おそらくNGなのだろう」と、その件はなかばあきらめていました。そのような時に他のサーチ会社B社からX社の別のポジションを案内されました。

もともと強い関心のあるX社ですし、そちらのポジションのほうが自分にもフィットしていると感じたため、B社からあらためて推薦してもらうこととしました。ところがB社から「X社に推薦したところ、他のサーチ会社からすでに紹介されており、その紹介会社経由で書類選考NGであることを伝えているということだった」との連絡がありました。A社からは「まだ結果が出ていないから待つしかない」と言われていたのでどういうことかA社に問い合わせたところ、なぜか要領を得ない回答ばかりで、状況が全くわかりません。極めて不誠実な対応でした。

このようなサーチ会社A社は候補者の機会損失を起こしていると訴えたいぐらいなのですが、紹介会社経由で応募済みの企業の別のポジションに、他のサーチ会社経由で再応募できないのでしょうか?あるいは、応募後、別の紹介会社経由に応募を切り替えられないのでしょうか?

また、サーチ会社から案内された案件がバッティングした時に、どのような基準でサーチ会社を選ぶべきか教えてください。

Answer

残念ながら、一度サーチ会社に紹介を承諾されたのであれば、他のサーチ会社に変えることはできません。正確には、サーチ会社から企業に紹介されてしまった後からでは、同一のポジションへの応募を他のサーチ会社からに切り替えることはできないということになります。

また、ある企業へ応募した後は、たとえ別のポジションだとしても、別のサーチ会社からの再応募は断られるケースがほとんどです。

これは本来、人材紹介会社の利益をある程度担保しつつ、採用側企業と当該候補者の利益を最大化するためのルールであり、時に採用企業と紹介会社の間の契約によって規定もされています。

具体的には、「紹介をされたポジションでは不採用ながら、別のポジションで選考・採用したい」という採用の現場でしばしば起こるケースなどに対応するためです。これが、「推薦されたのとは別のポジションだから」という理由で紹介会社にフィーが支払われないというのでは、紹介会社がその会社に人材を紹介するインセンティブが半減してしまい、その会社は紹介会社から良い人材を紹介してもらえなくなってしまいます。(採用ポジションが紹介時・応募時と変わるというのは、それくらいしばしば起こるケースと言えます。)

よって、ほとんどの採用企業は「人材紹介会社から紹介された人材について、その後一定期間(半年から1年程度)は他のポジションで採用となった場合もその紹介会社に請求の権利を与える」という規定を設けるなどしています。そしてこのルールがあるが故、「とにかく企業に推薦・紹介してしまえ」とばかりに、ろくな説明もなく、適性の高いポジションの検討もなく、無理矢理でも紹介をしてしまうという人材紹介会社が後を絶たないというのが実情だと思います。

(例外的に、「グループ企業が複数あり、かなり多数の求人を人事部門が一括で行っているなど、そのすべての可能性を人事部門が検討することが実質不可能」というようなケースでは、完全に個別の応募を優先し、異なるポジションであれば他の紹介会社経由となってもあらためて選考するとしている企業があります。本来そうあるべきともいえますが、実際は稀な例です。)

 

本件のケースにも、この原則が適用されてしまったわけです。

上記の通り、別のポジションであれば他のサーチ会社経由で再応募できる可能性もあるのですが、本件の場合少し情報が不足していて、「本当にX社が書類選考でNGとしたのか?」「サーチ会社A社に起因する理由で、NGとなったのか?」「サーチ会社B社からの紹介が本当にできなかったのか?」など判断しかね、対処方法などのご助言は致しかねます。

 

サーチ会社A社がまったく信用できないとなると、今からできる事があるとして、直接X社の人事に連絡し、事実事項の確認をしたいということで申し出をして情報を聞きだすということくらいです。

そもそも求人企業は複数の人材紹介会社に求人を依頼しているため、バッティングは避けられません。マネジメントクラスなどの機密性の高い求人であれば、限定的に数社のサーチ会社を使うというケースが多いのでバッティングを生じることも少ないのですが、スタッフ、マネジャーなどでは、大手人材バンクから数名で運営される専門サーチまでかなり多く紹介会社を使うのでバッティングがよく起こります。

そこで、バッティングは必ず起こるだろうことを想定し、ここであらためてサーチ会社=サーチコンサルタントの選び方、良し悪しのポイントについて触れておきたいと思います。

 

◆サーチ会社=サーチコンサルタントの選び方

 

<良いサーチ会社、良いコンサルタントの特徴>

  1. 紹介実績が豊富で、知見のある業界や職種をしっかりと持っている。
  2. 一般開示されていないレベルの情報を十分に保有しているなど紹介先企業に関する情報が豊富で、その企業とのパイプが強いことが伺える。
  3. 推薦先やコンタクト先について、社長か、役員か、人事責任者か、採用マネジャーか、あるいはWebシステム経由の推薦かなど、明解な説明がある。
  4. 選考プロセスについて説明があり、かつスピーディーに推薦を行ってくれる。また、時間がかかる場合やプロセスが未定の場合でも、その理由や根拠を的確に示し、状況を説明してくれる。
  5. 対応が誠実で、求人企業側だけを見すぎていない。サーチ会社(自社)の利益だけを優先していないことがうかがえる。
  6. キャリアの考え方について新しい視点を与えてくれる。
  7. 短期の転職のみならず、中長期のキャリアプランに添った助言を与えてくれる。
  8. レジメ、インタビューについても、適切な助言を与えてくれる。
  9. 客観的な助言のみならず、主観的な意見も述べてくれる
    (客観的な助言だけでよいと思う人もいると思いますので、個人差があります)。

 

<悪いサーチ会社、悪いコンサルタントの特徴>

  1. 紹介実績がなく、知見のある業界、職種がない。
  2. 紹介先企業に関する情報、採用の背景、職務内容が曖昧で、Webに掲載された情報と変らない。パイプも強くなさそう。
  3. 紹介プロセス(誰にどのように紹介されるかなど)について説明がなく、なんとなく信頼できない。
  4. 選考プロセスや状況について説明がなく、情報、状況を能動的に調べてくれない。時間がかかっている場合も一切理由の説明などされない。
    (推薦企業に選考状況を確認しても、まったく回答・連絡をもらえないことも実際にはありますが、それでも頻繁に確認、特別調査してくれるかどうかで大きく異なります。)
  5. 自社の利益を優先するだけで、採用側企業の代行、言いなりである。
  6. コンサルティングというのは名ばかり。コンサルタントの価値観を押し付けるばかりで自分の考えを尊重してくれないし、希望をまったく聞いてくれない。
    (希望を聞いてくれるコンサルタントが必ずしも良いコンサルタントだとはいえませんが、現実の求人と候補者の希望が合致していなければ、どこが合致していないのか合理的な説明をしてくれたり、別の視点からの考え方を示してくれたりするなど、希望を聞きつつ押しつけでない助言をしてくれるのは、新しい気づきを促してくれる良いコンサルタントです。)

 

ただ、態度も質も悪いサーチ会社と分かっていても、その会社のコンサルタントから自分が希望する良い案件を提示されて「採用審査が始まるので急いで応諾してくれ、弊社だけが扱っているので他には言わないでくれ。」といわれたら、ほとんどの方はつられて応諾してしまいます。

そんな時も、「本当に他のサーチ会社は扱っていないのか?」「このサーチ会社経由で、本当に成果につながると思うのか?」の2点は気をつけてみてください。

本当に信頼できるキャリアコンサルタントがいるのであれば、ぜひそのコンサルタントに相談し、確認してみましょう。誠実な良いコンサルタントなら、そんな時もしっかりと正しい説明をしてくれるはずです。普段から何でも相談できるホームドクターのような、そんな信頼できるキャリアコンサルタントを持っておくことをお勧めします。結果的に甘い言葉に騙されたり、疑わしい情報に振り回されたりすることはなくなるでしょう。

以前、第62回の相談室で「初めての転職。人材紹介(サーチ)会社を使う時、何を知っておくべきでしょうか?」というご質問にも答えておりますので、こちらも参考にしてください。

“展”職相談室 第62回
初めての転職。人材紹介(サーチ)会社を使う時、何を知っておくべきでしょうか?

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)