転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第94回
2010.10.07

回答期限が切られてしまった。

本日(9月10日)、外資系企業A社から内定(オファー)を頂きました。入社日は11月1日、オファーへの回答期限は1週間後の9月17日に設定されています。回答期限の延期を申し入れたのですが、「入社日も迫っているため、延期はできません」ということで、延ばしていただけませんでした。

しかし、その外資系A社よりも関心の高い外資系B社があります。

このB社は来週12日に日本支社長面談の予定が入っており、そこで採否が決定するといわれていますが、本社の承認も必要とすることから、A社の回答期限である17日までにはとても正式オファーに至らないとも通知されています。

全くの偶然ですが、2社とも同業種の上に同じような戦略を考えて、さらにはポジションも社長直下でマーケティング職にあたり、日本市場の開拓責任者として着任した後、上市に成功すればそのままCOOとして事業統轄を任されるということで同等、処遇もほぼ同じです。

その中で私がB社により関心が高いのは、一般知名度もB社のほうが若干高いこともありますが、それ以上にA社よりもB社の社長の経営力、ビジョンに魅力を感じているからです。

A社の回答期限が延期してもらえない中、B社を断念してA社に決めてしまうかどうか、悩んでいます。

Answer

A社、B社の機会がほぼ同様であるということですが、実際はやはりA社とB社でキャリアになんらかの違いがあるはずです。まずはその点を今一度しっかり比較してみましょう。

お気づきの点だけでも、「知名度」と「社長の魅力」の2点があるわけですが、きっとそれ以外にも2つのキャリアのプロスコンスがあるはずなので、それを冷静に比較検討する必要があります。

本来であればしっかりと様々な要素を詳しく吟味するべきなのですが、回答期限も迫っていらっしゃいますので、まずは判断できる点だけ簡単に回答します。

貴方のジレンマは、2社のうち1社を選ばないといけないということではなく、まだ1社しかオファーをもらえていない中で選択を迫られているということでしょう。

単純化すれば、このタイミングでは次のどちらかを選択することになります。

  1. A社を選んで、B社を断念する。
  2. B社のオファーがもらえるかどうかまだわからないが、A社のオファーを受けない。

この2つの選択肢のどちらかになるのですが、もうひとつ、2.のA社のオファーを受けない選択肢には「受けないながらNOと言わない」というオプションがあります。A社にYESといわないながらも完全に断ってしまわず、後に「やはりA社に入社したい」と言って受け入れられる余地を残すのです。

A社にとってみれば、他に有力な候補者がいないのなら他に選択肢がありません。つまり、回答期限を過ぎても貴方が入社したいと言えば受け入れてくれる可能性は高くあります。その余地を残すために、完全に断ってしまわず(Noと言わず)、「今はまだYesと言えない。」と回答しておくのです。

ただし、当然リスクはあります。そもそも貴方以外に二番手の候補者がいるとしたら、貴方がオファーを受けなかった時点でその方にオファーがされ、すぐに決まってしまうかもしれません。そうなると完全にA社の選択肢は消えてしまいます。あるいは、回答期限が過ぎてから、あまりに長い日数が経過してしまえば、新たに別の候補者に決まってしまう可能性もあります。

いずれにしても、B社の採否が決まるまでの賭けにはなってしまいますし、結果的にA社のオファーを失う可能性はありますが、回答期限を守ってYESといえなくても、後にA社のオファーを復活させる可能性を残すことはできるのです。

状況によりますが、いずれにしても相手の判断に委ねるのではなく、ご自分で後悔のない判断・選択をされることをお勧めします。

過去のケースでも、B社を断念してA社を選択し成功された方もいます。また、B社のオファーを待って、A社を断念して、結果B社のオファーを勝ち取り、後日成功された方もいます。 また、残念ながらそれぞれに逆のケースも存在します。A社を断念した後、B社のオファーを得ることができずに大きな後悔をした方もいれば、B社を断念してA社に入社したものの、やっぱり駄目だったと早期に離職することになった方もいました。

このようにパターンをみるだけでは、可能性が多すぎて何を元に判断すべきなのかわからなくなってしまいがちです。

結論としては冒頭申し上げたように、いろいろな要素をA社B社それぞれのキャリアで判断すべきなのですが、もしも、選択する要素の中で本当に最優先されたい比較項目が、社長の経営力やビジョンなのであれば、その点を軸にしっかり熟考されるべきだと思います。 ご自分の人生の重要な選択ですから、A社とB社の経営者を比較することで、何がご自身のキャリアと人生にプラスになるのかどうか、本当に熟考してみてください。

例えば、A社の経営者が素晴らしいという結論になったとして、ご本人のキャリアに具体的にどのようにプラスになるのか、さらにしっかり考えておきましょう。経営者の質によって業績が左右されることはもちろんですが、単純に経営者に魅かれるかどうか、指導を受けられるかどうかなど、細かくみていくと意外にご自分のキャリアには大きく影響しないことが多いかもしれません。

以前のご相談者の方で、入社先の日本支社の経営者は素晴らしかったが、アメリカ本社の役員はさほどでもなく、入社後1か月で日本支社の経営者がリストラされてしまい、頼りにしていたキャリアの判断における指標であった方がいなくなってしまったというケースもありました。

本論とはなれてしまったかもしれませんが、この回答期限についてのご質問は、限られた時間の中で、また限られた情報の中で最善の回答を導き出すという、まさにビジネスの意思決定と同質の問題でもあります。

是非とも、ご自身で納得のいく選択をされ、展職を実現して頂きたいと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)