転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第103回
2011.07.07

夫婦で転職したい。

現在、夫婦ともども転職活動中です。夫は40歳、私は33歳、年次は異なりますが、同じビジネススクールを卒業しました。夫はNYで金融業界に勤務、私は東京で戦略コンサルティングファームに勤務しています。私たち夫婦の転職活動についての相談なのですが、まず夫婦で同じ会社に応募できるのでしょうか?また、もし同じ会社へ応募する場合に何か注意しておかなければならない点はあるのでしょうか?

Answer

30年近くMBAの方のキャリア相談を行ってきましたが、夫婦ともどもMBAを持っておられる方も沢山おられますね。卒業年次が同期であったり違ったり、同窓であったり別の学校であったり、キャリアも異なる業界であったりと様々です。どちらか金融でどちらかがコンサルティング業界というのは多いパターンのように思います。

夫婦ともにMBAをもっておられると(MBAとMAというケースも含め)、お互いに尊敬・理解しあうことが多く、円満な家庭が多いという印象を持ちます。ただ、お互い仕事が忙しく、家族が優先されず不和に陥るというケースもあるようなので、なにより家庭円満を第一にお考えいただきたいものです。

さて、質問への回答と夫婦同時の転職活動における注意点を述べます。

まず、同じ会社に応募できるかどうかという質問ですが、外資系の大手企業はほとんど問題ないと思います。夫婦だから片方しか採用審査対象にしないという理由はありません。実際に、夫婦で同時期入社されたケースもありますし、どちらかがお勤めの会社に相手の方が後から入社されたケースもあります。業界・職種はあまり関係ないように思います。

だたし日本の大手企業は、家族や親族の入社を嫌う傾向にあります。公式には否定するでしょうが、夫婦での勤務を敬遠する役員がいたり、社内結婚したら女性は寿退社するのが普通だという非合理的な古い慣習にとらわれていたりすることがまだあるようです。これが中小企業となると、経営者やオーナーの価値観次第で、全くかわります。家族の入社を問題にしない経営者もいれば、口に出してはっきり否定する経営者もいます。

その点、中小企業の場合はっきり言われるのでたいてい入社前に確認ができるのですが、やっかいなのは、日本の大手企業です。人事は表向きには「その様なことはない」と否定するので安心して入社すると、実際は違ったというケースがあるのです。その点、確認には細心の注意が必要になります。最近は海外MBAの方が今までのように外資系企業のみならず日系の大手企業や未公開企業に入社されて活躍されているケースもあるので、念のため申し添えておきます。(実際には、夫婦で同じ日本の大手企業にキャリア採用されたという話は聞いたことがありませんが。)

また、夫婦でも、親子でも、兄弟でも、同時に応募する際に気をつけなければいけないことがあります。一方が採用され、他方が不採用になった時にお互いがその事実をどのように解釈するか、二人ともオファーが出たら二人とも入社するのかなど、それぞれのケースについて当事者の二人が事前に協議しておく必要があるということです。気分に属する問題が生じないように、そして気まずい関係にならないようにしておくほうがよいでしょう。

ただ、夫婦ともども同じ会社、同じ業界に入社することは、この不確実性の高い時代には、実はあまりお奨めできません。会社はいつどうなるかわからないものです。

今回はご夫婦同時期に転職活動をされているようですが、一人がリスクを伴うチャレンジをするのであれば、一方は安定したキャリアを選択するという形でリスク分散しておくほうが良いと思います。二人ともにリスクの高い業界・会社に属することは避けたほうが無難です。また、仕事がハードすぎて、あるいは集中しすぎて家庭を顧みることができない状況になることも、できれば避けたほうが良いと思います。

 

ただ、二人同時にリスクの高い業界に飛び込むことや二人とも仕事が忙しく一緒に過ごす時間があまりなくなるということでも、お互いが相手を理解していて、価値観も等しく、それでも大丈夫というのであれば、それはそれでよいでしょう。実際、海外勤務と国内勤務で別居となっても問題なく円満な家庭を作っている方もいらっしゃいますので。

参考までに、他のケースもご紹介しておきます。 配偶者や兄弟、家族の誰かが勤めている会社に、後でもう一人が応募されるというケースです。この場合、応募者は在籍者に対して「自分が応募することと、オファーが出た場合、同じ会社で働くことになるかもしれない」ということを事前通知しておいたほうが良いでしょう。

過去に、夫が妻に事前に相談をすることなく、妻の在籍している会社に応募をしたというケースがありました。その会社の人事が妻に「あなたのご主人と思われる人から応募があった。同じ部署でのインタビューになる可能性があるが問題ないか?」と内々にヒアリングをしたところ、妻の答えは「No」でした。会社側としては気にしないのですが、妻が気にしたのです。結果的に書類選考の段階で終了となりました。そして、このことが理由で、家庭内でもめることとなりました。

事前相談をしておくか否かでまったく異なる結果になることがありますから、くれぐれもご注意ください。ましてや、後で家庭の不和が起こってしまっては、もともこもありません。

このようなことを避けるために、夫婦同時に転職活動をされる場合は、お互いに応募先を分けてアプローチしていくという選択もあります。

いずれにせよ、夫婦二人にとってチャンスと思われるような会社があり、どうしても同時に応募しようと思うのであれば、お互いに応募することや、お互いの採否にかかわらずその結果を受け入れることを事前に相談しておきましょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)