転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第104回
2011.08.04

ブランドマーケティング職に転職したい。

財務会計および経営管理の分野で経験を積んだ後、アメリカのMBAに留学してマーケティングを専攻しました。現在33歳です。企業派遣生なので、卒業後は派遣元である機械機器メーカーに戻り、海外事業部に配属されて、引き続き管理業務を担当してきました。

しかしながら、帰国して1年が経過し、どうしても消費財メーカーのブランドマーケティング、一般消費者向けBtoCのビジネスに転職したいと思うようになりました。実は昨年から、FMCGの業界に絞って大手外資系企業数社に応募してきましたが、全て書類選考でNGとなってしまい、面談にも進むことができませんでした。BtoCのマーケティングはあきらめたほうがいいのでしょうか?

Answer

35歳を超えている方であれば、ほぼ断念したほうが良いとご助言すると思います。27歳あたりまでの方であれば、志望動機や面談対策をしっかりとしておけば、きっとオファーがもらえる会社があると思います。しかし、33歳は微妙なところです。実際にはかなり難しいと思います。 一般的には、何歳になってもあきらめないことは大切ですし、チャレンジする気持ちを持つことを否定するつもりもありません。むしろ、そのような方を応援したいと思いますが、このまま同じように何社応募してもおそらく結果は同じで、ブランドマーケティング職で採用される可能性は低いでしょう。

それでもわずかながらチャンスは存在しますし、それを掴むための方法もあります。ただ、そのためには、やみくもに消費財メーカーに応募するのではなく、まず、なぜそこまで消費財メーカーでマーケティングの仕事をしたいと思われたのかについて、自問自答することです。そこから活路を見出せると思います。
なぜ、大学卒業時や、20代の若い時にBtoCビジネスへの興味を持つ自分に気づかなかったのか?なぜ、今そのように思ったのか、しっかりご自分の気持ちに寄り添ってみてください。
MBA留学で一時的に何かに感化されているだけではありませんか?また消費材メーカーのマーケティング職に就けたと仮定して、その先のキャリアのことを考えておられますか?本当にその仕事を得意分野としやっていける自信がありますか?FMCGのマーケティング、広告、Web、セールス、などの仕事を一から積み上げてゆく覚悟がありますか?「やりたい」という気持ちを持ち続けられますか? 業界、職種を変えることになりますから、年収は当然ながらかなり下がってしまうことになりますが、その覚悟はできておられますか?仮に現職が800万円程度の年収と仮定して、それを600万円に下げてでもやってみたいというほどの強いお気持ちがありますか?
さらに、そうした覚悟だけではなく、具体的な「成功できるだろう根拠」が必要になります。 例えば、消費財メーカーのセールスマーケティング経験があってMBAを取得されているのであれば、外資系企業は喜んでブランドマーケティングや、トレードマーケティングのマネジャー職で採用してくれるでしょう。それは、経験が生かされる可能性が高いからです。年収も800~1000万円程度は十分見込めます。
しかし、そのようなご経験をお持ちでない場合は、ちゃんとその職務で成果を上げ成功できると思われる根拠がなくては採用されません。そこがしっかりしていることが肝要です。いくら年収を下げる覚悟があると言っても、その根拠がご自身で見いだせていなければインタビューでも的確に答えられず、採用されることもないでしょう。
つまり、熱意や覚悟、さらには成功するだろう具体的な根拠が必要ということです。
ここで、FMCGの経験のない方が、他業種(機械メーカーや金融機関)から消費財メーカーのマーケティング職に上手く展開できた方の事例を挙げます。
一見、成功するだろう根拠がなさそうに思われるかもしれませんが、採用の際には何らか根拠を持って採用されたはずなので、その点をぜひ想像してみてください。

Aさんは、銀行からの企業派遣MBA生ながら、絶対にブランドマーケティングに進路を変えたいと決意し、留学中に派遣元に秘密裏に外資消費財メーカーに応募し、オファーを取り付けました。通常、キャリアチェンジには、このMBA卒業時の機会を活用することがもっとも有効です。このような大幅なキャリアチェンジの場合は、応募先企業のケーススタディーや、対象業界のマーケティングを徹底的に研究して、その業界の人も知らないほどの市場の動向や競合他社分析など、情報収集をした上で応募します。Aさんもそうだったと言えます。


Bさんは、メーカーからの派遣でMBAを取得。派遣元に戻ってからキャリアチェンジを希望しました。貴方と同じく、ほとんどのFMCG企業において書類選考でNGとなってしまいました。そこで、あえて遠回りの戦略をとり、Webマーケティングのベンチャーに転職。そこでBtoCのEマーケティングやリサーチ、Eコマースのビジネスの経験を培いました。購買、広告、WEBマーケティングについての実績をつくり、その後、外資系消費財メーカーのマーケティング・マネジャーとして転職しました。


Cさんは、33歳で戦略コンサルティングの会社に転職し、消費財メーカー向けのコンサルティングを多数経験しました。ブランドマーケティングマネジャーのキャリアはとらず、38歳で消費財メーカーの事業部長として、念願のBtoCビジネスの会社のセールスやマーケティングを考え、実行する立場になっています。


Dさんは、ブランドマーケティングというポジションを断念し、財務会計の経験を生かしました。外資系消費財メーカーの財務部に応募し、Financial Planning & Analysis というポジションのオファーを得ることができました。そして製品単位のコントローラーから事業部コントローラーに昇格され、そして10年強で外資系のCFOになっています。ポイントは、その一般消費財の市場でビジネスキャリアを積むこと、マネジメントとして消費者が求める製品を開発・提供することがやりたいことであり、ブランドマーケティング職に就くことが目標ではないと気付いたところにあります。その結果、成功したのです。


いかがでしょう?参考になりましたか?
前段で質問させていただきましたが、なぜ消費財メーカーのブランドマーケティングに関心をもっておられるのか、その理由が何かをもう少し堀下げると、今後のキャリアデザインについての目論見や展望がひらけてくるかもしれません。
※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)