転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第114回
2012.07.05

転職し、試用期間3カ月が終了した後、第一希望の会社からオファーが…

現在34歳で、先日2度目の転職を果たし、このほど3か月の試用期間が終わったところです。 入社したA社は実は第二希望の会社だったのですが、当時A社と同時に応募していた第一希望の会社B社から今頃になって誘いがかかっており、悩んでいます。

現在の会社は年収1400万円程度の条件ですが、B社のほうが年収も高くなりそうです。そして、報酬面以上に、B社のほうが、より将来性がありそうに思われ、B社の仕事をやりたいと思っています。

当時A社に入社を決めたのは、オファーに回答期限が定められており、その回答期限までに答えないとオファーが無効になってしまうからでした。平行して進めていたB社は、面談プロセスは最後まで進んでいたものの、本社の承認がなかなか取れず、時間切れとなってしまっていました。

それからおおよそ半年たった今、そのB社を紹介してくれていたサーチ会社から「あなたが要求していた条件で本社がやっと承諾した。入社して欲しい。現在のA社を短期で離職してもらうことになるが当社は問題視していないので心配しないでよい。」という連絡がありました。A社に迷惑をかけることになるのは重々わかっているのですが、どうしてもB社に転職したいと思っています。

B社に転職することに、何か問題があるでしょうか?まだ自分でも整理できていないのですが、教えていただければ幸いです。

Answer

人間は誰でも自己正当化するものです。本件も、ご相談されているように見えて、実際は「A社を短期間で辞めてA社に転職することを正当化したい」とおっしゃっているように思われます。あるいは、「それならB社に転職するのも仕方ない。短期間での転職となっても、大丈夫。」と言って欲しいというところでしょうか。そうだとすると、ご期待とは異なるアドバイスになりますが、私は、「このままA社に留まる方がよい」とご助言申し上げます。

「やりたい」という選択が良い選択になることもありますが、「やりたい」気持ちだけで選んでしまうのが間違いとなる場合もあります。まさに今回がそれにあたると思います。

B社を紹介しているサーチ会社は、自社の利益のためかなり歪んだ助言をする可能性があります。
私が「将来、リファレンスが取られた時に、A社の短期離職の経緯が判明すれば困りますよ」と助言しても、その仲介中のサーチ会社は、「履歴書から消してしまえば、わかりません。」と言うでしょう。
確かに「職業選択の自由」であるとか「自分の人生、やりたいことをやる方がよい」とか、正当化のための理由を挙げることはできるかもしれません。
しかし、冷静かつ客観的に考えてくださいね。

A社を3か月程度の短期間で一方的に辞めることは、労働契約を反故にすることにほかなりません。雇用側に採用や受け入れ、引き継ぎなどに相当の負担をかけているのに比して、ほとんどそれに見合った働きをせず、A社に損害を与えるということなるでしょう。例えて言うなら、「取引契約をした品物をまさに納品しようとしているところで、後から『もっと好条件のところが出てきたから』という理由だけで一方的に契約を反故にされる」というようなものです。

 

このリスクは、おそらく貴方がお考え以上に大きいと思います。
問題の大きさ、リスクを客観的にとらえていただけなければ、助言もあまり有効ではないかもしれませんので、少し大げさな表現になるかもしれませんが、まずは、A社で留まるほうが良いと思われる理由を詳しく述べたいと思います。

 

1)B社に転職するというのは、すべて自分のリスクになる


当然ながら、A社を短期で辞める理由について、「A社が回答期限を延ばしてくれなかったから」とか、「B社が早く承認を取ってくれなかったから」、「B社がA社を辞めてきてくれてと言ったから」などと責任転嫁し、正当化することはできません。
A社は回答を半年も待てるはずもないし、そもそもA社はB社に合わせる筋合いはないので、A社に落ち度はまったくないのです。仮に、上手く嘘をついてA社を辞められたとしても、後々に事情が発覚しようものなら、損害賠償請求がされてもおかしくないくらいです。 また、B社がA社の離職を薦めるのも、B社にとってはそこにリスクがないからです。
つまり、離職した後に何が起ころうと、それは自分の責任であり、貴方がリスクをとる必要があるのです。


 

2)「転職は35歳まで」という説に対する誤解


「35歳以上になったら転職しにくくなる。」という考えから、34歳でベストな選択をしておきたい、と思っておられるのかも知れませんが、大きな勘違いです。35歳以上という年齢だけで転職しにくくなるのではなく、「35歳以降を想定している求人は、概ねマネジャー/マネジメント層などハイクラス求人であり、しっかりした実績がないと声もかからない」というのが実態です。裏を返せば、35歳までにしっかりした実績を出しておくことができれば、35歳以上でも必要以上に恐れる必要はありません。むしろ、35歳までに、短期で転職したというレコードが残っているほうがマイナスとなります。

一度A社を選んだのであれば、そのA社で実績を出すことこそが評価されます。35歳以降においても求められる人材とは、「自分の選択をやり遂げる人」であることは想像に難くないでしょう。
仕方なくA社を選んだといって責任転嫁をしていては、かりにB社に移ってもうまくいかないのではないでしょうか?


 

3)「やりたい」ことを選ぶことが幸福になる近道、という誤ったキャリア観


B社のキャリアのほうがA社のキャリアよりも「やりたい」仕事で、B社がベストなのだと信じているのかもしれませんが、果たしてそうでしょうか?B社に転職したとして半年後、さらにやりたいと思う別の仕事や会社が出てきたらどうしますか?また転職するのですか?


 

確かに35歳までであれば、「より良い会社、より良い職務、よりやりたい仕事」を選ぶという理由で転職しても責められないかもしれません。その点、今なら、「A社に迷惑かけてでもB社に転職」というのは、できなくはないでしょう。
しかし、やりたいことを追いかけすぎると短期間の転職が重なってしまい、それこそ、あとで後悔することになります。例えば、転職したB社で上手くいかず、あるいは急なリストラ等の理由で、1年程度で離職せざるを得ないことになったりすれば、取り返しがつきません。 今度は会社理由だからという説明も、苦しい言い訳になってしまいます。

転職回数を重ねてしまうタイプの方が、ご自分の転職理由について、「これは会社理由、これは個人理由」と、半分は自分の責任でないかのように説明します。
実際そうなのかもしれませんが、数百名単位の採用の経験がある人事担当者にしてみれば、たとえ「会社理由だ」と説明を受けても、「本人がそれを誘発している部分」が透けて見えるものです。
そして、そのような人にかぎって、その後も短期の転職が続きます。選択が上手ではないというのも、仕事が出来ない人の証になってしまうのです。

あるいは、「やりたいことを追いかける人」=「やりたくないことを避ける人」という見方をされかねません。会社のことより個人のキャリアを優先する自分本意な人と見られてしまいます。それでは、やりたくないことでもやり遂げなければならない責任の重い仕事など、とうてい任せてはもらえないでしょう。

それは、35歳以降のことを考えれば、「やりたい」というだけで選ぶのは危険なのです。
「やりたい」というだけで決めないことをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)