転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第132回
2014.02.06

戦略コンサルティング会社と事業会社のキャリアの違いは何でしょうか?

大学卒業後、日系事業会社に就職。28歳で海外MBAを修得し、その後、戦略コンサルティング会社(以下、コンサル会社)で5年勤務しています。現在はケースマネジャーとなり、年俸は日系事業会社時の倍程度になりました。先日、日系企業に執行役員として転職した戦略コンサルタントの先輩から「経営企画室のマネージャーで来ないか」との誘いがあり、改めて自分のキャリアを今後どのようにデザインすべきか考えています。40代で経営者になりたいと思っていますが、このままコンサル会社で勤務して40歳ぐらいで、先輩のように事業会社の執行役員として転職するか、35歳以下の現時点で事業会社に転職するか、どちらがお勧めでしょうか?

Answer

40代で経営者になりたいというビジョンは、ベンチャーか、外資系か、日系か、本社勤務か、海外支社勤務か、再生か、創業か、あるいは業界は何か、などの資本系、採用主体、テーマなどによって、求められる要件(経験、知識、見識、実績)が大きく異なりますので、あなたの目指すビジョン次第でお勧めかどうかが変わります。

ここでは端的にコンサル会社と事業会社のキャリアの違いを整理してご説明するだけにします。どちらが良いかではなく、違いを理解し選択してください。筆者はあなたが計算ずくでキャリアを決める事はお勧めしませんし、そもそも「コンサル会社と事業会社のどちらにするか?」という選択枝でキャリアをデザインする限り、大きな成功やキャリアの幸福を得られる事は少ないと思います。

以前、とあるキャンディデートが「コンサル会社を立ち上げて事業会社のように運営するので君にはCOOとして参画して欲しい」と先輩に誘われました。そのキャンディデートは色々と分析し、その会社が大きくなる要素は理屈的にはすべて満たしていると判断して、3名のコンサル会社に創業メンバーとして参画したのですが、その会社は大きくなることはなく、結局5年後に解散することになりました。

コンサルタントらしく緻密にその会社の組織構造、ビジネスモデル、市場動向、外部環境などを分析することも確かに大事ですが、それ以上にもっとシンプルなパラメーターとして「自分が成長するか、成果が出せるか、株主がその実績を評価してくれるか、経営者としての自信を持てるか?」といったポイントで考えるほうが良いと思います。そのキャンディデートの失敗要因は、経営フレームだけを分析し入社の意思決定をしたことでした。もっと自らに問い、自身の将来はどうなるかという視点をもって判断すべきであったように思います。

「会社をどのように成長させるのか?」このシンプルな質問は戦略コンサルや経営者でも難題ですから、今回はこれ以上言及できませんが、まずはコンサル会社と事業会社のキャリアの違いを対比的な部分だけざっと整理しておきます。

コンサルティング会社事業会社のキャリア
物事を決めない物事を決める
チーム・プロジェクト管理まで組織や人的管理まで、役職者は経営判断まで
リーダーシップの実践がないリーダーシップの実践がある(ポジションによるが)
報酬が事業会社の10-100%アップ報酬がコンサルに比べ低い(時間単価は別)
戦略的思考、論理的思考の熟練実践的思考、行動規範の獲得
頭のいい人達、仲間に恵まれる頭のいい人達だけではないが、部下に恵まれることがある
経営判断とその結果を疑似体験経営判断とその結果が実体験として詳細に学び得る
タイプの異なる経営者から学ぶ事も可能一人の経営者の全人格を知る事が可能
物事の標準化が上手くなる手触りのある成果を自分の実感をして獲得する

別の視点としてワークライフバランスについて、コンサル会社は悪いとか事業会社は楽だという意見もありますが、これは個人差がかなりあります。事業会社だからといってコンサル会社以上に長時間労働になっている人もいますし、特に管理職以上はコンサル会社と違いがないという意見もあります。逆にコンサル会社で長時間労働でも家庭も円満で充実しており、ワークライフバランスが良いと感じる方もいます。

最近は実質的にハンズオン型のコンサル会社もあり、コンサルティング先企業の役員として転籍する方も見受けられます。コンサル会社と事業会社の間の壁をあまりに強く意識する必要がないのかもしれません。事業会社に転職するとしても、スタッフかマネージャーかディレクターか執行役員かによっても違います。「ディレクターとか執行役員クラス以上でしか事業会社に転職するつもりはない」というコンサルタントの方も多いのですが、そのようなコメントを出している方に限って結果的に45歳になっても、そのような機会に巡り合わず、コンサル会社からコンサル会社に転籍して、経営者になるチャンスを人生の中で失うというパターンに陥りがちです。タイトルだけに固執するのではなく、事業会社で得られるであろう貴重な経験を重視し、希望のタイトルよりも下の職位であっても飛びこむ気概も時には必要です。総じてそういうタイプの方が大成しているように感じます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)