転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第138回
2014.08.07

アメリカでベンチャー企業と日系投資銀行現地法人どちらがよいでしょうか?

先日、29歳の誕生日と、MBAの卒業式を迎えました。私は、MBA前は外資系金融機関の管理部門におりました。現在、アメリカでベンチャー企業のオファーと日系投資銀行現地法人のインタビューに誘われていますが、どちらがいいでしょうか?アクシアムでは東京ベースの求人が多い事は承知しておりますが、助言だけでもいただけないでしょうか。トップスクールを卒業できたこともあり、求人についてはこのほかにもお誘いが多く、幸い、昨年インターンシップを受けた、外資系企業と戦略コンサルの2社からはオファーを頂戴することができましたが、最後まで海外でキャリアを積んでいきたいという希望を持っているため、それらのオファーはお断りしました。

自分の長期的なキャリアプランがまだ定まっておらず、それほど経営を目指しているというところまで言い切れないことも課題だということは理解しています。

Answer

貴殿が何を優先して、何を結果として求めるか、メールだけでお答えするのには、かなり難しいご質問になりますが、頑張って回答してみます。

過去のMBAの方の活躍パターンからすれば、MBA卒業後アメリカに残ることを決断し、その後、A)日系金融現地法人、B)米系企業(ベンチャーや大手製造業などの事業会社)の2つで、どちらを選んだ人が日本に帰国後によりハッピーに見えるかといえば、私見も混ざってしまいますが、Bだと思います。

Aについては、報酬はいいのですが、金融業を何歳まで続けるかという大きな課題があります。報酬は最大化できる可能性がありますが、45歳以上のキャリアプランにつなげることが難しいのです。もちろん、フロントで営業をバリバリやって成果を出していれば、金融機関の間であれば転職できます。しかし、35歳以上、事業会社への転職はほぼ難しいところです。これは年収を下げたら事業会社に転職できると言う話ではありません。 過去にこのようなご相談がございましたので、ご参考までに。


“展”職相談室 第118回
「金融業界から脱出したいと考えていますが、チャンスはあるのでしょうか。」


一方、Bは意外かもしれませんが、PEファンドに展職、事業会社のFP&Aから在日外資系企業のコントローラーや、日本企業の財務会計、経営企画管理などにも展開しやすいです。 また、日本の大手企業もこれから変わって来るかもしれません。過去に日系企業の海外勤務者は、TOEIC700点レベルの英語力でもCOO、CFO、CEOとして「本社から海外に派遣されていた」という方々でした。しかし、昨今、それではグローバル化に対応できなくなってきています。本当に現地の人に交じって経営するとでもいいましょうか、「日本人」や「本社からの派遣」という特権をはずして、「個」として戦える人が必要になってきています。もしかしたら、将来はそのような経験を持った方を、日本の大手企業、グローバル化を目指すベンチャー、オーナー企業が求める時代が来るかもしれません。

結論として、MBA卒業後、アメリカに残るのであれば、金融機関の現地法人よりもベンチャー企業、事業会社の、できればコントローラー系や管理会計系の方が好ましいと考えます。

金融機関の米州戦略部門といっても管理会計、会計系の仕事なのであれば、32歳ぐらいまでは何とかなるかもしれませんが、それ以降は、金融のミドルと事業会社の財務会計、PL、BS、CFの回し方は随分と違いますので、前述の通り、事業会社に展職したいとなっても可能性が非常に低くなります。

当方も、アメリカ勤務の求人があればご紹介したいのは山々なのですが、日本勤務のものばかりで、ご期待にそえず申し訳ありません。ただし、32歳、35歳で日本に戻って来るとすれば、事業会社の経験をされている方がご紹介は容易です。

もちろん、貴殿は金融機関管理部門のご経験をお持ちですので、32歳ぐらいで日本に戻って来るとすれば、外資系金融機関にご紹介することは非常に簡単な事です。報酬も良く、人材紹介のコンサルタントからすれば、一番手数料も多くなるため、それを勧めるでしょう。ただし、それは個人の長期のキャリアをどう形成するかは、あまり考えていない場合の助言に多いです。何度も申し上げていることですが、時間軸を考えてキャリアプランを考えることが大事です。経営戦略と同じです。今年の売上が良くても、5年後、経営を悪化させてしまったり、10年後倒産してしまうような経営はやめるべきですよね。35歳までのキャリアにおける投資期間に、せっかくのMBAというカードが使える今、資産(学位)と資本(今からの時間)をどこに投資するか、考えてみてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)