転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第139回
2014.09.04

経営責任を持たせてくれる企業を探しているのですが、オファーに至りません。

大学を卒業後、日系大手企業の経営企画のスタッフ職やセールスマネージャーを10年近く経験しました。その後、外資系企業のセールスに転職して8年が経ち、現在42歳です。今の会社では、日本支社長は本社からいつも派遣され、どうやらそのポストに日本人が就くことは無い様子で、このままでは自分が日本支社長になる機会もないまま、30名程度の外資日本支社のセールスディレクターで終わってしまいそうです。

年収は2500万円程で、報酬は満足しているのですが、どこかもっと経営責任を持たせてくれるような企業はないでしょうか?外資・日系にはこだわっていません。自分ではゼロからセールスを立ち上げて、事業戦略や事業開発をリードしてきたつもりなのですが、書類選考でパスした後、オファーに至りません。何が足らないのでしょうか?

Answer

ご回答の前に注意点を一つお伝えいたします。

もし既に選考が終わった企業からNGの理由について聞いておられる場合、その理由の真意を分別して参考にされる事をお勧めします。インタビューの後、採用企業がご本人にNG理由を述べる際に、この年齢層の方への回答は、大抵の場合は差しさわりのない回答になってしまい、本当の理由ではない場合も多く、実はあまりご本人の参考にはなりません。稀にストレートに理由を述べてもらっている場合がありますが、それは大変貴重な意見で有益であるもの、とても耳あたりの良くない、批判的な直言かもしれません。有益な直言か、オブラートに包まれたNG理由かは分別することが必要です。

さて、推定ながらもご回答申し上げます。要因はいくつか考えられそうですが、インタビューでの応答がネックになっているという推定で回答します。

「なぜインタビューで通過できないのか」について、候補者として「キャリアプラン」「応募理由」「貢献できる点」「熱意」「年収」「開始日」の6点に絞ってまずは考えてみましょう。シンプルな話ですが、応募者と採用側が合意形成できなければオファーには至りません。年収の乖離、開始日の乖離、これは数字的に判断できるはずです。この数的ポイントは乖離がないと仮定します。「熱意」については目を輝かせて面接に臨んでいても、意外に言葉には表れてこないものです。「入社したい」「やってみたい」と言葉に出していますか?今回はこの点も言葉に出して、熱意も表現できているとして回答を進めます。

キャリアプラン、応募理由、貢献できる点、この3点のどこかに課題が潜んでいるはずです。思いつく課題を上げておきますが、該当するものがあれば、それが障害になっている可能性があります。

  1. 「経営者になりたい」と露骨に表現していませんか?相手がCXO求人であれば構いませんが、このフレーズは、迂闊に言えない年齢です。経営を目指している人を評価する場合もありますが、40代でキャリアプランとして経営者のトラックレコードがなく、ただ経営者になりたいだけの人は敬遠されます。30代のままイノセントに「経営者を目指したい」と言わないことです。
  2. 先方が「やってくれ」と頼みたい相手とは、「やれる」人、すなわち、貢献してくれるコアコンピテンス、スキル、知識、売り込みポイントが明解で、企業側の要件に合致している人です。採用の面接なのだから、当然この点も伝わっている「はず」と思い込みがちです。その会社があなたに何をやってほしいかを把握できていて、「何がやれるか」をインタビューで正確に伝えていますか?
  3. タイトルだけが外資日本支社取締役や日本支社長というポジションに就く事は可能です。探せばあると思いますが、それらは本質的な経営者ではありません。役員会も行われない、タイトルだけの形式的取締役はあり得ます。こうしたポジションでも満足できるという場合の探し方としては、最初から副社長、社長を探さないことです。部長からでも入社後、タイトルが日本支社長となる会社はあります。特に外資日本支社のセールストップが社長になるケースは多数あり、50名以下の外資は大抵がそのような形態で、本社役員とは異なりますので、経営経験や経営者スキルまでは問われません。PL責任程度になります。ただ、そのような企業が相手であっても、1.で述べたように迂闊に経営者を目指しますとは伝えないことです。セールストップの部長を募集中でも、あなたが魅力的な候補者であれば、企業が勝手に日本支社長や副社長のポジションを提示してくれます。

該当する点がありましたか?

ここまでお伝えしておきながら申し上げにくいのですが、「企業経営をしたい」と仰っているものの、残念ながら経営ポジションの可能性は少ないのではとご推察いたします。ご経験の中に「経営ができる」という根拠がないと思われるからです。セールスの実績がおありで、セールス部門をリードされてきたというだけでは、残念ながら会社経営者や取締役の候補者となりえません。

最後に必要なことを付け加えるとすれば、Self-awareness/自己分析です。自分に気付く事は最も大切なことだと思います。ここで注意いただきたいのは、自分自身について見つめよう、気付こうとする際に、「やりたいこと」「やれること」の2つを自分中心で考えがちであるということです。

本当は3つめの、「やってくれ」という声、すなわち社会からの声、企業からの採用側の声から自分に気付くことが大事です。

「やってくれ」という声に対して、多くの人は、「やりたくない」「やれない」となります。

「やりたい」と思った時には、「やってくれ」と言われないという、残念な堂々巡りをしている40代はとても多いです。

最初から3つが揃う転職はありません。

2つから始まって、数年後、気付いたら3つが揃っているのがハッピーな転職です。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)