転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第152回
2015.10.01

転職活動を始めるもすべてお断り。面接に自信が持てません。

コンピュータサイエンス系の大学院を卒業し、某ネットビジネス企業で開発エンジニアとして働く28歳です。エンジニアとしての経験を積み、現在はリーダーにまでなりました。現職ではモバイルビジネスを手掛けておらず、今後のキャリアを考えてモバイルアプリケーションに関する技術力を早く身につけたいと思い、転職活動を始めました。

そうして数社に応募したのですが、初回の面接ですべて落ちてしまいました。その理由として「我が社の企業文化に合わない」という意味のことを各企業から言われています。まるで自分の人柄や価値観が否定されているように聞こえ、すっかり自信をなくしてしまいました。転職活動も休止状態です。今後、どのように活動していけばいいのでしょうか?

Answer

深刻な問題ですね。書類選考に通過しているにもかかわらず、初回面接を通過できないというのは、どこかに根本的な問題が潜んでいるのかもしれません。「企業文化に合わない」という回答は、大抵の場合、体のいいお断りです(本当にその人の持つ価値観と会社の価値観が異なる場合もありますが)。そのような回答を複数社から同様に言われれば、自信も失くしてしまいますよね。本当につらいと思います。

服装や面接に臨む姿勢、健康状態、精神状態、基本的なコミュニケーションスキルに問題がなく、事前の準備(企業情報の収集、職務内容への理解、相手の求めるスキルや経験への理解)もできていると仮定して、面接を通過できない理由を一緒に考えてみましょう。

キャリア採用の面接において、企業側が知りたいことは以下の3点です。

A できる?
B やりたい?
C やってくれといったら、実際に来てくれる?

この3点について、相手は主に以下の4種類の質問をやり取りする中で探ろうとします。

(1)自己紹介
(2)転職理由
(3)志望動機
(4)質疑応答

本来、これらの質問にどのようにお答えになったのかを正確に分解・分析しないかぎり、解決すべき点は浮かび上がってこないのですが「もしかしたら、ここに見落としがあり、改善点があるのかも」という仮説をお伝えします。ご自分のこれまでの回答を思い出し、当てはまるものがないか丁寧に振り返ってみてください。

A できる?
自己紹介の部分で、自己アピールに失敗していませんか? スキル・知識・経験・リーダーシップ・強み等について採用側が求めるものを持っている可能性があるとみなされているからこそ、書類選考はパスしています。しかし当日、肝心の「相手が求めるポイント」について確認をしてもらえなかった可能性があります。面接の現場で「求められる能力を備えていること」「その能力で成果を出していること」を、明確にアピールできるよう準備をしましょう。自分が言いたいことのみを必死に話す方がおられますが、先方が求めていない強みをいくら強調しても、採用側は何の関心も示しません。

B やりたい?
ご相談者の場合は、ネットビジネスからモバイルビジネスに移りたいというのが転職理由であり、志望動機にもなっているはずです。きっと企業の要求要件と現状お持ちのスキルとの間には乖離があるでしょう。以下に述べる点を踏まえ、転職理由は過去に属し、志望動機は未来に属すと考え、ご自分のキャリアをうまく説明してください。そうすれば軸をしっかり相手に伝えることができます。

転職によってモバイルビジネスに移ることができたとして、ご相談者の利益にはなるでしょうが、転職先企業ではおそらく即戦力にはなりません。にもかかわらず、なぜ面接に呼ばれたのか? そこをつかみきれていないのではないでしょうか。あなたが先に提供すべきスキルや経験があるはずです。採用側もあなたに役立ってもらえる部分を見出しているはずで、その接点をきちんと自ら提示すべきです。例えば「応用できる技術は○○」と示したり、「最初は貢献できる○○のスキルを使って成果を出し、モバイルのアプリケーション開発に移らせてほしい」と自らプランを提案したり。また「不足している○○のスキルについては自分でこんな学習をするつもりだ」と熱意・意欲を伝えることも有効でしょう。

未経験の仕事について、ただやみくもに「やりたい」と言うだけでは、企業は採用したいと思いません。応募先企業あるいは応募ポジションとご自身との間にわずかでも接点を見い出し、今後のキャリアのシナリオを考えて、提示する必要があります。それをすべきは、じつは候補者側なのです。この点、誤解されている方が多いのでご注意ください。

なぜその会社、そのポジションに応募するのか? 候補者と企業、ポジションをつなぎ合わせることを、私たちアクシアムのキャリアコンサルタントは「オリジネーション」と呼んでいます。上記で述べた接点を見つける、あるいは作る作業のことです。過去に関係のなかった候補者と企業が未来に関係を持つためには、いままさにその接点を練り上げる行為が必要なのです。キャリア採用における面接では、そのための想像力・発想力がものをいいます。

「現職はネットビジネスを手掛けているが、じつは御社のモバイル上の商品やサービスをユーザーとして使っている。ほかのどの競合よりも具体的にこんなところが素晴らしく良くできている。そんなサービスを自分も提供したいと思う」というような接点を披露するだけでも有効です。採用側は同業、同職種の経験者だけを求めているわけではありません。うまく接点が説明できない…そんな場合には、上記の回答例を参考に工夫してみてください。

C やってくれといったら、実際に来てくれる?
接点やキャリアのシナリオをきちんと提示でき、ご自分の売り込みについては成功していても、もうひとつ失敗しやすい点があります。それは、希望年収、希望勤務開始日、他社応募状況、すぐに転職を決心できるか、といった内容についてです。年収や勤務開始日の希望が採用側の目論見と大きく乖離している場合もNGになりますし、「第一志望が他にあるのでは?」「転職の決心がすぐにはできなさそう」と感じさせてしまうのもNG判定の誘因になります。高すぎる年収や、先延ばしととられるような勤務開始日を希望してはいませんか? あるいは、意欲的でないととられかねない言動をしていないか、思い返してみましょう。

いかがですか? 少しでも思い当たることがあれば、早々に改善いただくのは勿論ですが、一度、キャリアコンサルタントにご相談いただくのもお勧めです。(1)~(4)の模擬回答を教えてくだされば、具体的にアドバイスを行うことも可能です。かなり改善・パワーアップができ、採用企業の心をつかむ回答が作れると思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)