転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第155回
2016.01.07

現在39歳。40代になる前に転職すべきでしょうか?

電子機器メーカーに勤める39歳です。20代後半に海外のビジネススクールへ留学経験があり、MBAを取得しています。これまでは、セールスならびにプロダクトマーケティングの領域でキャリアを積んできました。欧州の市場開拓やアジアの赤字販売会社のターンアラウンドマネージャーを経験し、昨年日本に帰国。現在は、国内市場の新商品の担当責任者として勤務しています。海外赴任時には仕事が面白くやりがいがあり、自分の職務に邁進していましたが、国内に戻りすっかりモチベーションが下がってしまいました。その主な原因は年収です。海外赴任手当を含めて1,400万円程あったのですが、手当がなくなったため基本年収である900万円程度に戻ってしまいました。仕方がないことだと頭ではわかっているものの、外資系企業に勤務する友人が自分の倍以上の年収を手にしていることを目の当たりにし、転職を考えるようになりました。これまで経験がないのですが、40歳を超えても転職は可能でしょうか? また、今からの転職で年収アップ(できれば2,000万円に近づけたい)は叶うでしょうか?

Answer

まず、ご相談者のご経歴・ご経験であれば40歳以降でも転職は可能です。外資系企業へ転身された場合には、年収2,000万円の機会を得られる可能性もあります。ただし、レジュメ作成やインタビュー対策など、転職のためのノウハウを踏まえた周到な準備が必要です。しかし、それ以上に重要で問題なのは、自分なりのキャリアのシナリオをまだお持ちでないこと。まして年収だけでキャリアを選択されることなど、まったくお勧めできません。まずは今後のキャリアについて真剣に考えてみるべきでしょう。このままではたとえ転職活動を始めたとしても、キャリアのシナリオを持っていないため、採用企業への売り込み方を練り上げ、インタビュー対策(質疑応答への回答準備など)をすることもできません。

そして、キャリアについてのご質問が少々ナイーブなのが心配です。海外MBAを持ち、海外勤務経験もお持ちなのであれば、キャリアプランについて現在の会社以外での可能性も含め、考えてみる機会はたくさんあったはずです。それを素通りされてきたことは、すこし残念に思います。今回のご質問内容は、本来であれば35歳までに考えておくべきテーマだったかもしれません。

外資系の同世代のご友人は、きっと自分なりのキャリアプランを30代でしっかり設計されたのだと思います。評価が厳しくリストラもある外資系でキャリアを積んでいく選択、リスクもあるキャリアの道を自発的に選択された結果が、今の年収2,000万円という成果に結びついているのでしょう。一日でも早くキャリアについて真剣に考え、ご自分に問いかけ、シナリオを描くこと。今からでも遅くありません。これから5年先のことを考えていきましょう。もちろん出遅れた分、ご友人の倍ほどはチャレンジをしなくてはなりませんが、その覚悟も決めましょう。

転職に関する具体的な助言としては、すぐに2,000万円の年収を狙うにはリスクが高いように思います。まずは1,200万円のレンジで転職をして結果を出し、ご自身の市場価値を高め、5年後に2,500万円を狙うといったプランのほうが現実的です。今でも「外資系企業の日本のスタートアップでゼネラルマネージャー職。年収は2,000万円」といった求人があるでしょうが、外資での勤務経験のない方にはあまりお勧めできません。株価が急落した翌日に日本から撤退してしまう、いきなりアジアのトップからクビを言い渡される、試用期間中にクビになる、といったこともありえます。たとえ入社時の提示額が2,000万円でも絵に描いたモチに終わることも珍しくありません。そんな外資特有の予見不能な出来事に、転職も外資系での勤務経験もない方は、対処できないと思われるためです。

何より前述のとおり、年収だけでキャリアを判断するような考えはあまり好ましくありません。これからのキャリアデザイン、生涯プランなどといった大げさなものでなくても、5年から10年先のご自分のキャリアについて、現実的な求人ニーズに即した形でイメージを持つことが大事です。ベンチャーに転職したらどうなるか? 中小企業ならどうか? 大手外資か? 小規模な外資支社か? さらには業界を変えたらどうなるのか? いろいろなプランをご自身に当てはめて考えてみてください。

キャリアコンサルタントにご相談されるのもお勧めです。プロであれば、相談開始時に白紙であったものも、2時間後にはある程度の輪郭を形づくるまで導いてくれるでしょう。その理由は、キャリアコンサルタントが実現可能なキャリアの機会と、過去のオリジネーション(求人と求職の双方がマッチした理由)の膨大な実例を知り、理解しているから。信頼できるコンサルタントにご相談されれば、キャリアを考えるためのフレームを提供してくれると思います。

結論としては、短期的には焦らず、中期的にはご自分の年齢に対して対処が遅れている危機感を持っていただきながら、ご自分なりのキャリアのシナリオを描くべく、キャリアと向き合うことを始めてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)