転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第159回
2016.05.06

大手製造業の43歳。社外の可能性と年収アップの可能性はあるか?

大手上場会社(製造業)で課長職にいる43歳です。現在の年収は約1200万円。昨年、同期の同僚がある外資系企業に転職して、年収が1500万円になったと聞きました。これまでは、定年まで現在の会社に勤めるつもりでしたが、役員になることのみが目的のような同僚ばかりが残り、今後について考えてしまうようになりました。私自身も役員になれば1億円以上の報酬を得られそうですが、その確率はわからず、少なくとも10年位はかかりそうです。現職ではこの先、リストラも確実視されており、転職を考えるべきかと思い悩んでいます。私に社外の可能性はあるのでしょうか?

Answer

ご相談のポイントは3つですね。現在の会社で役員になれるかどうか。リストラの不安がある状況なので転職すべきか。社外に転職し、年収がアップする可能性はあるか。翻って、3つのポイントを一文にしてみますね。ご相談者の本心は「リストラの心配をしなくてよい会社へ転職し、年収がアップし、そこで役員になれるような可能性はあるか?」とお聞きになりたいのだと意訳できます。

可能性についての回答は、「はい、その可能もあるでしょう」というだけです。転職を考えるべきかについては、「どちらとも言えません」としか回答できません。

あまりに質問内容がナイーブに感じられ、辛辣な言い方になってしまい恐縮ですが、まるで第二新卒程度の職歴が短い方のご質問のようです。このままでは、実際に社外に出るべく転職活動を始められたとしても、かなり苦戦を強いられそうです。

40代ともなれば、これまでのキャリアの中で磨いてこられた知識や経験や強みがわかっていて、ご自身の進むべきキャリアの方向付けなどについて、ある程度のお考えはお持ちのはず。ご質問の中にもその片鱗が少しは見え隠れするものですが、今回のお話の中からは、その40代らしさが見受けられません。自発性や創造性よりも、ご自身が受動的に受けることができるメリット、利益だけが転職動機になってしまっています。転職先やご自身について、もう少し理解を深めなければ、非常に厳しい転職活動になってしまうでしょう。

現職に残られたとしても、リストラが始まった際には、今までのようにご自身のキャリア形成を会社に依存する体質のままでは危ういといえます。会社は、会社に依存する人よりも、貢献してくれる人が欲しいのです。ご自身のキャリアについて、もっと深く考えるところから、もう一度スタートしましょう。今までのキャリアの棚卸しを行い、今後の希望・展望を描く。そして、それらを実現するための中長期の目論見を設定する…ご自身のキャリアの文脈をハイライトしてまとめ、5分程度でアピールできるようになるまで考えてみてください。

ちなみに、東洋経済新報社が運営する東洋経済オンラインで、こんな記事が紹介されていました。
「役員報酬が多い」500社ランキング

こちらは東洋経済オンラインが独自調査し、昨年1月に発表されたもの。役員平均年収のほか、取締役・執行役の人数や従業員平均年収、平均年齢なども調査し、公開されています。ご自分の会社も含めて広く世の中の報酬はどのようになっているのか、参考指標を知っておくことは有益だと思いますので、一度ご覧になってください。ただし、「ランキングで上位の会社に転職した方がよい」などという見方をされても、ご自身のキャリアとは全く関係がなく、あまり意味がありません。あくまで本来の“ご自身のキャリアプラン”を考えることが最重要事項と心得てください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)