転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第167回
2017.01.05

社外から転職してきた人が上司に。関係がうまくいかず…。

大学院を卒業後、戦略コンサルタントとして8年間勤務。コンサルタント時代には主に製造業を対象としたコンサルティングの経験を積み、その後、マザーズ上場企業の部長、兼経営企画室長として転職し、3ヵ月が経ちました。現在は事業戦略やM&A、アライアンスを担当しています。部下は2名おり、CEO直轄のポジションでやりがいのある仕事ができていました。しかし先月、戦略コンサルティング出身の40代の方が入社。CEOと私の間に入り、財務会計・人事・総務・IT・経営企画などの管理部門全体を統括する執行役員に就任しました。その方の入社からまだ1ヵ月と経っていないのですが、出身コンサルティングの違いが影響するのか、まったく議論がかみ合いません。CEOとの対話の時間もほとんどなくなり、自分から何かを提案しても通らないことが増えたため、上司である執行役員から言われた仕事だけをするようになってしまいました。このままでは、やりがいと同時に自分の能力を伸ばすこともできないのでは、と悩んでいます。私は転職すべきでしょうか?

Answer

ずばり、転職すべきではないと考えます。精神的に強いダメージを受けるほど関係がひどい状態であれば、CEOに相談するなど何等かの方策をとった後に転職をお考えになってもやむを得ないですが、そうでなければ転職するのはお薦めしません。

その理由と、解決にむけたアドバイスを5つほど記させていただきます。

1)「まさかCEOと自分の間に別の役員が入社するとは思っていなかった」「入社前に、その可能性についてまったく聞いていなかった」ことに対する不満というのが、あなたの本当の気持ちに思えます。企業の組織変更は起こり得ることであり、CEOの経営判断であれば受け入れざるを得ません。これは大手企業でも起こる話で、ましてや成長拡大中のベンチャーでは外部からの登用は想定範囲のはずです。入社前に聞かされていなかったことで不満につながるお気持ちはよくわかりますが、その点については、CEOにも後から入社された上司にも非はありません。今後ご自身が経営者になられた時に、このような状況で社員がどう思うのか、自分が経営者の立場ならどうすべきか、良い勉強になると思って続けてみてはいかがでしょうか。

2)上司と議論がかみ合わないことについて、コンサルティングの流派の違いか、価値観や人間性の齟齬か、このご質問内容だけでは原因はわかりません。しかし、少なくともビジネスの議論、ましてや会社の経営戦略、経営企画についてお二人で論じるわけですから、「かみ合わない」とあきらめることはご自身の最も重要なコンピテンスについて、ご自分から使うことを放棄しておられるようなものだと思います。個人の感情を除き、経営企画室長としての責任をしっかり果たすべきでしょう。ビジネスに、正しい・間違っているはありません。CEOをはじめとする経営陣がどのような経営判断を下すべきなのか、ご自分なりの考えがあるのであれば、それを上司にまずしっかり伝え、理解してもらうこともご自身のスキルの一つだと思います。提案を受けてくれない顧客、上司、どちらも納得させるべき相手ですよね? 提案を受けないからといって、受け入れる上司を探すような転職はすべきでありません。まず現職で、経営判断に影響を及ぼし、会社に利益をもたらす仕事をきちんとされることです。ご自身の提案がなぜ上司に受け入れられないのか、その理由を把握できないかぎり、ご自身の大きな成長は期待できません。おそらくご相談者は30歳前後の方と推察しますが、その年齢で経営企画室長の大役を得られることがベンチャーの大きな利点。あなたは転職をせずとも、まだまだ成長環境にあると思います。大企業では手にできないキャリア機会を、ぜひ活かしましょう。

3)仮に、CEOにも上司にも事態の打開にむけた相談をせず、転職活動に入ったとしましょう。転職理由について、採用面接の場で何とお答えになりますか? 「上司が嫌だから辞めます」「上司と経営戦略の議論がかみ合わないから退職します」という理由は、まともな会社であれば通じません。この種の問題は、どの会社にとっても排除できない課題。例え採用したとしても、また同じ問題が起きればあなたは辞める、と判断されてしまいます。また、本当の理由ではなくご自分に都合の良い転職理由を用意したとしても、即席で作った理由など、しっかりとした経営者や人事がいる会社ではメッキを剥がすように簡単に見抜かれてしまいます。それでもなお採用しようという会社があるとして、それは本当にあなたのキャリアのためになる会社でしょうか? 短期間で何らかの問題が起き、再び転職する可能性が高くなると危惧します。

4)せっかく選んだキャリアの選択を3ヵ月あまりで自ら放棄するなど、とてももったいない話です。キャリアをマネジメントする上で、まだやれることがあるはず。現在の会社に転職しようと決意された理由を思い出してください。今回の上司以外の要素として、会社の製品やサービス、将来性、CEOの魅力など、きっとたくさんの良い点があったから、戦略コンサルの道よりこちらを選んだのではないですか? その良さがすべて、上司とのわずか1ヵ月のコミュニケーションの不調和で、ご破算になるとは思えません。まだまだ対応策があると思います。ましてお辞めになる覚悟があるのなら、上司ともCEOとも、一度本音で話をしてみるべきだと思います。

5)最後に、転職をされて3ヵ月とのことですが、現在は試用期間中のお立場でしょうか。その場合、残念ですがCEOもCOOも既にあなたの能力を見限っていて、排除しようとしている可能性もあります。そうであれば話は別です。このまま正社員になれないのであれば、早期に転職活動を始めなければなりません。そして活動をしつつ、なぜ評価されずに退職を促されているのか、しっかり理解することが何より重要になります。次のキャリア選択では、同じような過ちを犯さないために…きちんと理由を理解し、自らのキャリアについて考えを深めるなら、まだまだ次のチャンスはあると思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)