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“展”職相談室 第188回 
Published:2018-10-04

口頭でオファーが出るも、入社の意思決定をしないと条件提示をしないと言われ…

社会人経験5年目で、初めて転職活動をしている者です。5社の企業に応募したところ(自分から直接応募した会社と、紹介会社経由の応募とまちまちです)、自分で応募したX社で面接に進むことができました。2回目で早々に社長面接が行われ、口頭で「ぜひ我が社に入社してほしい。入社してくれる意向があるなら、人事から連絡させる」と言われました。その場で「前向きに検討します」と答えたところ、翌日その会社の人事部から「入社承諾をしてくれるなら、条件提示をする。現職と同じ程度の報酬を提示するつもりだから、明後日までに回答してほしい」と言われました。

X社への志望動機は高いものの、まだ他社のインタビューも始まったばかりで比較・検討ができません。友人に相談したところ、「入社したい」と口頭で伝え、実際にオファー条件が出てきた段階で条件が良ければサインしておき、他の会社からの提示がそれよりも良い条件であれば断ればいい。職業選択の自由が保証されているのだから」という趣旨の助言をもらいました。

個人的には、入社すると約束しておきながらその約束を反故にすることは避けたいのですが、何か良い方法はあるでしょうか?


Answer

口頭であっても書面であっても、採用通知(オファー提示)を承諾された後でそれを反故にすることは、絶対に避けることを強くお勧めします。安易に承諾したり簡単に断ったりすることは、ご自身の人生を軽く考えていることにもなります。ご自身の人生の選択ですから、しっかり熟考の上、決断・決心をしてください。

狭い世間では、ビジネスパーソンとして“契約概念のない人”というマイナスの烙印がついてしまうことは、将来にわたり不利益を招く行為です。過去の転職相談室でも「転職を取り止めたい」というご相談があり、同じ論拠でご助言しています。

例えば弁護士の方なら、「日本国憲法第22条で保証されているので、オファーの承諾をした後でも、それを辞退することは可能。辞退した場合でも、採用企業は損害賠償などできない」と回答されるかもしれません。しかし法的に許されても、道義上・倫理上の観点からすれば、やはりオファー承諾後の辞退は避けるべきだと思います。

日本国憲法第22条第1項:
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する


この「職業選択の自由」の精神は、かつての身分、性別、生まれによって自由に職業が選べない時代に、社会的な弱者を保護するために制定されたものです。現在においても、それらを理由に何人も差別を受けることがないよう規定されています。ただ私は、これを盾に求職者の権利だけを主張するのではなく、「自由は責任を伴うもの」との自覚を持つべきと考えます。

日本では求職者保護の概念が強いですので、求人者はオファーを辞退されても法的にはほとんど手段を講じられません。それがかえって、このX社のような会社の対応を生み出す悪循環となっています。

X社にとってみたら、「オファーを承諾した後、平気で断ってくる候補者がいる。その対策として入社の意思決定をした人にだけ、正式な採用通知を発行して相互にサインをすることにしている」という状況なのでしょう。このように、ある種の日本的な旧態依然の人事採用制度をとっている会社が、まだ上場会社でも中堅企業でも見受けられます。

だからX社のやり方も仕方がない…と言いたいのではありません。現在の労働安定法、労働基準法に照らして考えてみると、「労働条件の明示、文章による明示」が採用企業には義務付けられています。ですから、「入社するなら採用する」というX社のやり方は明確に問題です。労働条件、採用条件をしっかり文章で提示した上で、求職者に熟考期間(1週間程度以上は与えるのが通常)を設けなければならないのです。

結論としては、「オファーレターや採用条件提示書など、労働条件を明らかにする書面の提示がない状態では意思決定はできません。書面でご提示いただき、猶予期間として一定のお時間をください」とX社に回答すべきです。万一それに応じてくれない会社であれば、逆に入社されないほうが良いと思います。

余談ですが、海外の雇用契約は日本とは異なり、商法の範疇です。オファーレターにサインした後に辞退すると、場合によっては損害賠償請求の対象になるケースもありますから、くれぐれもご注意を。日本独自のある種、甘い考え方が海外でも同じであるとはお思いにならないでください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。
渡邊 光章
株式会社アクシアム
 代表取締役社長・キャリアコンサルタント
渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

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