転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第190回
2018.12.01

入社後、希望していたプロジェクトができず。すぐに転職活動を再開してオファーが出たが・・・

大学院(機械工学)を卒業後、20代は日系のメーカーで営業、生産、事業開発などの部門でキャリアを積んできました。30代になり、もっと大きな視点で日本のメーカーの存続価値を高めたいと戦略コンサルタントにキャリアチェンジを希望。数社のコンサルティングファームに応募しましたが、なかなか審査を進めてもらえませんでした。そんな中、ある技術系のコンサルティング会社から熱心に誘ってもらい、会社規模は小さいながら、大きな裁量をもって仕事ができるということで転職をしました。

ところが入社後、その会社では経営戦略レベルの課題は扱っておらず、技術移転に関するプロジェクトしか実際にはないことがわかり、試用期間中でしたが退職を決意。すぐに転職活動を再開し、幸い別の日系コンサルティングファームから即日オファーをもらうことができました。

もう前回のような失敗はしたくありません。自分なりに考えて思った仕事ができると確認したつもりですが、回答期限が3日後に迫っています。また短期で離職するような事態に陥らないためには、どんな点に注意すればよいでしょうか?

Answer

売り手市場の昨今、35歳以下の優秀な人材であれば、すぐにオファーをもらうことも容易でしょう。各社熱心に誘ってくれますし、好条件が提示されます。同時に、オファーを出した後にはできるだけ他社と比較されたくないと、数日で回答期限をきり、意思決定を迫ってくる企業も出てきます。

少しきつい言い方になりますが、短期で辞める人に限って、短期で進路を決めてしまいがちです。急いで決めるのではなく、企業も求職者もお互いにしっかり相手を見極めてこそ、入社後、長きにわたり間違いのない良い関係を築き続けられるのだと思います。

その会社での5年後の姿をデザイン/イメージして、本当にそこに至るには相手と自分がどのような努力をし、どのような条件を満たせば達成・到達できるのかを精査する必要があります。それには双方、ある一定の時間がかかるはずです。

短期的な採用には落とし穴がありがちです。すぐにオファーを出してくれるのはあなたが優秀だからというだけではなく、安易な審査を行っている可能性もあるからです。

特に今回のような場合、転職をあせり、短期で決めたいという気持ちが強くなりすぎていませんか? 採用側に悪意がなくても「急いで審査しなければ他社に取られてしまう」という気持ちを生じさせてしまっているかもしれません。

職責、働き方、労働条件、上司や仲間の関係、価値観、市場での評価、キャリアの可能性、将来性など精査すべきことは多々あります。逆に採用企業にとっても、しっかりした会社であればあるほど、候補者には多岐にわたる審査を行います。決して、学歴・職歴・年齢・年収・ハードスキルだけのチェックではないはずです。

あなたがすべきは、相手先企業の情報を十分に獲得し、多くの人に会っておくこと(面接過程のみならず、オファーが出た後でも社員や配属先の若手に会うなど)、そして入社時だけの条件だけではなく、長期視点でキャリアの可能性を議論しておくことです。その上で、ご自分の心に問いただす時間を持つことが大事です。

仮にトータルで2~3ヵ月かかった審査過程であれば、オフアーの回答期限が1週間後であってもすでに十分に時間をかけて意思決定に必要な情報を獲得しているはずです。一方、1~2回の比較的短期の面接でオファーが出た場合には、上記で述べた内容に留意し、十分な情報収集と集中して考え抜くことが必要です。(この点、なかなか個人では難しいこともありますから、信頼できるキャリアコンサルティング会社やコンサルタントのサポートを受けるのは有効でしょう。)

意外に思われるかもしれませんが、頭脳明晰で大変優秀な方でもあせる気持ちがあると、「運命的な出会いだ」、「熱心に誘ってくれるところこそ最適な選択だ」と思いたい、錯覚したい、自分の選択を正当化したいという気持ちに引きずられてしまうことがあります。そのような心理状態になることが、最も危険です。

自分の人生の選択には適正な時間をかけて(いたずらに長い時間をかけてチャンスを逃すのもいけませんが)、決断・決心されることを強くお勧めします。そうでなければ、結局は短期で決めても短期で離職するはめになり、不幸なことに一度その失敗をするとそれを繰り返してしまう傾向にあります。

単に転職先を選ぶという作業ではなく、これからの人生を選んでいるということを胆に命じて、後悔のない選択を心がけてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)