転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第216回
2021.08.05

MBA取得から3年の36歳。あと2年の留学費用返還が残るが…転職は早くすべき?

社費でMBA留学し、復職して3年目になります。復職後は希望していた部署へ配属となり、それなりに評価もされてきたので、他社でも自分の能力が通用するのかチャレンジしたくなり転職を考えています。現職での経験を活かし、事業会社での経営企画職(特にM&Aなど)に興味があります。

36歳なので年齢的に転職は早い方が良いと考えますが、留学費用の返還義務が終わる2年目以降が現実的です。とはいえ、そのタイミングで希望する求人があるかわかりませんし、年齢的にも不利にならないか、転職のタイミングについて迷っています。

また、仮に38歳で経営企画やM&A職へ転職する場合、それまでにどのようなことを身に着けておいたら良いでしょうか?自社から企業派遣で留学し復職した人で、転職した人はほとんどいないので情報がなく、アドバイスをいただければ幸いです。

Answer

転職のタイミングとしては、今は求人の動きが活発であり、36歳はご年齢的にも目指すキャリアを固めて発展させていく時期といえますので、できれば他社にチャレンジしてみることをお勧めしたいところです。ただ、いただいた情報を読む限りでは、ご相談者が現職で「経営企画職(特にM&Aなど)」に関するどのような経験とスキル・能力を発揮されているのか読み取れません。

MBA留学前は、まったく別の業務に携わっていて「経営企画・M&A」はこの3年間の経験のみということでしたら、知識・スキル・経験が不足していると捉えられる可能性もあります。

企業の「「経営企画/M&A」業務で求められる要件のいくつかを一例としてあげてみました。下記業務(もちろんこれ以外でも)で語れる実務経験があるか、ご自身のキャリアを確認してみてください。それぞれ、概ね3~5年の経験は必須になります。

・M&Aソーシング、DD~買収先企業のPMIの遂行まで一貫して携わった経験
・事業会社における事業戦略立案
・事業計画や予算計画の策定(事業の収支構造の分析などを通して、収益性改善案の提案・実行力)
・M&Aエグゼキューション経験
・買収先等のターンアラウンド及びPMI経験
・事業投資経験
・投資案件の評価・管理
・プロジェクトマネジメント経験

など

38歳での転職についてですが、2年後の求人は確約ができませんが、「経営企画/M&A」ポジションは企業の成長戦略として一定数は出てくると推察します。ですが、応募の際にはご年齢的にリーダークラスのポジションが期待されますので、この先視野に入れておくべきなのは、スタッフポジションではなくリーダーポジションです。上記に加え、以下の点がリーダー(またはリーダー候補)には求められます。

・プロフェッショナルファーム、金融機関などとの折衝など、中核的役割を担ってリードした経験
・ディールマネージャーとして、主体的に企業買収・事業譲受・出資・企業売却・事業譲渡等におけるソーシングからディール実行・PMIまで関わった経験

など

つねにM&A関連のリーダークラスの求人情報にアンテナをはり、求められる要件をチェックし、ご自身の経験と照らし合わせて「できること/不足していること」を見極め、日々の業務で経験・スキルを積み重ねていくことが大事です。そのためにも、活動を開始する前に以下についてまとめてみることをお勧めします。

●この3年間の業務の棚卸し
先にあげた業務の一例に照らし、実際に「できる」といえる業務を洗い出してまとめてみましょう。これらに近しい経験を積んでいるようでしたら、今のタイミングでの転職も真剣に考えてみるといいと思います。

●返済額の確認(金額を算出してみる)
いま退職した場合の返済額がいくらになるのか、概算でも見積ってみることです。また、返済方法(分割払い/一括なのか)の確認もしましょう。留学の際にやりとりした書面等を見返してください。明確に記載がなければ、交渉の余地があるかもしれません。仮に転職した場合、返済の算段はありそうでしょうか? 転職は成功したものの返済ができないでは生活が成り立ちませんので、考えられる方法を洗い出してみましょう。

以下に、実際に、社費留学生で復職後に転職した方の返還対応例をご紹介します。

・退職金と賞与を返済にあてる
・ご両親など、ご家族から借りる
・現職企業と支払期間、分割金額を交渉し、無理のないところで合意点を見つけた

様々な方法で、転職と返還の問題を乗り越えた方がいらっしゃいます。

また、ご家族に転職を考えていることを相談し、活動を理解してもらうことが大切です。配偶者がいらっしゃるなら転職を考えていることを率直にお話しし、生活設計を含め協力を得ることが必要です。またご事情が許せば、ご両親にもお話しし、留学費用の返還について思い切ってご相談してみてはいかがでしょう。

現職でのキャリアに安住せず、異なる業界/企業でも通用するキャリア形成を目指しているなら、返還の算段を考え、求人が多く動いている今はキャリアを強めるチャンスです、ぜひチャレンジしてみることをお勧めします。転職のタイミングは縁であり、そのポジション(職務)につけるのは運でもあります。

最後に、いろいろ申し上げましたがまずは一度キャリアコンサルティングを受けることをお勧めします。「今後のキャリアデザイン」×「時間軸(=年齢軸)」に加え「返済費用」が絡むのであれば、なおさら信頼できるエージェントとしっかりと相談してください。そして、タイミングは「今」なのか、「38歳」なのかを見極めて、ご自身で決めてください。ご自分のキャリアを主導するのは、あくまでご自身です。その決意をもって、ぜひ納得のいくキャリアを構築されることを願っています。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。