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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第247回2025.07.03
メガバンクで投資銀行業務を経験。スタートアップに興味を持ち、VCへ転職したい
現在31歳、大学卒業後、新卒でメガバンクに入社し、法人営業と投資銀行部門で経験を積んできました。このまま現職を続けることももちろん考えているのですが、IPO支援を行ってきたこと、スタートアップへの興味があることからベンチャーキャピタル(以下、VC)への転職を考えています。
これまでの金融業界での経験を活かして、新しいサービスやプロダクトを生み出す支援をしていきたいと思っています。シードやアーリーステージのスタートアップに投資をするようなVCへ転職をしたいのですが、転職活動をするにあたって気をつけるべき点は何かありますか?
Answer
ご質問ありがとうございます。入社されたメガバンクでも高く評価されているのだと推察します。VCへの転職を考えているとのことですが、昨今VC、キャピタリストにおいて、その業務や役割が変わってきています。VCが求めている人材について、またキャピタリストとしてのキャリアを創っていくための留意点について、いくつかお伝えします。
1.そもそもVCとは
金融業の一種になりますので、投資家にリターンを出すことが必要になり、そのためにシビアな判断をする必要があります。新しいサービスやプロダクトを生み出すために、これまで一緒に伴走してきた企業に対しても厳しい現実を伝えなければいけないことも出てきます。そのため、金融の知識はもちろん必要になりますし、企業経営に関しての知識も必要になってきますので、ぜひ多くの知識と経験を積み上げていただければと思います。
2.スタートアップが好きかどうか
この点は非常に重要です。どういうスタートアップが好きなのか? 具体的にはどのような企業で、なぜそこに注目しているのか? 新しいテクノロジーやプロダクトを開発している企業に投資をするわけですので、感度高く新しいものを取り入れることに柔軟な人材であることが求められます。
3.起業家と実際に話をしたり、スタートアップで働いたりしたことがあるか
「新しいテクノロジーやプロダクト」と前述しましたが、投資先となるベンチャー企業ではそもそもテクノロジーやプロダクトがまだ完成していないことも多くあります。その際は、その経営者の方が考えていること、世界観や目論見に投資をすることになります(VCによって投資判断基準は異なります)。起業家が何を考えて起業をしたのか、どういうことをVCに求めているのかを深く探れる能力が求められます。
また、新卒でメガバンクに入社されたということで、投資先はこれまでご自分が働いてきた組織よりもコンパクトであり、言葉を選ばずに申せば、すべてが整っていない環境でしょう。それゆえ、これまでのご自身の常識が通用しないことが多くあるでしょうし、投資先の方々が抱える悩みも、ご自身のものとは違っているはずです。彼らが何を求めているのか…一緒に銀行まわりをしてほしいかもしれませんし、新規開拓を手伝ってほしいのかもしれません。現職のお仕事の中でも、機会があればぜひ起業家の方などにお話を聞いてみてください。
4.フットワークは軽いか
ネットワーキングもかなり重要です。朝や夜にネットワーキングイベントが開催されることも多く、そこに参加して投資先を見つけることも多くあります。また、新しいテクノロジーやプロダクトに対して感度を高くという点からも、フットワークの軽さはキャピタリストとしての能力の重要なポイントといえます。
5.どういうキャピタリストになりたいか
イメージされているのは、どういうキャピタリストでしょうか? 「シードやアーリーステージのスタートアップにリード投資をしてIPOまで伴走する」ということをお考えの方が多いかもしれません。たしかにキャピタリストの醍醐味といえるでしょう。一方で、IPOだけではなくM&AでのExitも増えてきています。グローバルでは以前からM&AでのExitが多く検討されていましたが、日本でもその傾向がみられます。
先日、東証グロース市場の上場維持基準の見直しが発表されました。具体的にはグロース市場で上場を続けられる維持基準について、現在は、「上場10年後の時価総額が40億円以上」としているのを、2030年以降に「上場5年後の時価総額が100億円以上」に引き上げる見通しです。これによって小規模のまま上場し、企業価値が伸びない企業が多く存在するという問題の解消が目指されることになります。このような流れからも、IPOそのものの数が少なくなることが考えられます。
シードやアーリーステージだけではなく、ミドルからレイターステージ、場合によっては上場後でのフォローアップ投資ができるようなグロースファンドを立ち上げるVCも出てきました。アメリカのスタートアップ、VCに比べ日本はIPOにまだ固執しており、M&Aとリスクマネーの活用手法が米国ほど進んでいません。米国のM&Aのマーケット規模は日本の100倍ともいわれています。
スタートアップの成長過程でその企業をより大きくするには、大手企業との資本統合、あるいはM&Aを活用した同業他社の買収統合など、事業会社のオーガニックな成長のみならず、金融手法的な経営戦略を積極的に使う必要性も出てきています。
ゆえに、これまで以上にVCとしてはM&AやFinanceに強い方、オープンイノベーションの議論ができる人材を求めています。
これは個人のキャリアを考えるうえでも重要な流れです。IPOのみを目指すと、どうしても成果を出すために多くの時間も労力もかかりますが、M&Aを視野に入れることができれば、個人のキャリアとしての厚みを増しやすく、大きな成果を出しやすくなるといえます。
新しい産業が生みだされる場所について、大企業とスタートアップという別世界が存在していた時代は終わり、双方向で新規価値が生まれています。大手金融からの事業会社への融資だけで産業が発展する時代は終わり、スタートアップやミッドキャップにおいても直接金融と関節金融が必要となり、上場企業の財務と未上場企業の財務の両方ができるキャピタリストが求められています。
以上5点に絞って今回はお話ししましたが、もちろんこれだけではないですし、いろいろとお感じになることもあると思います。ぜひ個別のご相談にて議論を深めることができればと思いますので、ご連絡いただければ幸いです。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
伊藤 嘉浩
株式会社アクシアム
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。
日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)