転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第249回
2025.09.04

内定を手にし、いよいよ退職届を出そうとしたら、現職で新たなアサインが。円満に退職するには?

キャリアチェンジをしたいと転職活動をはじめ、志望する企業から内定をもらいました。すでに入社承諾書にサインをして、入社は確定しています。 ところが、現職の会社へ退職届を出そうとしていた矢先に、急に今から6カ月間、他部署の業務も兼務することになってしまいました。このままでは、内定先企業への入社日に間に合いません。

現職は新卒で入社した企業で愛着もあり、不義理はしたくないのですが、やっと掴んだキャリアチェンジの機会を失いたくありません。もちろん先方の心証も悪くしたくないので、退職の仕方で葛藤しています。ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

「サインしたオファーを断る、あるいは入社日を延期する=現職にしばらく留まる」という行為は、厳しい見方をすれば、入社承諾や雇用契約にサインをした後に契約を破棄したことになります。したがって、原則としては予定通りに入社できるよう努力し、円満退社を目指すことをお勧めします。

実際の事例として、入社日が変更になっただけでオファーレター自体が失効したケースもあります。これは個人と内定先企業の双方にとってデメリットでしかなく、メリットがあるのは現職企業のみです。冒頭から厳しいことを申し上げましたが、個人(あなた)、内定先企業、現職企業の三者における「利益/不利益」「メリット/デメリット」を整理すると、以上の点がご相談への回答になります。

とはいえ、愛着ある現職への思いと、キャリアチェンジのチャンスを逃したくないお気持ち、どちらも自然で正直な葛藤だと思います。会社は組織や部門のご事情で「あなたなら」と兼務をお願いしたのでしょう。その気持ちに応え、「現職に不義理をしたくない」というお気持ちは大切ですが、あなたのキャリアはあなたが創るもの、新しい挑戦のチャンスを逃さないことが最優先ではないでしょうか。

その視点で、退職に向けて考慮すべきことをまとめました。

■退職届の提出や退職意思を伝える際は、会社規定を遵守する
まず、退職をする場合、現職の退職規定(〇カ月前までに)に従って申し出ることが基本です。いつまでに退職の意思を伝えればよいのか、規定は確認済みですか?

当然のことと思われるかもしれませんが、「周囲で退職した人は〇カ月前に伝えていた」「〇週間あれば問題ないと思う」などという、これまで見聞きしてきた「思い込み」で進めてしまう人が意外と多く、退職届を提出した後でじつは「自社の規定は△カ月前に届けが必要だった」と発覚したケースもあります。

そのような状況になると、現職と転職先に対しセンシティブな交渉が必要となり、それこそ、入社日までに退職ができないということも起こり得ます。無事に退職/入社できたとしても、どちらにもよい心証を与えません。ですから、まずは現職の会社規定をしっかりと確認しましょう。

※法的には退職は労働者の権利であり、「退職の意思を示してから2週間」で辞めることができます。
労働基準法 第627条(退職に関する規定)をご参照ください。

■現職企業には誠実な対応をする
退職規定の確認ができたら、次にすべきことは、できるだけ早く上司に退職の意思を伝えることです。入社日はすでに決まっていますので、退職と退職日の合意を早めに得ることです。

他部署との兼務の話が出た今こそ、誠実に伝える好機です。退職の意思を伝えることで会社はあなたに代わる人の調整をし、早めにアクションすることができますし、兼務する業務や関連する方への迷惑も最小限にすることができます。

最初は強い引き留めがあるかもしれませんが、
「新しい環境でキャリアチェンジに挑戦する機会である」
「兼務のお話をいただいたところで申し訳ないが、自身のキャリアのため退職を決めた」
「引継ぎ資料等を作成し困らないようにする」
など、誠心誠意の説明と対応を示すことが一番大切です。

■内定先企業への影響
既に内定を承諾している以上、「入社日を延ばす」のは、先方の心証に悪影響を与えてしまいます。入社日を延ばす相談は極力避けるべきで、少なくとも今は相談すべきではありません。特にキャリアチェンジの場合、内定先も「今のタイミングだから採用した」という背景があるかもしれませんので、延期は慎重にしなければなりません。最悪の場合、内定取り消しも起こり得ます。

まずは現職企業へ「早めに退職を伝える」こと、そして退職交渉の際は「現職への感謝」と「前向きな理由」、「丁寧な引継ぎ」で誠意を示すことです。上司や会社側も「それならば仕方ない」と受けとめ、最終的には良き応援者になってくれるはずです。

退職交渉もキャリア構築のための大事なマネージメントです、やれることをやったなら、割り切りも必要です。強い意思を持ち、一歩踏み出してください。そして新しい挑戦を逃さず、これからのキャリアの礎を築いていってください。応援しています!

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。