サービス案内“展”職成功者インタビュー

山根 智之

CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE. LTD. 執行役員

山根 智之 氏

心の声にしたがい、飲食業界へ。
事業開発のプロとして、世界を駆ける

ラーメン専門店「一風堂」を中心に日本、アジア、米国、欧州で飲食店事業などを展開する、力の源グループ。いまや一日7万食、年間2千5百万食のラーメンを世界中の人々に提供しています。そんな同グループの中で海外事業を統括するのが、CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE. LTD.です。

現在、同社で執行役員を務められ、海外事業開発の中心として活躍されているのが、山根智之氏。2010年、山根氏のMBA卒業時にアクシアムがお手伝いをさせていただき、力の源グループへご入社いただきました。それから6年。グローバルにご活躍中の山根氏に、ビジネススクール在学時からの担当キャリアコンサルタントである大石順子が、現在のお仕事、キャリアなど様々なお話を伺いました。

渡仏し、「一風堂 サンジェルマン店」をオープン

大石

ご無沙汰しております。ご帰国されたばかりでお忙しい中、お時間をいただき感謝しています。本日はアクシアムが提唱してきた「展望をともなったキャリア開発」を実現された山根さんにお話を伺い、これからのキャリアについて考えている若者、あるいはビジネススクールの卒業後、どのような道を選ぶべきか悩んでいる方々に大いに参考にしていただきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。

山根氏

こちらこそ、このような機会をいただきありがとうございます。何らか参考になるお話ができればいいのですが。どうぞよろしくお願いします。

大石

では早速ですが、現在のお仕事についてお伺いできますか?

山根氏

いま私は、力の源グループの海外事業の一つである、フランス・パリ事業を統括しています。今年の2月に「一風堂 サンジェルマン店」をオープンさせたのですが、欧州では2カ国目、フランスでは1店舗目の出店となります。このオープンのために約半年前からパリに赴任し、なんとか開店にこぎつけることができました。

大石

パリへのご出店は、前々から考えられていたのですか?

山根氏

はい。パリでは約2年前に、経産省が音頭をとるクールジャパン戦略の一環として「パリ・ラーメンウィーク」というイベントが開催されたのですが、「一風堂」も参加させていただいたんです。約1週間のイベントでしたが、大変ご好評をいただきました。また、弊社ではラーメン店舗事業のほか、食育の一環として「チャイルドキッチン」という親子で行うクッキングレッスンを定期的に開催しているのですが、パリでも4回ほど開催し、160名の参加をいただくことができました。

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そんなご縁や現地の方々からの反響の大きさもあり、創業者の河原は「絶対パリで事業をやるぞ」と決めました。そこからすぐに準備を始めたのですが、2014年はインドネシア、タイ、フィリピン、イギリスの4カ国が同時にオープンする年でもあり、また海外事業部の組織改編もあったため、パリは少し遅れて今年のオープンとなりました。おかげさまで順調に推移しており、第1号店に続いて6月に2号店をオープン。3号店についても、現在準備をしているところです。

世界の12の国と地域に約60店舗。そのほとんどの開発に携わる

大石

山根さんは現在、2014年の持株会社制への移行に伴って分社化された、CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE. LTD.で執行役員を務めておられます。御社はフランスをはじめ、日本以外で12の国と地域で海外事業を展開されていますが、そちらの統括もされているのですか?

山根氏

はい。以前は他のエリアも見ていました。全体の統括もそうですが、それぞれの出店時に市場調査からマーケティング、購買、法務など、事業を立ち上げる際に必要なことはすべてやらせていただきました。私が2010年に入社した当時は、アメリカとシンガポールの2店だけでしたが、今では世界に約60店舗。そのほとんどのオープンに関わらせていただいています。

今回のパリ店は、言葉も法律も大きく違うことから、これまでより難易度が高いだろうということで専任に。通常現地への赴任はないのですが、昨年8月からパリへ住まいを移し、腰を落ち着けて開業までの準備をしていました。今は現地での運営も任されています。

大石

そうだったのですね。山根さんとはビジネススクールのご在学中に初めてSkypeでお話ししましたが、その時におっしゃっていたことを思い出します。「僕はこれまでの海外経験も生かして、色々な人を巻き込んでチームとして成果を出し、世界中で仕事をしたい」と。見事にその希望を実現されたのですね。

山根氏

そうですね。ありがたいことに、なかなか出会えない面白い仕事をさせてもらっていると思います。ただ私も入社していきなり今の仕事に就けたのではありません。入社時は、店でのどんぶり洗いから始めましたし(笑)。

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大石

そうでしたね。ご入社後、2週間ほど経たれたときに様子をお伺いするメールをお送りしたのですが、そのお返事に「洗い場仕事を楽しみつつ、飲食業について学んでいます」と書かれてありました。ご自身の展望を実現するため、そこからスタートされたのだと改めて感心したことを覚えています。

山根氏

弊社は飲食業ですから、組織が大きくなったとはいえ、やはり現場がすべてです。なまの人、なまのモノ、なまのお客様が目の前にあってのビジネスですから、そこから入り込まないといけない。現場を知って理解し、それらを好きでないと、マネジメントなんてできないし仲間もついてきてくれないと思っています。

「本当にやりたいこと」を探し、10代から海外へ

大石

高校をご卒業後、アメリカとヨーロッパで大学・大学院を卒業され、引き続きヨーロッパでお仕事をされていました。日本の会社でのご経験がまったくない状態で、いきなりラーメン店の現場というのは抵抗感などありませんでしたか?

山根氏

入社後3カ月間は日本の店舗で研修を受けたのですが、抵抗感はありませんでしたね。ただ覚悟はしていましたが、カルチャーショックは色々とありました。特にコミュニケーションスタイルが大きく違うことには戸惑いました。欧米ではコミュニケーションがダイレクトで、正しいことは正しいとストレートに言います。逆もしかり。一方、日本では暗黙知のようなものが多々あり、「これが自分の母国だったんだな」と驚くことがよくありました。ただそれは悪い意味だけの驚きではなく、海外に長くいたからこそ、日本独自の良さもよく見えるようになったと思っています。

大石

高校生のときに、そもそもなぜアメリカの大学を選択されたのですか?

山根氏

それは、「やりたいことがわからなかったから」です。日本の大学というのは、いったん学部を選んでしまうとレールに乗っかってしまうというか、ある程度、進む道が決まってしまう気がしたのです。アメリカの大学にはリベラルアーツの期間があり、専門分野を決めるまでに猶予があることから留学を決めました。結局留学先では哲学を専攻することにしたのですが、欧米では哲学はすべての教養のベース。そこを勉強しておけば、この先何を深めるにしても役立つと考えてのことでした。

大石

その後、ベルギーの大学に移られて、大学院も出られましたね?

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山根氏

はい。私が当時アメリカで通っていた大学は小規模な学校で、やはりそのリソースには限界があると感じたんです。そこである教授に相談し、ベルギーの大学を紹介していただきました。ご紹介いただいてからは、早い方がいいと思い、その2週間後には転学していました。そこで3~4年生を過ごし、修士課程、博士課程にも進み、同時にプロジェクトベースでの仕事を色々と始めました。イタリア料理店で料理長兼ジェネラルマネージャーをしたり、欧州議会で英国保守党議員の政治アドバイザーを務めたり。夏期休暇中にはオランダ語のテレビ番組の制作会社にケータリングマネージャーとして参加し、ブラジル、ジャマイカ、タイ、スペインなどの海外ロケに同行したりなどしていました。

大石

本当に面白い、様々なご経験をなさっていますね! でもそこからなぜMBAを取得しようとお考えになったのですか?

山根氏

はじめはアルバイト感覚で始めたそれらの仕事が面白く、そのまま続ける道もありました。ですが色々と経験を重ねるうち、できることは増えていくけれども「ところで、私はいったい何のプロだろう?」と問うたときに自分でも説明ができなかったんです。これではいけないと、ある種の危機感を持つようになりました。そこで今までの知識やスキル、経験を包括的に括れるものはないだろうかと探し始めたところ、友人から「MBAはどうか?」と勧められたのがきっかけです。

大石

そうだったのですね。実際にビジネススクールを卒業され、ビジネスの現場に戻られてMBAの学びは活かされていますか?

山根氏

ビジネスを“学問”として学んだことがなかったので、俯瞰して見てみるのもいいかなと進学しましたが、ゼロベースでビジネスに関するすべてのエリアを学べたことは非常に大きかったです。学んで良かったと思うことは、山ほどあります。財務、法務、サプライチェーンマネジメント等々。弊社のような小さい組織で事業開発をしようとすると、何でも自分でしなければならないですから、ほとんどすべての知識を活かしていると思います。やっぱり勉強することは必要だと、実感する日々です。

MBA卒業後の進路は、頭ではなく心が決断

大石

山根さんと初めてお話をしたのは、たしか2009年11月でしたね。フランスにおられたので、Skypeでキャリア相談をさせていただきました。アクシアムをお知りになったきっかけは?

山根氏

当時の同級生からの紹介で知りました。高校を出てからずっと海外におりましたので、私にとってはアクシアムさんからの情報が、日本の企業や日本の就職事情に触れる最初の機会でした。卒業後のキャリアについて相談にのっていただいた後、実際にアプライできそうな企業をリストアップいただいたのですが、私に日本での職歴がないことや人とは違った経歴を積み重ねてきたことに対し、冷静でシビアなご意見もいただきつつ、各企業の詳細まで親身に説明してくださったのはありがたかったです。MBA卒業後の選択肢として、型にはまりすぎる道はやはり自分に向かないと早々に理解することができました。実際に進路を決断する際にも、そのことは大いに助けになったと思っています。

大石

山根さんとのディスカッションで一番に感じたのは、海外でも通用する強いコミュニケーション力とリーダーシップをお持ちであるということ。その“何事にも臆せずに対峙できる力”というのは、これから海外に進出しようとする日本の企業には絶対に必要なものだと思いました。そのような観点で様々な企業の求人をご紹介したのですが、力の源カンパニー様もその中に入れさせていただいたのです。当時、力の源カンパニー様では海外展開を加速させるため、現地に即してビジネスを創り、現地に入り込んで実行できる人材をお探しでした。これは山根さんにぴったりだ、と。そうして最終的に、力の源カンパニー様を含めて複数のオファーを手にされましたが、意思決定の決め手は何だったのでしょうか?

山根氏

じつは、創業者の河原と面談をした直後から、ほぼ決めていました。悔いがないようにと他社との面談も進めましたが、かなり早い段階で決心はできていたんです。河原の強い信念や人柄に惹かれましたし、「なぜここまで通じるのだろう」と半分不思議に思うほど、波長が合ったのです。

一番高い年収を提示してくださった某コンサルティングファームを蹴ったのですからお金のことだけを考えれば、あり得ない選択に思えるかもしれません。ですがその時、お金の損得は考えませんでした。自分が満足しない仕事をするよりも、面白いことができそうなこの道を選びたいと。頭で決める前に、もう心がそう決めていました。

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大石

新しいことにチャレンジし続けたい…その思いが山根さんの根っこにはあるのでしょうね。

山根氏

そうかもしれません。元来の風来坊というか(笑)。ひとつのことに甘んじるよりも、色々なものを見てみたいという欲求が強いのだと思います。

これからも「新しいこと」に挑み続けたい

大石

今後の山根さんご自身の、キャリアの目論見や展望について教えていただけますか?

山根氏

現在の事業開発はとても面白い仕事ですし、続けていきたいと思っています。くわえて新しいことにも挑戦してみたいと考えています。じつは店舗事業以外の新しいビジネスモデルで、あたためているものがありまして。弊社は、そのような事業の提案やチャレンジもできる会社。まだまだここで面白いことをたくさん実現していきたいですね。

一方で、「つぎの世代の教育に深く関わりたい」という思いも持っています。やはりすべての根幹にあるのは「人」ですから。自分が積んできた経験やスキルを、何らかの形で他の方に伝えることもしていきたいと考えています。

大石

最後に、このインタビューをご覧になる方、特に若手人材の方へキャリア構築のアドバイスがあればお願いします。

山根氏

ずばり「自分の好きなことをやろう!」です。「仕事」と分けて構えて考えてしまうと、そこには当然対価が発生して、年収であるとか役職であるとかに余計なこだわりが発生してしまう気がします。仕事は人生とは切り離せない一部であり、満足のいく人生を送るためには、満足のいく仕事なしには難しい。ですから自分の意に逆らってとか、嫌なことをやらされていると感じる状況は極力避けるべきです。人生は一回きり。好きなこと、面白いと思えることを突き詰めていってほしいと思います。

大石

なるほど。山根さんのその前向きな原動力はどこからくるのでしょう?

山根氏

基本、楽観主義者ではあります。私は、人と交流するときに一番楽しいと感じます。こういう人がいるんだ、こういう考え方があるんだ、と未知のことを経験するたび、自分が豊かになっていくと感じるのです。ですから、世界中の様々な場所へ行き、今日はこの国で法務の話をし、翌日は別の国で財務の話をし…という生活は、非常に楽しいです。もちろん、常に楽しいことばかりではなく、くじけそうになることも多々ありますが。それでも、現在の会社へ入ることを決めた、あの時の決断はやっぱり間違っていなかったと思っています。

大石

キャリアを考えるというよりは、「自分が何をしたいのか」と問うということですね?

山根氏

そうですね。そこが自分を導いてくれる、大きな指標のひとつであると思います。

大石

山根さんのお話を伺うと、私までパワーをいただけるようです。本日は、大変参考になるお話の数々をありがとうございました。今後も日本で、世界で、益々ご活躍されることを願っております。

Profile

山根 智之

CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE. LTD. 執行役員

山根 智之 氏

アメリカやベルギーの大学、大学院を経て、2010年フランスのビジネススクールを卒業。海外事業部マネージャーとして力の源カンパニー入社。持株会社体制への移行にあたる組織構築や海外事業開発に従事。現在は、海外事業の統括会社であるChikaranomoto Global Holdings Pte. Ltdにて執行役員を務めている。

ルーヴェンカトリック大学、同大学院卒(ベルギー)、HEC経営大学院経営学修士(MBA)

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。

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