TOPページ転職支援実績 > “展”職成功者インタビューVol.9 諸橋 峰雄 氏

不連続に見えて、しっかり連続している。
自分なりの脈絡が、キャリア上の決断と成功を支える

“展”職成功者インタビュー Vol.9
諸橋 峰雄 氏

株式会社サイダス 執行役員 経営戦略室長


人事や経営層だけでなく社員も参加し、会社にいる全員で組織を強くしていく…そんな新たな発想に基づくクラウド型人材データプラットフォーム「CYDAS」。2011年の創業からわずか数年で、400社以上の企業が導入するまでに成長したそのサービスを開発・販売・サポートしているのが株式会社サイダスです。

日本とソウルに拠点を構え、グローバルにビジネスを展開する同社において、欧州事業責任者を務められ、現在は執行役員として活躍されているのが、諸橋峰雄氏です。諸橋氏とアクシアムとの出会いは2006年。キャリアコンサルティングをお受けいただき、研究開発職から戦略コンサルタントへという、キャリアチェンジをお手伝いさせていただきました。

研究者からビジネス界への転身、そして事業/企業経営へ。大胆かつユニークなキャリアの軌跡を辿ってこられた諸橋氏に、担当コンサルタントである渡邊光章が、これまでのキャリア、転職、現在のお仕事など様々なお話を改めて伺い、成功のポイントを探りました。

「価値を生み出せた」という手応えに惹かれ、ベンチャーへ

渡邊:
ご無沙汰しております。赴任先のブリュッセルからご帰国された後、執行役員に就任されたとのこと。素晴らしいご活躍を、とても嬉しく思っています。本日は改めて諸橋様のキャリアについてお話を伺い、転職された際の決断のポイントや、成功の秘訣などを探りたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。

諸橋氏:
本当にお久しぶりですね。こちらこそ、宜しくお願いいたします。

渡邊:
では早速ですが、そもそも研究畑からビジネス界へ移ろうと思われたきっかけについて、お伺いします。諸橋さんは理工系の修士号を取得された後、さらに博士号を取得されています。博士号を取得された場合、多くの方が開発エンジニアや研究者を目指されると思うのですが、いつぐらいから、どのようなお考えでビジネスのキャリアに進もうと思われたのでしょうか?

諸橋氏:
僕は修士課程を修了後、一度半導体の会社にエンジニアとして就職しています。じつはその時から、ビジネスを手がけたいという思いは持っていました。チームでひとつのゴールに向かって突き進む、その一翼を担いたいと。かつ、組織の最適化というものにも興味を持っていたんです。そのような思いを抱きながら、漠然とですが自分の中で2つの道を考えていました。ひとつはMBAを取得して、よりジェネラルなビジネスパーソンとして自分を磨いていく道。そしてもう一つは、他者にはない専門能力を一本持ったビジネスパーソンとして、自らを高めていく道です。

当時は修士というものに対する、ある種のプライドみたいなものがあり、せっかく修士を取ったのだから博士号もそのまま取ったほうが、個のビジネスパーソンとしての付加価値につながると思い込んだわけです。いま振り返ると浅い考えだなと思いますが、その結果、博士課程に進むことを決断しました。ただ思ったよりも博士課程で時間をとってしまい、ビジネスの世界に入るまでに、想定以上に寄り道をしまくってしまいましたが(笑)。

渡邊:
なるほど、そんな早い段階からビジネスへの思いはお持ちだったのですね。ではいつから、またなぜベンチャー、あるいはベンチャービジネスに関心を持たれるようになったのでしょうか?

諸橋氏:
ベンチャーは、インパクトが見えやすいという点が魅力であると感じているのですが、その意味では博士課程修了後、最初に入ったバイオベンチャーの経験が大きいかもしれません。その会社では拠点がある山形県鶴岡市に移住し、サンフランシスコの拠点と往復しながら、研究開発と事業開発の両方に携わる経験ができました。

当時、研究開発部門にはITバックグラウンドのスタッフが僕しかおらず、膨大なデータ分析を行うIT基盤を作るにあたり、一から試行錯誤しながら作っていきました。手でやっていた作業をある程度自動で処理できる仕組みを作り、最初のステップは作れたんじゃないかと自負しています。その過程でデータ分析手法も作ったりして、面白い結果が色々出せました。会社にインパクトを与えられた、価値を生み出せたと強く感じられた時期でしたね。この時、数十名規模の会社で仕事をする醍醐味を実感できたことが、ベンチャーやベンチャービジネスへの関心につながっているのだと思います。

コンサルタントとして企業戦略に関わる中で芽生えた、「人」への興味

渡邊:
私が最初に諸橋さんにお目にかかったのは、2006年。その後、何度かキャリアの節目でディスカッションをさせていただきましたが、初めてお会いした時のことがとても印象的です。

たしか人工知能やロボットの研究などをしておられ、修士課程ではショウジョウバエの複眼形成のシミュレーション解析を行い、それが後にバイオの方向に進まれるきっかけになったと記憶しています。個人的に諸橋さんはIT×ヘルスケア、あるいはバイオの領域で活躍されるものとばかり思っていましたが、弊社でお手伝いした転職先(戦略コンサルティングファーム)でのご活躍を経て、今やIT×HRのビジネスを手掛けておられます。

バイオインフォテックスなどライフサイエンス系のキャリアからお離れになったのは、どうしてですか? AIやロボティックスなどのベンチャーが多数出てきている現在、このような領域のベンチャーもキャリアの選択肢としておありだったと思いますが、サイダス様を選ばれた理由は何でしょうか?

諸橋氏:
コンサルタント時代の多くのプロジェクト案件はヘルスケア(製薬や医療機器)業界でした。基礎研究から開発レベルのプロジェクトまで数多く手がけられましたし、研究をしていた頃の知見は少なからず使えていたと思っています。ただその中で、自分の興味がシフトしてきたというのが実際のところです。組織や経営について戦略を練る中で、特に「人」への興味を持ちはじめたのが、コンサルタントとして活動していた時期でした。

当時は戦略立案や組織変革、業務改善といった組織レベルでの変革プロジェクトの仕事が多く、その中でお客様個人と接する機会も多くありました。彼らとコミュニケーションを重ねる中で、「人」に直接アプローチをして変えていくやり方が、自分の中でやりがいがあり、また手法としてもしっくりくると感じたのです。つまり、戦略実行の段階で「人」に直接働きかけていって、「人」の成長を支援することがお客様の組織全体の継続的成長につながるのでは、と考えるようになったんです。

渡邊:
「人」が組織の成長や、ビジネスの成功の大きな鍵を握ると?

諸橋氏:
はい、そのような直感を持ちました。また、ちょうどその頃にコーチングというものに出会ったんです。自分でコーチングの資格も取り、この能力をコンサルティングの中で活かしたいと思うようになりました。ただそれを特に感じた時期には企業再生系のプロフェッショナルファームにいたので、じっくり人に向き合うフェーズではない(財務やオペレーションでの施策が中心でスピードが早い)ことが多く、よく悩んでいましたね。米国にいたグローバルタレントマネジメント部門のトップと話をして、「コーチングコンサルタント」というコンセプトを彼と一緒に作ったり、どうやったらコンサルタントが「人材育成」の視点を取り入れられるか相談したりしました。

渡邊:
「人」への関心からコーチングの資格まで取っておられたとは! 諸橋さんらしいですね。再生ファームの中にあっても、ご自身の思うところを実現するためアクションを起こされていたのは、さすがの行動力です。

諸橋氏:
まあ、その後も色々と社内で動いてみたのですが、結局は企業再生系のファームでは自分の考えを形にするのが難しいという結論に至り、自分で会社を立ち上げることになったのですが。それがインジェニコンサルティングという会社で、「人」にフォーカスしたコンサルティングを中心に提供する会社です。「チェンジリーダーシップマネジメント」というコンセプトを据え、リーダーシップをどう変えていくか、個人だけでなく周囲にも介入しながら組織変革を進めるアプローチでコンサルティングを提供していました。

そんな中、今度はHR関連のシステムにもアンテナを張るようになり、この時期にサイダスと出会いました。当時サイダスのサイトでは「人材データを使ってメンタル不調を事前に把握できる」ということが謳ってあり、面白いシステムとサービスだなと思ってコンタクトをしたんですね。そこで社長の松田と出会い、以来、飲み仲間になりました。

その後、家庭の事情でベルギーに行くことになり松田に挨拶をしにいったとき、ちょうどサイダスが海外展開を始めるという話が出たんです。では、それを君がやってみないかと誘いを受けて。タイミングもよかったので、海外展開の準備から参画することにしました。

渡邊:
偶然というか、必然というか。そんな出会いがサイダス様への参画のきっかけだったのですね。サイダス様は、IT×HRのスタートアップ企業。コンピューターサイエンスの知識を持っておられる諸橋さんにとって、とてもフィットしていますね。

諸橋氏:
IT×HRはおっしゃる通り、自分にとってかなりフィットしている領域だと感じています。自分のオリジナルの専門領域である「IT」と興味の中心にある「人」。この両者がうまく融合するHR Techの世界は、自分がもっとも土地勘と価値を出せるところなのではないかと思っています。先ほどから申し上げているとおり、僕は「人」にそもそも興味を持っているわけですが、その複雑さも魅力だと思っています。「人」は感情の生き物であり、複雑系の極みですから。

また、「人」は組織の要であり、HRは経営の本質に触れるところだと思います。「人」は経営戦略を実行する部分であり、究極的にサイダスの価値は、人事・HRだけでなく“経営戦略そのものにインパクトを与える”ものだと考えています。つまり、経営層・人事・IT・現場それぞれの課題解決の支援、意思決定の支援をするためのデータプラットフォーム、データテクノロジー、データサービスを提供するのが、僕のいるサイダスの価値。サイダスではエンジニア・営業・コンサルタントが一体となって、お客様の「人」を基点とした価値向上に貢献できるよう日々奮闘しており、非常にやりがいを感じています。

自由な心で、好奇心に正直に。だから変化を怖れず前に進める

渡邊:
そうでしたか。様々なご経験を経て、いま諸橋さんがサイダス様におられる理由がよく理解できました。ざっくばらんに語ってくださり、ありがとうございます。では少し視点を変えて“転職”にフォーカスしてお話を伺いたいと思います。諸橋さんはこれまで数回の転職をご経験されているわけですが、キャリア選択の上で、もっとも難しかったのはいつでしょうか?

諸橋氏:
やはり研究者からビジネスの世界に入るところですね。渡邊さんにお世話になったタイミングでもありますが、当時はビジネスのなんたるかが全く理解できておらず、とにかく闇雲に「マネジメントを目指したい」という熱意だけはある状態でした。ですから面接を受けた事業会社から、ことごとく落とされる経験もしましたね。

渡邊:
でも、はっきりとご自身が目指したいものをお持ちだったからこそ、次のキャリアの目論見を持つことができ、戦略コンサルティングファームへの扉が開いたのだと思います。ファームでのご経験は、それ以降、特に現職でどのように活きていますか?

諸橋氏:
たくさんありすぎますが…基本的なところでいえば、議論のファシリテーションや資料作成の能力でしょうか。ミーティングで論点を整理してアクションを決め、次につなげていく。進捗を管理するというやり方はコンサルタント時代にかなり鍛えられました。特に様々なバックグラウンドを持つ人々や、異なる人種の間でミーティングを進めていくのには苦労しましたし、その経験は大きく活きています。資料作成についても、コンサルタントになった当初はいわゆる“プレゼン資料の作法”さえ知らず相当苦労しました。ですが今は、言いたいことをスピーディーにチャートやドキュメントにまとめて伝えることは苦でないですし、自身の基本スキルとして活かせていると思っています。

渡邊:
諸橋さんが持っておられる『キャリア開発の上での強み』というのは、オープンマインドでご自身の可能性を冷静に自己評価できる点だと感じています。だからこそ、キャリアの選択においても過去にとらわれず、チャンスを獲得されたのでしょう。この点、ご自身ではどうお感じですか?

諸橋氏:
オープンマインドというのはそうかもしれませんね。あとは好奇心の幅広さはあると思います。アンテナを常に色々なところに張って、情報や知識を吸収したいと思う気持ちは強いです。そして実行の際にも、フットワークが軽いのは一つの強みかと思います。その反面、興味の幅が広すぎて、浅く広くなりがちですが…。ただこのような性分だったからこそ、ITではハードからソフトまで一通り経験しましたし、その知識や能力を磨けたからこそ、話せることや考えられることもあるかなと。

「過去にこだわらない」「自分の経験にとらわれない」というのは確かにそうだと思いますが、以前よりは“流れ”を意識していますね。研究者からいきなりコンサルタントという不連続なキャリアステップを経て様々な経験を積んできて、今は「自分なりに価値を出せる分野」かつ「自分が本当にやりたいと思えるところ」、そして「社会にとってインパクトがあるところ」、こういう世界で自分はビジネスをやっていきたいと思っています。

渡邊:
世の中には、他者には不連続なキャリアと見えていても、本人にとっては連続的なキャリア、つまり脈絡のあるキャリアというものがあります。逆に本人は連続していると思っていても、不連続な場合もあります。諸橋さんのキャリアはまさに前者です。

理工系の修士号や博士号をお持ちの方は、コンサルタント業界が求める論理的思考を備えていると評価されますので、“研究者からコンサルタント”というステップは不連続ではないと私は思いますが、諸橋さんご自身は不連続だと感じておられたのですね。戦略コンサルティングファーム以降のキャリアのほうが、きっと他者には不連続に見えることでしょう。諸橋さんの“展職”成功の秘訣、そして強みは、このように自分なりの脈絡や軸をお持ちであるところにあるのかもしれませんね。

最後に、諸橋さんご自身の「今後のキャリア展望」について、差し支えない範囲で結構ですので、お聞かせ願えますか?

諸橋氏:
自分の中では、じつは「野望」のようなものは持っていないんです。20代から30代前半くらいまでは、自分の興味が趣くままにやってきた“やんちゃな時代”だったのかなと思います。特に明確なキャリアプランというものがなく。

ただ、コンサルタントの仕事をするようになり、これは一つの仕事として自分にとってむいているとの確信はありました。常に新しい課題や環境にさらされ、新しい人と出会い、終わりが必ず来る。渦中にいるときはつらいことも多いですが、多くのプロジェクトが終わるたびにお客様と寂しい別れをする…でもプロジェクトが終わっても良い関係で、定期的にお会いする方も多いんです。

ですから、人に喜んでもらえて、かつ会社や社会にインパクトがあると感じられる仕事、さらには自分である程度のコントロール、マネジメントができる仕事。こういうことを念頭に、志を持って常にやっていきたいと思っています。

振り返ってみると、じつは5年周期くらいで自分のスキルやキャリアのパターンが変わってきているように思います。意識していたわけではないですが、常に自分のスキルや能力を棚卸しして作り直していこう、新しい分野に飛び込んでいきたいという気持ちが、どこか根っこのところにあるのかもしれません。“止まったら死んでしまうマグロ”のような(笑)。

渡邊:
なるほど。誰しも新しい場所に飛び込むのはとても勇気がいるものですが、諸橋さんにはそこの躊躇がないのですね。やはりどこかいつも冷静に、自己分析をしっかりとしておられるからこそ、悠々と一歩を踏み出せるのでしょう。諸橋さんの今後のご活躍が、益々楽しみです。本日はご多忙にもかかわらず、読者の方々に大いに参考になるお話をありがとうございました。

Profile

諸橋 峰雄

株式会社サイダス 執行役員 経営戦略室長

慶應義塾大学理工学部卒業、慶應義塾大学大学院修了。博士(工学)。

外資系大手半導体メーカーにて、デジタル信号プロセッサーの開発に従事。その後、国家研究プロジェクトで細胞シミュレーション解析や遺伝子解析の研究に携わる。そして日系バイオベンチャーを経て戦略コンサルティングファームに転身。国内外のハイテクや製薬企業を中心に戦略立案、実行支援を行う。その後、企業再生系プロフェッショナルファームでも活躍。インジェニコンサルティングの共同創業を経て、2015年に株式会社サイダスに参画。欧州事業責任者としてブリュッセル勤務をした後、帰国して同社執行役員に就任。

ビジネス・ブレークスルー大学経営学部准教授。

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
 代表取締役社長・キャリアコンサルタント
渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

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