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2017年11月

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)~100年時代の人生戦略~
リンダ・グラットン(著)、 アンドリュー・スコット(著)、池村千秋(翻訳)

世界には100歳を超える人(英語で「センテナリアン」と呼ぶそうです)がすでに6万1000人以上も存在し、人類はどんどん長寿化の道を辿っています。今月取り上げるのは、そんな現状のなかで「どのように生き、人生の戦略を立てるべきか?」を問うた『LIFE SHIFT』。ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏が著し、14万部以上のベストセラーとなった一冊です。

20代までは教育を受け、そして仕事をし、60代でリタイヤ(引退)という3ステージ/ワンサイクルだけで設計されたこれまでのロールモデルから、人生100年時代が到来したいま、異なるモデルへの転換が必要であるというのが本書の主張。つまり、寿命が延びたことで今までのエイジ(年齢)とステージの連動が崩れ、3ステージの生き方が当たり前だった時代は終わるというのです。

これからは、選択肢を狭めず次の世界を検討する「エクスプローラー(探検者)」、自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、様々な仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」などが現われ、生涯に多くのステージを経験するようになるだろうと本書は予言しています。(しかしながら、我が日本では世界に先んじて超高齢化社会が進行しているにもかかわらず、これらの人生の多様な選択を支援する環境がまだまだ整っていないとの指摘も。)

そして、60歳までが現役の時代なら、人生の初めの段階で獲得した一つのアイデンティティを維持できていたのが、100歳となるとそのアイデンティティさえも長い人生の中で模索し、移行していく必要があると説いています。個人的には、アイデンティティを人生の中で複数持つことができるのか、変えることができるのか、また変える必要があるのか、など疑問が残りました。

また著者は、金銭的な資産価値だけでキャリアを考えるのではなく、無形資産についても考えるべきだと主張します。ここでいう無形資産とは、家族や友人などの人間関係、健康や知識、様々な体験などのこと。それ自体として価値があるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けるカギであり、有形と無形の両者をバランスよく充実させて相乗効果を生み出すことで、100年時代の人生の充実が図れるというのです。(途中、人間関係から得られる温かみを昔の人は家族から得ていたが、最近は友人から得ている人が多いというWhartonでの調査が引用されていて、そちらも興味深かったです。)

100歳まで働けると考えるか、働かされると考えるのか…人によって価値観は違いますが、本書では年代ごとに凝り固まってしまったキャリア観やモデルを崩し変えるには、年代を超えて共に活動し対話するような機会を増やすことを推奨しています。この点、私も大賛成です。会社や学校などのヒエラルキーの中だけで過ごすのではなく、ボランティアをはじめ様々なコミュニティの中でヒエラルキーなしの人間関係を持つことで、それらを解きほぐすことができるはずです。年配者は若者から学び、若者は年配者から学ぶ環境が日本にはもっと必要なのでしょう。

著書が日本語版に寄せて述べているように、リタイヤ(引退)の概念は既に変わりつつあると私も思います。果たして今後、日本は高齢化という課題の先進国として、世界のお手本となれるのでしょうか? 本書の終章にある言葉が、その糸口なのではないでしょうか。

◆重要なのは、あとで変化を突きつけられるのではなく、いま変化を予期して行動することだ。積極的に計画を立てて行動しなければ、長寿化は厄災の種になりかねない。だからこそ、人々が自分の状況をもっと直観的に感じ取り、選択肢をよく把握できるように、幅広い議論をおこなう必要がある。
◆「私は何者か?」「私はどのように生きるべきか?」という問いに答えられるのは、結局のところ本人しかいない。人生が長くなれば、この問いは無視できないものになる。

キャリアコンサルタントとしての視点で本書を見ると、今後のキャリアデザインにあたっては、現実的な求人を直視しながらも、景気の急変動に左右されない人生設計について考えておくことが重要といえます。キャリアの連続性と不連続性を、ご自身の年齢=例えば38歳、50歳、60歳、そしてその先までイマジネーションをめぐらせ、考えてみること。私たちコンサルタントは、ご相談をお受けする際に最新の求人需要傾向を具体的にお伝えしなければなりません。キャリアの在り方が変化する時代にあって、そのキャリア機会が本当に価値あるものなのか、考える材料をできるだけご提供し、ともに幅広く議論するパートナーとなることが益々求められると思いました。

高齢化時代のキャリアの在り方は、まだまだこれから模索が始まります。現在60歳の私としては金銭的資産には自信がありませんが、幸いたくさんな人々とのつながり=無形資産だけは身に余るほどあると胸をはれます。また身近に、すでに『LIFE SHIFT』を体現しておられる先駆的シニアの方がおられます。かの先輩のごとく、私自身も100年時代の人生をより充実させたいものです。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)~100年時代の人生戦略~ 出版社:東洋経済新報社
リンダ・グラットン(著)、 アンドリュー・スコット(著)、池村千秋(翻訳)
渡邊 光章
株式会社アクシアム
 代表取締役社長・キャリアコンサルタント
渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

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