転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2007年 1月~3月 
2007.01.18

雇用の変化・雇用ロジックの変化~創業から14年を振り返って~

アクシアムがスタートした1993年当時。思い起こせば、お客様(求人企業)は外資系企業だけで、人材紹介会社も世の中に200社に満たない時代でした。給与所得者は約6900万人で、バブル後の大量採用が行われ、雇用が十分に守られていた最後の年であったように思います。(そんな中でも一部の見識ある人は、来るべき厳しい時代を既に覚悟しておられましたが。)

1995年には就労人口の中で、「製造業など財にかかわる産業の就労人口」と「サービスにかかわる就労人口」の逆転が起きました。ちょうどアメリカの1985年にも似た変化です。

1995年に書かせていただいた本コラムの第一回を読み直してみると(労働白書“高失業社会”宣言)労働白書を引用して「すでに就業者の6割がサービス業に就労している」こと、同時に「インターネットリクルーティングや高失業社会が到来する」ことを述べています。そして世の中はその予想どおりに就労人口の逆転が起き、インターネットを介しての転職が盛んになりました。高失業社会が到来したかという点については議論が必要だと思いますが、正社員に限れば、多くの人が雇用を失いました。

1995年から1998年にかけて、アクシアムに30代のベンチャー企業経営者からの求人が寄せられ始め、1998年以降は一気にその数が増加しました。ベンチャーが、大企業から転職市場へ出てくる人たちの雇用先として期待を集めたわけですが、果たして現実に雇用先としてそれらは機能したのでしょうか?

確かに、今まで存在しなかった“新興市場”といわれる公開ベンチャー企業の数は、2005年には2000社を上回っています。その点、雇用を生み出したともいえるのですが、大企業出身の人たちをすべて受け入れられるほどではありませんでした。(しかも、彼ら大企業出身者の経験・スキルがベンチャーにおいて十分役立ったとも思えません。)

それどころかM&A、外資系への転売などで2500社以上あった一部・二部上場(いわゆる大企業)は2100社程度に減り、個人の雇用の機会はさらに狭まりました。

一方、1999年には、我われ人材紹介業界にとって大きな変化となる規制緩和がなされ、人材紹介会社の爆発的な創業・拡大がありました。なんとこの6年あまりで、その数は40倍の8000社にも達しています。実際に活動している会社は半数程度だといわれていますが、それにしてもビッグバン並みです。

個人が人材紹介を利用することは確かに増えました。しかし、肝心の雇用人口は減りつつあります。これらの人材紹介会社は、公的機関とともに職業紹介斡旋を通じて雇用の機会を生み出す役割もあるはずですが、残念ながら数の点ではまだまだ不十分だと感じています。

昨年の統計では、給与所得者は約5300万人といわれています。今後3年間で団塊の世代が(約700万人)リタイアされ、給与所得者は約4600万人となります。別の統計では契約社員、派遣社員が1600万人を突破したともいわれ、実質、正社員給与所得者が3000万人程度と推察されます。私などは「この位しかいないのか!」と、愕然としてしまいます。

アクシアムに寄せられる求人のうち、外資・ベンチャー企業からの求人が 割合として多かった時代は2001年まででした。その後、2004年まで一旦鈍化し、昨年からは再度活発に転じました。そして、それに応じるかのごとく、日系大手・中堅企業などからの求人も増加しています。

つまり、バブル後の大量採用時代、ベンチャーなどの爆発はあったものの徐々に雇用機会が狭まってきた時代を経て、現在は外資系企業・ベンチャー企業・日系企業と、3つのセグメントのすべてが急速に活発な採用を行うようになっているのです。

何よりも、この動きは日本の社会における資本の流れの変化によるものだと感じています。個人のみならず、いまや会社が転職する時代。漠然とした“会社”が人を探すのではなく、株主が経営者を、経営者がマネージャーを、マネージャーがスタッフを探すという雇用ロジックの 時代が始まっています。

その到来に気付いた方は、きっと今後も(例えば2010年)ご自分の雇用を心配することなく、自分以外の人々の雇用をも生み出す経営者になっておられることと思います。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)