転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2013年4月~6月 
2013.04.04

若手とシニア、それぞれの雇用問題

前回は、「労働市場、3つの変化」と題して1.グローバル求人の増加、2.レンジアップ(求人対象年齢のアップ)、3.女性向けの求人の増加、を報告させていただきました。

その流れは継続していることは言うまでもありませんが、今回は、さらに本気で取り組まなければならない別の大きな問題を2つ提起しておきます。

現在、アクシアムが得意としている20代後半から40代までを対象とした求人は急激に増加しています。また、個人の方々からの転職相談も増加しています。その中、求人のターゲットになりやすい人(いわゆる売れる人材)には、複数のオファーが同時に集中し、その中から最も希望に近いものや条件の良いものを選べるという、贅沢な状況になっています。

しかし、その年齢層の上下、20代前半や50代以上を対象とした求人は非常に少なく、特に50歳以上について言えば、壊滅的といっても過言ではないような状態です。震災後、もう2年も復活しないままと言えます。

先ず、20代前半での問題は、2つあります。 一つは働く気持ちになっていない人が数多くいること。そのような人は、私たちアクシアムには相談に来られませんが、実態はかなりの若者が働くモチベーションを持てずにくすぶっているように思います。

二つ目は、やる気をもっているのに、力の発揮のしどころを見つけられずにいる人も多いことです。未来と言う時間をもっているわけですから、やる気のある若者や力があって挑戦したいと希望する人であれば、職は見つかるはずです。自分を見つけ、身の丈を知り、それなりの努力をすれば、きっとふさわしい職は見つかります。しかし、それが上手く出来ていない。

20代前半の就職・転職においては、1.やる気のない20代への火つけ対策、2.やる気になっている20代の職業指導と紹介、この2ウェイのアプローチが必要です。ただ、残念ながらこの領域についてはスカウト型の人材紹介業では対応が難しく、やろうと思うとコストの持ち出しが生じてしまいます。この領域は、職業学校がスキルセットの向上やインターンシップの紹介と合わせて、卒業後のフルタイムの紹介を行う形でより積極的に行っていくのがふさわしく、学校経営のビジネスの中で、一つの主要サービスとして成長してゆくのだろうと思われます。

それより深刻なのは、50歳を超えた人達の雇用の問題です。

50歳を超える人達を採用する企業は、本当に少なくなってしまいました。

外資系企業なども、年齢不問といいつつ実態は若年化を加速しています。日本支社長を始め経営陣もどんどん若手に変わってきています。ベンチャー企業も50歳以上を雇用する企業は極めて少ないのが現実です。中小、零細企業においても、再生中企業においても年配者を簡単に雇用はできないでしょう。

そのような中、いわゆるサービス業に大手企業の管理職者が再就職するというケースはさらに増えるでしょう。実際、駅や公園、コンビニあたりで無料の求人情報誌を読む50代が多く見かけられるようになった気がします。

総じて、政策としてのシニア層の雇用対策は、ほとんど机上の空論・理想論になっているように思われます。高齢者雇用対策の助成金や支援団体というのが多数ありますが、本当に機能しているのでしょうか?

復興支援予算などは本来の目的以外に流用されてしまっていましたが、それと同じで、税金を使っても本当に雇用を開発しているようにはとても思えません。

筆者としても、批判ばかりでまだ具体的な策がなく頭を抱えるだけですが、この問題は他の世代に任せることができず、50代自らが解決すべきではないかと思います。

20代の職を50歳が奪うという議論にならないために、どのようにすべきか真剣に考え、心して解決に臨みたいと思います。

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)