転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第68回
2009.07.23

外資系企業の日本支社長にならないかと誘われたのですが…

日系大手企業に勤める38歳です。海外のMBAを取得した後、子会社(支社)の副社長をやっています。

先日、同業の外資系企業の日本支社長をやってみないかとのスカウトを受けました。チャレンジングで年収も1.5倍程度になりそうなので、前向きに考えています。日本では同業(競合)への転職を嫌がる人も多いようですが、自分自身はその点は気にしておらず、「会社や仲間を裏切る」という感覚も持っていません。家族も特に反対はしていません。

しかしながら、気になることが二つあります。1点は、将来、再度転職をしたいと思った時に(せざるを得なくなった時に)、「同業や競合に転職する人は信用できない」というような理由でマイナスに評価され、転職しづらくなるということがあるのではないかという懸念です。 もう一つは、その外資系企業の前任の日本支社長は50歳であったと聞いており、後任に38歳という若い私を選ぶのには何か特別な理由があるのではないかという漠然とした不安です。問題があってほかに引き受ける人がいないということに私が気づいていない(知らされていない)というようなことはあるのでしょうか?ちなみに、日本支社は30名程度の組織で、日本でもすでに10年以上の歴史があります。

Answer

前回、前々回に引き続きスカウトを受けた時のご相談ですが、今回は「外資系の日本支社長」のケースです。

第一のご質問は、「同業・競合への転職者への評価」ということですが、確かに日本人は「競合への転職=裏切り」ととらえる傾向は強いかもしれません。しかしながら、それは働く側の意識であり、採用側の人事、経営陣、株主などの雇用側の意識ではないともいえます。むしろ同業・競合企業にいる人を採用したいと考える傾向のほうが強いといえます。

ただ、採用側も「あなたはなぜ同業や競合他社へ転職しようと思うのか」という、その理由はとても気にします。シンプルに「年収が高くなるから(現在が低いから)です。」という根拠を「善し」とする採用者もいれば、「年収が低いぐらいでやめる人は信じられない」といって、「悪し」とする採用者もいます。 今回のケースでは、スカウトされてということですし、しかも社長へのチャレンジでもあるのでマイナスにとられる根拠は見当たりませんね。まったく気にされなくても良いように思います。

第二のご質問は、これはもう少し詳細の情報が欲しいところですが、わかる範囲でお答えします。

そもそも、「その支社長の責任(職責)に対して、あなたに十分な適性があるのか」、が問題です。

社長といっても、外資系企業の日本支社というケースでは、実際の経営能力まではとわれず、販売数字に対して責任を持つものの、それ以上の責任や権限はないということが多くあります。General Management であり組織の長ではあるものの、その実体は「営業責任者」の域を出ず、本質的な経営者あるいはCEOではないというケースです。 そうであれば、38歳でも十分にやり遂げられると思います。しかしながら、30名の会社でも開発や研究、生産も日本で行い、M&Aの意思決定もするとなると話は別です。本当に日本支社長として経営の重責を担えるか、ご自分のご経歴やスキル、マネジメント力を自己判断しておかれるべきです。 もちろん未経験でも知識があり、やってみたいと意欲もお持ちでかつやり遂げる自信もあるのであれば、チャレンジされると良いでしょう。そのかわり、「チャレンジしてだめならクビになる」と覚悟すべきです。雇用の安定はあきらめる必要がありますね。そのリスクも含め、1.5倍の賃金となると理解するべきでしょう。 もしかしたら、そのリスクを考えると1.5倍ではまだ安いかもしれません。

なお、38歳という年齢を気にしておられるのであれば、そこはまったく気にされないで良いと思います。部長で転職するよりは支社長で転職したほうが、レジメ上もプラスに評価されます。

第二のご質問へのお答えをまとめると、「支社長になるというタイトルや表面的ことを吟味するのではなく、企業経営という観点でどの程度の責任があり、それにご自身が応えられるのかという点をしっかり判断すべき」ということになります。

チャレンジするのに「若い」ということはプラスになってもマイナスにはなりませんが、本当に「今が適時」ということがいえるか、今が良いタイミングなのかどうかは十分自問自答してください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)