転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第105回
2011.09.01

20代、将来起業したいが、何をしておけばいいでしょうか?

大学と大学院で機械制御工学(メカニカル・コントロール)を専攻し、コンピューターを利用した様々なシミュレーションやネットワーク、画像処理システムなどを深く学びました。卒業後は、大手コンピューターメーカーに入社し、研究所ではなく、BPRコンサルタントとして5年間勤務しました。

大学時代から、将来はベンチャーを起業したいと考えていたのですが、まずはビジネス経験を積むことが大事だと考え、卒業時にいきなり起業するのではなく、現職に就きました。ただ、5年間仕事をしてみて、このまま現職の仕事を続けていては何歳になっても起業することはないだろう、と思うようになりました。何か新しいモノや機会を見つけることはなく、なによりも全くベンチャー企業に関わることがなく、起業や経営に関わることもないためです。この5年間が無駄にさえ思えてきました。どうすれば、起業できるのでしょうか?

Answer

賢明な貴方は、既に感づいていらっしゃいますね。可能性ゼロではないと思いますが、たしかに、現職の延長線上に起業があるとは考えにくいですね。

それに、強い信念や自信に支えられたものでなく、単に「起業をする」ということが目的になっているのだとしたら、実際に起業をすることはないでしょうし、たとえ思いつきで起業することがあったとしても、うまくはいかないでしょう。

大学生の時分から、就職せずに起業する人もいる時代ですから、起業したいと思っているのに未だ起業していない/起業しないというのは、起業のネタが無いからとか、未だネタに遭遇していないからとかいうことではなく、ご自身が起業をして成功できるという自信、あるいは”思い込み”を持てていないからではないでしょうか。

自分が自分自身に対して「起業しても大丈夫だ。成功する。」という自信や思い込みを持つことができれば、起業できます。または、自分ができるかどうかは分からないが、損得勘定を越えて「どうしてもこれをやりたいんだ」という強い決心や覚悟ができる対象(ネタ)が見つかれば、起業できます。

逆に言うと、「起業しても大丈夫だ。成功する」と自信を持てないから起業できていないのかもしれません。大学院を出てITコンサルティングをしてこられた貴方が、起業して成功できるか不安なのは当然です。十分な経営能力、ノウハウがあるか?ビジネスリーダーとして認められ、社員の信頼を得ることができるか?彼らに人生を託してもらえるか?株主が成長を信じて投資をしてくれるか?・・・

自信を持ち、また成功の可能性を高めるにはどうすればよいのでしょうか?

考えるべきこと、起業までに習得しておくべき能力や知識、スキル、経験はいろいろありますが、一番大切なことは、ベンチャー企業というものがどのようなものか、起業家とはどうようなものかを、ご自身でしっかりと理解しておくということです。

起業家のお話や講演を聞いたり、書物を読んだりするのも良いのですが、いつか本当に起業のチャンスを掴み、成功の可能性を高めたいと思われるならば、実際にベンチャー企業で仕事をしてみることを強くおすすめします。目と頭、そして心でベンチャー経営の本質を掴んでいきましょう。リスクの取り方、意思決定のスピードなどにおいても、大企業のそれとは大きく異なりますので、そのあたりもしっかり学んでおくと良いと思います。

大企業を出て起業したのは良いが、耐性がなく、運営継続が困難になってしまったというケースはよくある話です。そうならないよう、耐性をつけることですね。だからこそ、「既得権益に守られ、リスクも変化も無い安定的な環境」ではなく、「揺らぎや歪みのある混沌とした環境や、ニッチマーケット、あるいはエッジと呼ばれる最新、最先端のスピードと変化に富む環境」に身を投じてみることをおすすめします。

技術でもサービスでも、できるだけ顧客に近いこところで、経営資源も基盤も何もないところから、如何に顧客や市場に対し、付加価値を生み出してゆくかということを体験しましょう。 すると自信がつき、おのずと「自分でもできる。起業しよう。」と思えるようになるでしょう。

最後に、「人」について。言うまでもなく、心を許せる友人や人生を応援してくれる家族、そして株主や顧客、社員となってくれそうな人等、ステークホルダー候補者とのネットワークはとても大切です。起業する前に、大企業にいて強固な人脈をつくっておこうとする方が多いですが、実際のところ、大企業での人脈を起業後に生かせている方は少なく、ベンチャーを起こしてから人脈を広げていることが多いです。やり手のビジネスマンであることに加え、人間としても魅力的な人間であることも大切だといえます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)