転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第109回
2012.02.02

マネジメントへキャリアアップしたいのですが

45歳、管理職の者です。日本のメーカーで海外勤務をした後、自分の力を試してみたいと思い、30歳の時に海外のMBAに2年間留学しました。卒業後、32歳で外資系A社にマネジャーとして入社。業績は良かったのですが、入社2年目の時、本社の意向により、私が所属していた製品分野のビジネスは本社の管轄となり、日本支社は売却されることになりました。残念ながら退職せざるを得えない状況となり、35歳を前に外資系B社に転職。その後、39歳の時にヘッドハンターから「ディレクターに挑戦してみないか?」と声がかかり、外資系C社に転職し、さらに43歳でまたスカウトされ、現職の外資系ブランドメーカーに転職しました。現在、本部長職で、50名を超える部下を管理しています。BtoCビジネスの領域でセールス・マーケティングをコアとし、マネジメント(経営)職を目指してきました。

これまで4回の転職、5社を経験しましたが、留学を志した時以外は、会社理由やスカウトによるもので、自分の意志で職を変わった訳ではなく、必ずキャリアアップを果たしてきました。年収は2,500万円程度になりましたし、タイトルについても必ず前職よりアップさせてきました。現在はマネジメント職へのキャリアアップを目指していて、ヘッドハンターからCXOや役員クラスの案件で声がかかることを期待していますが、なかなか誘いがありません。40歳の頃から企業経営を目指しているのに、45歳になった今もまだマネジメントになることができていません。どうすればマネジメントになれるのでしょうか?

Answer

「どうすればマネジメントにキャリアアップできるか?」という質問ですが、実はこのご質問をされている時点で「経営者には力量不足」と思われてしまいます。

35歳以下の方が「組織の上を目指したい。どうすればキャリアアップできるか?」とおっしゃるのであればさして問題ありませんが、45歳の方が「どうすればマネジメントにキャリアアップできるか?」には、違和感を覚えます。「どうしてマネジメントのポジションで声がからないのか?私に何が不足しているのか?」というご質問ならまだ分かりますが、違いがお分かりですか?

もう一度、ご自分の質問を見直してみてください。そして、ご自分の質問に隠れた「無意識」を見つけてください。

私には、貴方が社員感覚で「キャリアアップをして、偉くなりたい」「もっと多くの部下を持ちたい」「報酬を上げたい」「自分には実力があるから、チャンスがあってしかるべきだ」とおっしゃっているように聞こえます。もっと言えば「給与所得者としてやりながら、役員と呼ばれたい」「雇用の安定を保証してもらいながら、経営者と呼ばれたい」とも聞こえます。また、「これまではヘッドハンターから声がかかったから転職した」という発言は、はからずも主体性の欠如を示してしまっており、責任感の有無まで懸念されます。

残念ながら、マネジメントの求人の採用側、すなわち株主は、そのような人に経営を任せたいとは思いません。決して、「人任せな方」や「自分のキャリアアップばかりを言う人」を信頼しないでしょう。経営者には、もっと「主体性と強い責任感」や「多くのものを背負う覚悟」を求めているのです。

社員から見た場合であっても、同じことが言えるでしょう。はたして、社員は、そのような「自分のキャリアアップばかりを考えている部長」に経営のかじを取ってもらいたいと思うでしょうか?上司として尊敬して、ついて行くでしょうか?ましてや、人生をかけてみようと思うでしょうか? ご自分が若い時を思い出してください。そのような上司を尊敬しましたか?

厳しい回答、不遜な言い方になってしまい大変恐縮ですが、会社経営とは何か、マネジメントとは何か、社員と役員の権限と責任の違いとは何か、これらについてもう一度学び直し、認識を変えていただくと良いように思います。 今のような「マネジメントへキャリアアップしたい」という考え方をされている限り、企業単位の経営、マネジメント職で声がかかることはないように思われます。

 

真の経営者とは、株主や社員、顧客や市場、そして社会を含めた全てのステークホルダーに対する責任と、経営者としての信念・哲学とを持つ人です。経営者になるには、それらステークホルダーに評価される実績、信念と哲学に加え、ステークホルダーと力を合わせて新たな企業価値を生み出すことを可能にするマッチアップ力(合わせて完全なものに仕上げる力)や想像力、リーダーシップを持ち合わせていることが不可欠です。

経営者を目指されるのなら、ぜひとも株主や社員、顧客や市場、そして社会という相手あってのキャリアであり人生であることを再認識した上で、自主性と責任のあるキャリア開発を行ってください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)