転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第142回
2014.12.04

転換期における戦略コンサルタントのキャリアは転職に有効でしょうか?

理系大学院を卒業後、大手企業に総合職で入社し、社内IT部門に配属されて3年が経ちました。ゆくゆくはビジネスリーダーを目指したいと考えています。同期は戦略コンサルティングファームや投資銀行に入社しており、それはもう華々しいのですが、私はそんな華やかさよりも、堅実に経営できる人間になりたいと思い今の会社に入社しました。ただ、いつまで社内ITばかりやらされるのかという不満はあります。

そんな折、とあるヘッドハンターから、「戦略コンサルティングファームに転職しないか?」と誘われました。私は、戦略コンサルタントは考えていなかったのですが、そのヘッドハンターは「転換期としてのキャリアに戦略コンサルティングファームで2~3年以上勤務して経営力をつけて、そのあと外資企業やベンチャー事業会社の経営企画職に転職したらよい。35歳でマーケティング責任者になった人もいますよ。貴方の英語力だったら、MBAに留学しなくても同等の知識やスキルは戦略コンサルタントの経験で得られます。有名大学卒という肩書だけではなく、戦略コンサルタントと言う肩書は市場価値が高まりますし、それを転換期のキャリアとして利用すれば、現職以上にいろいろなチャンスに巡り合えますよ。」と勧められました。転換期のキャリアとして、戦略コンサルティングの経験は有利なのでしょうか?

Answer

戦略コンサルタントや投資銀行は採用審査も厳しく、また入社後のビジネススキルや知識を、ビジネスマンとしても鍛えられるでしょうから、2~3年以上勤務した後の価値は現職よりもアップしていることについては否定しません。

しかし、有利か不利かということで、転換期としてのキャリアとして戦略コンサルの経験をキャリアデザインの中に組み込んで良いかと聞かれれば余り賛同できません。

 

採用側の視点として、最近は戦略コンサルティングファームの稼働率が上がっていて人手不足なので、パートナーの意見は分かれるかもしれません。「たとえ2~3年でもITに強い理系の人がアソシエイトで勤めてくれるならOKだ」と言うパートナーもいるでしょう。しかし、「2~3年間教えた後、生産性が上がった段階で転職されたら、会社として元がとれないし、できれば5年以上、せめてケースマネジャーまで目指して継続して欲しい。」と考えるパートナーもいます。

確かに戦略コンサルタント出身の20代、30代を求める求人は非常に多くなっています。その点ではヘッドハンターのいうことは事実です。経営企画や戦略、マーケティング、人事などその専門性は認められるところだと思います。

キャリアコンサルタントとヘッドハンターの違いは、時間軸についての助言にあるかもしれません。そのヘッドハンターの助言で隠されたのは、35歳以降のキャリアデザインについてです。

キャリアデザインにおいて、転換期としてのキャリアと位置づけてどこかの会社での経験を2~3年組み込むという方法は、若い人や1社だけで働こうと思っていた人には新鮮で、画期的に映るかもしれません。しかしながら、このような意図で戦略コンサルティングのキャリアを組み込まれたレジュメは、採用側のプロが目にすると残念ながらすぐに判明してしまいます。35歳以降の労働市場において、35歳までの職歴で、こういった踏み台のような手法を使ってキャリアを創りましたという人を、はたして市場は評価するのかどうか、深く考えてみてください。

例えば、この方法のおかげで35歳の時に1500万円のマーケティング部長になることができて、ファストトラックで他の人よりも出世したということが、ご自分の満足ができるキャリアなのでしょうか?ビジネスリーダーの資質を寄せ集めればビジネスリーダーになれるのでしょうか?

私は反対です。

35歳までは、個人が売り手市場なので、優秀であれそれなりであれ、キャリアアップでも年収アップでも個人側に選択権がありますので、デザインを実現化しやすいです。

本当にキャリアデザインがその通りにいかないのが35歳以降です。採用側が圧倒的に有利です。いろいろな方法がありますが、35歳以降のためにも35歳までの職業経歴、キャリアをしっかり構築してください。

 

最終的な回答としては、戦略コンサルティングファームに転職する事は賛成です。しかし転換期としてのキャリアに組み込むことは35歳以降にビジネスリーダーを目指す人にとって要注意です。 戦略コンサルティングファームに転職して、結果的に2年以内程度で退職することになったというなら仕方ないですが、どんな仕事も2~3年で転々としても大きな成果を生み出せないのではないでしょうか?

こうした転職をしてしまった方が、自信を持てる大きな成果を伴わない状態で40代になって、そのヘッドハンターがはたして面倒を見てくれるかどうか。きっと相手にしてくれないのではと心配してしまいます。

この場ではあまり長々とご説明ができませんが、35歳まで転々としてヘッドハンターの思惑どおりにならないで、しっかりご自身の展望をもってください。戦略コンサルティングファームでの経験の後、35歳以降もどのようなキャリアになるのかを考えてみてください。35歳以上の求人市場では、しっかりとリーダーシップやオーナーシップをもってビジネスに挑戦し、成果を出せる(出した証明が出来る)ビジネスリーダーが求められているという点だけは胆に銘じておいてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)