転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第146回
2015.04.02

ヘッドハンターが信用できません。直接採用企業にコンタクトしてもいいのでしょうか?

外資系スタートアップZ社・日本支社長のポジションでスカウトを受けたのですが、ヘッドハンターの説明が何度も変わるので、信用できなくなっています。

ご質問したいのは、「候補者から直接採用企業Z社にコンタクトしてもいいのか?」という点です。

現在A社からすでにオファーをもらっていましたが、ヘッドハンターからスカウトされたZ社は以前より強く興味がある会社だったので、Z社が日本に来るならチャレンジしてもいいと思い、インタビューを3回受けました。 Z社の本社役員とのスカイプインタビューが終わり、ヘッドハンターからはこのような説明を受けました。

「年収はA社より30%高い額を提示したいと言っている。ついては最終面談のために本社に来てほしい。飛行機代も負担する。予約もこちらで手配する。どうしても本社最終役員面談が1か月後になる。ついては貴方がオファーを受けているA社に、1か月回答を待ってもらうように依頼してほしい。」

 

私も現職外資の部長職で採用活動も経験していますし、サーチ会社を使った経験もあります。 対面のインタビューが必要なことも分かります。しかし、今までも、このヘッドハンターの説明がころころ変わってきたことから、信用できません。

私を最終候補者だとヘッドハンターは言いますが、どうも他に候補者の影が付きまとっています。早期採用を考えているはずなのに、面談を1か月後にしか設定できないということも合点がいきません。

ヘッドハンターに、Z社に直接連絡しても良いかと尋ねたところ、「候補者であるあなたから直接連絡してもらうと、仲介会社として信頼を失いかかねないので困ります。やめてもらいたい。」と拒否されました。

企業に直接連絡してはいけないのでしょうか?

Answer

仲介者を介した転職活動の場合でも、必要に応じて、候補者、採用企業、どちらからでも直接コンタクトすることができます。

このケースは、ヘッドハンターが候補者であるあなたに十分納得できる情報共有をすべき重要事項だと思います。 サーチ会社の説明だけで不十分なのであれば、あなたからZ社に直接連絡をとることは可能です。

仮に私がそのヘッドハンターの立場で、同じ状況だとすれば、きちんと納得してもらえるよう事実事項の説明をします。それでも不十分な場合は、私から採用企業Z社に対して、直接候補者であるあなたへの状況説明をしてもらえるように要請します。これはいたって簡単なことです。

 

A社のオファー有効期限を確認しながら、A社に回答を1か月も待っていただかなければならないことが事実なのだとしたら、仲介者経由ではなく、Z社が直接候補者に説明をすべきです。

また、このケースの場合は、根本的にそのヘッドハンターを信用すべきではないと考えます。 客観的に見て、疑問が山積みです。

  • 対面の最終面接がなぜ1か月も後になるのか理由が提示されていない。他に候補者がいないとは考えにくい。
  • A社オファーの回答期限も聞かずに、単に1か月延期してくれなどというなどという提案は、破断を招きかねないことを承知で依頼してきている。
  • 年収について最終面談前にはっきりとA社の30%アップだと言い切れるものではないはず。

 

いくら魅力的な企業で想定ポジションや年収が好条件だとしても、ヘッドハンターに直接連絡してほしくないと言われても、落ち着いた判断が必要です。

A社のオファー回答期限までに、Z社に直接連絡を入れてみましょう。ご自身の状況を説明のうえ、書面もしくはメールで納得できるメッセージをもらえるようお願いをします。

そして、あなたが直接Z社に連絡をとることをヘッドハンターがどうしても拒否するのであれば、Z社に対してそのヘッドハンターのクレームを入れるべきだと思います。このケースでは仲介者として適切な情報提供を行っていないことは明らかです。おそらく採用企業もこのような状況になっていることを知らない可能性が高いと思います。

 

もちろんZ社からのオファーをもらうことを希望するのであれば、クレームを出すことを目的とするのではなく、丁重に事実を伝え、端的に質問されるといいと思います。冷静に事実事項確認のうえ、くれぐれも機会損失の無いようになさってください。

ちなみに、ヘッドハンターがこのような手口を使うことは多いです。

採用の決定プロセスは、オファーが出るまで流動的で不安定なことは事実ですが、プロセスだけ説明するヘッドハンターではなく、なぜそのような状況になっているのか。その理由をしっかり説明してくれたうえで、分かっていること、分かっていないことを明確に伝えてくれるコンサルタントを選びましょう。実はこのご質問のようなケースは、私の知るところ大半がオファーに至っていません。「最終面談が無くなった。」「結局、流れた。」「日本参入が延期になった。」といったような話は良く耳にします。

本当に信じられないことなのですが…。

ご自身にとって最良の決断となりますよう、心よりお祈りしています。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)