転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第145回
2015.03.05

海外経営者ポジションを探しているのですが、次の選択に悩んでいます。

42歳、中堅企業(売上規模500億程度)の常務として経営再建を果たしました。大学卒業後、戦略コンサルティングファームで8年、海外MBAを取得後、戦略コンサルティングファームに戻りましたが、その後36歳でご縁があって経営立て直しをしたいという現在の会社の社長から要請を受けて、CXOとして入社。低迷していた業績を成長基軸に戻しました。次の世代も育っているので後任に席を譲り、私は役員任期を終えました。最終年収は2400万円でした。

前職では国内市場がメインだったので、今度は若い時からの念願であった海外市場開拓を担えるような、海外経営者ポジションを探しています。サーチ会社や知人経由でお話を進めて、最終的には3社からのオファーをもらったのですが、どの選択が良いのか決めかねています。ご助言いただけないでしょうか。なお、どの業界もコンサルタントとしては経験済です。

[A] 売上規模は同じ程度の企業。海外支社の経営者候補としてまずは1年程度、本社経営企画室長でスタートしてほしい。年収は1500万円からスタートして、海外勤務となれば2000万円を超える。上司は役員。

[B] 30代の社長が立ち上げたスタートアップ。COOとして来てほしい。現在売上規模は5億円程度だがゆくゆくは100億規模に成長させたい。増資を10億円で行い、さらにスケールさせたいとのことで、チャレンジングだが、やりがいがありそう。将来は海外市場も狙いたいという希望はあるが、まずは国内と社長は考えている。年収は1000万円、ストックオプションは500万円相当。上司はCEO。

[C] 超有名外資系企業の日本支社。新規事業部立ち上げを行っているので、そのGMとして来てほしい。すでに事業自体は部門も10名程度でスタートしているが、ゆくゆくは数百名になるはず。年収は3000万円。上司は本社の新規事業担当役員と日本支社長。海外市場ではないがグローバルな企業でやりがいがありそう。

Answer

3つのオファーで悩まれているとのことですが、ご質問内容をお伺いする限り、キャリア選択の軸、優先順位がぶれているように感じます。活動の当初には、若い時からの念願であった「海外市場開拓をやってみたい」が主眼だったのが、面談過程を経て、3つのオファーを獲得した現段階では、そもそものキャリアの選択の主眼に合致しているものは、現実的には[A]だけでしょう。ただし、[B]も[C]も将来、あなたの念願がかなえられないと決まったわけではありません。[B]のようなタイプを選んで、意外にも2年後海外の社長として赴任しているようなケースも、実際過去にありました。また、[C]のケースで日本市場だけ見るが事業立ち上げを大きな会社の規模で成功させ、日本でもジョイントベンチャーを立ち上げ、さらにアジアを統括するまでになった方も過去にいました。

念願を今叶えたいのか、将来叶えたいのか。それによっても変わってきますが、実現可能性は、どの選択をされた場合も、相手とあなたの展望、そしてお互い提供できる資産(あなたのキャリア資産といえるスキルや経験)と相手が持つ会社の資産(人的資源や技術力や経営資源のこと)をうまく合わせて活用し、資産を最大活用することで高めることが出来ると言えます。

でも、お互いの資産も変化しますが、なにより、お互いの展望も、心理状況やわがままなどによっても変わってしまうことがありますよね。

経営のミッションにぶれが生じてはいけませんが、あなたご自身のキャリアの考え方、優先順位も、簡単に変わってしまうのでは、成功は叶いません。

現に、インタビューの最初と、最後で、いろいろな魅力を感じて、優先順位が変わってしまっているのでないでしょうか?

  • 会社環境
  • 報酬
  • 上司
  • やりがい
  • 将来性

ご質問に記載されているのは、この5点だけですが、どれがいいのか、というアップサイドだけではなく、それぞれのリスクについてもしっかり論じておきましょう。36歳のキャリアの選択は経営再建という難しい課題に立ち向かいながら、幸運にも成功されていますが、42歳の今回の選択は、もう少しシビアに考えておかれたほうが良いと思います。アップサイドだけではなく、ダウンサイドリスクも考えておく必要があります。

すでにお気づきなのだとは思いますが、老婆心ながら、以下に考えておくべき、よくあるダウンサイドリスクを述べておきます。

[A] 海外に行かせてやると言われて入社したが、何年たっても約束は反故にされたまま。埒があかず、年収も1500万円からあまり上がらず、退職。

[B] 半年もしない間に、創業CEOと議論がかみあわず、退職勧告を受ける。CEOの意見がおかしいといっても株主も裏では私の意見に賛同してくれても、表だってはCEOを支持。結果、退職せざるを得なくなる。

[C] 超大手で安心と思ったら、1年もたたない間に本社の戦略が変わり、役員が退任。新規事業はシャットダウン、同時にポジションは変更され、別のGMの下のディレクターポジションで数名のチームヘッドで年収も1500万円に減額される。

CXOも含む、責任のあるポジションですので、当たり前と言えば当たり前なのですが、考えれば、どの選択もダウンサイドリスクの高いものばかりですよね。

以上、参考にしていただき、よきキャリアの選択をなさってください。選択の軸、優先順位をぶらさず、さらにアップサイドのみならずダウンサイドも考える。熟考に熟考を重ねた後は、ご自分の心に聞いてみてください。「どれが成功しそうで、どれなら失敗しても後悔しないか。」を。これまでの経営経験も活かし、ご自身の念願である海外市場開拓の出来る海外経営者として、是非それを乗り越える力と運、人の縁を自分で生み出せるように頑張ってください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)