転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第202回
2020.01.09

あるスタートアップの管理本部長。部下を採用する際に留意すべき点は?

これまでに事業会社、スタートアップの両方を経験し、現在4社目です。あるスタートアップの管理部門を、経営管理本部長として統括しています。今後の経営戦略上、よりCFOとしての動き方を求められるため、経理部門に関しては経理部長を登用しようと考えています。しかし、どうしても現有のメンバーでは任せられる人材がおらず、外部から採用することを決めました。現職では採用ブランドが高くないため、そもそも候補者が多くない中、留意すべき点はどこでしょうか?

Answer

ご相談者の場合、以前もスタートアップの経験をお持ちでいらっしゃるとのことですので、「どのような人材を採用するべきか」、そして「採用の際の留意点」という2点についてお答えします。合わせて、このコラムの読者の皆さんは、もしご相談者の企業やスタートアップに転職するとしたら、どのような点が入社を決めるポイントになり逆にネックになるのか、ぜひ一緒にお考えください。

まず、社長や経営陣はどのような会社にしたいと考えているのか、それを通して何を成し遂げたいのかというビジョン、ミッションをしっかりとご自分が理解されていることが重要です。恐らく、この点に関してはご自身が転職の意思決定をされた際にも確認されていると思いますが、あらためて齟齬がないか確認しておいてください。

その次に、ご自身はどのようなチームにしていきたいとお考えになっているか整理しましょう。自らの部下になる方になりますので、どういう方が好ましいか「求める人物像」をイメージしてください。「あくまでスキルが重要」、「スキルが足りなくても人物面が重要」などです。大変失礼な言い方になるかもしれませんが、現職に初めから「ぜひ入社したい。昔からあこがれの企業でした」という方はいらっしゃらないと想定されたほうがよいでしょう。つまり、妥協できるところはどこか、妥協できないところはどこかを、現有戦力も考慮して検討するということです。スキルがある方は、報酬面など求める条件も高いものになることが考えられます。その予算が確保できるのかも重要です。

面接の場では、特にご自身が任せたいと思っているスキル面の確認もさることながら、「ミッションやビジョンに共感できているか」「チームとのカルチャーフィットはどうか」を見極めていただければと思います。既に任せたい業務はあるわけですが、ずっとその業務に携わってもらうわけにはいかないですよね。候補者となる方もキャリアプランをお持ちでしょうし、それではキャリアアップが望めないと早期に離職されてしまう懸念があります。ですから、入社後のキャリアパスをできるだけ提示することも必要でしょう。

ただ、ミッションやビジョンに強く共感いただけているのであれば、早期離職のリスクは低くなる傾向にあります。ご自身が転職活動をされている際のことを思い出してみてください。「この人と働きたい」と思った人がご自分の入社後すぐに辞めてしまったり、「このビジネスは面白い」と思っていた事業内容がピボットしてしまったりという経験はお持ちでしょうか? そのような不測の事態が起こりやすいスタートアップは、採用にも苦労しますが、リテンションにも苦労します。早期離職の可能性をできるだけ低くしておく意味でも、ミッションやビジョンへ共感できているか、カルチャーとのフィット感が高いかがポイントになりますので、その点をぜひ見極めていただければと思います。リテンションのために重視すべきは勿論この2点だけではないのですが、採用の場面でできることですので、ぜひ重視してください。

以上が私からの回答ですが、このコラムをお読みいただいた皆さんは、どのようにお考えになりましたか? スタートアップへの転職を考える際、確約できるものではないものの、入社後どのようなことができるのか、その成長性や将来性が重要ですよね。ただ、それもミッションやビジョンがぶれていたり、そもそもご自身のカルチャーがフィットしていなかったりしたら、そのような企業で働きたいと思われるでしょうか?

今回は採用側の目線でのご相談を紹介しました。「ミッションやビジョンへの共感やカルチャーフィットだけではだめ」など、ぜひご意見・ご感想をお願いします。アクシアムではスタートアップ以外にも外資系大手事業会社やコンサルティングファームなど、様々な企業の採用支援を行っております。採用側の皆さんにも個別事情はおありだと思いますので、お気軽に一度ご相談いただければ幸いです。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

伊藤 嘉浩

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

伊藤 嘉浩

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。

日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)