転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第229回
2023.06.08

「社会的意義」と「年収」、つぎのキャリアではどちらをとるべき?

現在30代前半。大学卒業後、新卒で大手IT企業に入社し、コンサルティング営業を3年間経験しました。その後、外資系戦略コンサルティングファームに転職して6年目に入り、来年にはマネージャーに昇格予定です。現在の年収は1200万円で、マネージャーに昇格すると1500万円程度になると予想されます。

大学時代、2年間ほど経済的に困窮している方を支援するボランティアをしたことがあり、とても充実した時間を過ごしました。ただ卒業後はお金を生み出すということも経験してみたく、ビジネスの世界でキャリアを作ってきました。今の仕事にはもちろんやりがいがあり、自分の成長を感じることもできているのですが、ふとこれまでの社会人人生を振り返ってみたときに、今よりも大学時代の方が充実感があったのではないか? と思うようになりました。

昇進後、年収が1500万円程度に上がることは大きな魅力ですが、一方で社会的意義のあることに身を置きたいという想いも出てきています。どちらもとることができればいいのですが、そういうものではないとも理解しており、どのような判断軸をもって自分のキャリアの方向性を定めていけばいいのか、悩んでいます。ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

学生時代に没頭したことは記憶に深く刻まれますし、価値観の形成に大きく影響しますね。価値観に関する点については明確なお答えは難しいのですが、キャリア形成という観点から見解を述べさせていただきます。

社会的意義とは
(1)すでに豊かな生活を送っている人々に、さらに便利になるための付加価値を提供する
(2)困っている人々・苦しんでいる人々を支援する
(3)身の回りの不便なことを解消する
など、人によってとらえ方は異なるはずですが、筆者は(2)をイメージされる方が多いという感覚があり、あなたの学生時代のボランティア内容からも、今回は(2)だと仮定してお話を進めます。

SDGs、ESG、ソーシャルグッドなどのテーマが重要視される昨今では、(2)において特に医療、福祉、経済などの面で支援をする事業が増えてきました。大手企業が新規事業として参入することもありますし、スタートアップが参入し、VCや一般企業から投資/出資を受けるといった具合です。その多くは株式会社ですので当然ながら社会的意義の追求だけでなく、利益を上げられるビジネスモデルを作り、そのための組織作りを行い事業継続を目指しています。

社会的意義のある分野であるがゆえに、お金も人も集まりやすく事業機会が増えたので、その分野でキャリアを築いていく機会(求人)も増えました。

あなたが質問の中で触れているように、社会的意義が高い=高い報酬を得られないという考えをされる方は多いですし、たしかにその傾向はあると感じます。ですが事業がVCや一般企業の投資/出資対象となることも多くなってきましたので、以前よりも報酬は得やすくなってきました。

またサービスを提供する事業側だけではなく、インパクト投資などのテーマで出資側として社会駅意義のあるビジネスに関わっていくこともできる時代であり、その場合は、さすがにファームのマネージャーに昇格したあとの報酬を得ることは容易ではないかもしれませんが、職務内容・職位によっては現状維持程度を確保できる可能性もあるように感じます。

究極的には「社会的意義と年収の、どちらを人生で大事にしたいか?」ということにはなりますが、そこまでどちらかに10:0と極端にウェイトを置かなくても、社会的意義3:年収7、もしくは社会的意義6:年収4というようなウェイトでつぎのキャリアを探していくこともできると思います。社会的意義と年収は必ずしもトレードオフではなく、ある程度どちらも追うことができるのではないでしょうか。

30代前半で1200万円という年収を得ていらっしゃいますし、今回のような質問をされているということは、ある程度経済的な余裕をお持ちなのだと推察します。そうであるとするなら、個人的意見にはなりますが、やって後悔するよりも、やらないことを後悔するほうが後悔の度合いが強いのでは、と思います。

あなたが大学時代のボランティアで感じたやりがいや充実感を大切にして、もう一度それを追求してみるのもよいのかもしれないですね。戦略コンサルティングファームでしっかりと実績を積まれ、マネージャーへ昇格予定となるほどの能力をお持ちですので、今回のチャレンジ・転職で万が一うまくいかなかったとしても、きっとその後からでもキャリアの軌道修正をできるのではないでしょうか。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。