転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第136回
2014.06.05

休職して留学中の商社マンです。戦略コンサルティング会社に転職するべきでしょうか。また、回答期限や入社日は延期してもらえますか?

新卒で総合商社に入社。休職して海外MBAに来ている35歳です。来月卒業予定で、戦略コンサルティング会社からのオファーをもらっており、転職するつもりだったのですが、最近になって、元の会社からも新規に立ち上げる海外事業開発のメンバーとして戻って来いとの要請を受けています。提示された年収はほぼ同じです。将来、グローバルな企業の経営者になりたいと思っているのですが、どちらがキャリアコンサルタントとしてお薦めでしょうか?また、コンサルに転職する決心をする場合、元の会社への断りのタイミングはいつがいいのでしょうか。もし可能であれば、一度、商社にもどって1年後、戦略コンサルタント会社に転職したいと思っているのですが、入社を待ってもらえないでしょうか?

Answer

希望ははっきりしているようですが、質問ポイントが複数あり、ご自身でも整理がされていないように感じます。下記3点にてご回答いたします。

(1)35歳のMBAにとって、元の商社の新規事業開発と戦略コンサルタントは、どちらがグローバルな経営者になるためにプラスになるのか?

(2)休職を正式な退職申出にするタイミングはいつがいいか?

(3)戦略コンサルティング会社は、入社予定日を延期してくれるのか?

悩んでおられるポイントはこの3つの質問のように見えて、実際は初めて転職するにあたって覚悟、決意ができるかどうか、という問いに思えます。その上で、(1)は意思決定に重要な要素ですが、(2)や(3)は、キャリア形成上、さほど重要ではありません。

つまり、何よりも、(2)や(3)にかかわらず、しっかり(1)を考えるべきだというのが回答です。

(1)についてお答えすれば、現職にもどっても将来経営者になるための価値のあるキャリアは積めるでしょう。しかし、経営者になることや、キャリアの成功者になることを目的とするのではなく、経営者たる価値のある人間になることを目的とし、MBA後の5年間を価値のあるものにするにはどうすれば良いか、しっかりシミュレーションされる事をお勧めします。そして、労働市場で実際に、5年後その価値のある経験を「見える化」しておくことが肝要です。別の観点でご助言するとすれば、35歳以上の求人とはマネジャー、マネジメントで社外から採用する訳ですし、リスクをとって成果を出した人、チャレンジした人、内部にいないタイプの人を求めますので、その意味では、商社に戻って成果を出したというよりも、商社の外に飛び出して成果を出した人のほうが、求められると言えます。

戦略コンサルタントの経験と商社の海外事業開発の経験とでどちらが良いかということは簡単には申し上げられません。しかし、商社に限らず、MBA卒業時は生涯に一回しかないタイミングです。失礼な言い方になりますが、そのタイミングを活用しないということは、あえて申し上げますと、「リスクをできる限り下げて成功したいのですが、どうすればいいですか?コンサルのオファーを担保しながら、元に会社にもどって、そのまま上手く成果がでて出世できそうであれば、コンサルのオファーをその段階で断りたい。」というご意図が見え隠れしてしまいます。

前後して恐縮ですが、(3)についての回答を先にします。戦略コンサルティング会社のみならず、採用通知を発行する企業が、入社を来年迄待ちます。と言ってくれる可能性は極めて非現実的です。実際、過去に1年延期してくれたケースが存在しますが、それはパートナーが個人的に「自分が権限を持っている間は、君ならいつでも採用するから、またうちに来たくなったら、私に直接連絡ください。」というようなシンデレラケースです。

通常オファーレターには回答期限が付きます。事業会社なら1~2週間、長くて1か月、コンサルは通常、年間計画があって前年10月にオファーした人の回答期限が翌年の2月というように、すべてのオファー対象者に等しく期限を設定する場合も多いですが、個別対応なら1~2か月というところが良く見られる期限です。

(2)については、実際、ご自身がどうしたいか決めた上で、対応策を決める必要があります。戦略コンサルティング会社のオファーを承諾した上で、入社日だけ延期する場合と、オファーを担保したまま復職して、1年後、転職の意志決定をする場合とで、対応策は違ってきます。考えておくべき点は、以下の2点です。

1点目: 意思決定のタイミングをどうすべきか判断するにあたり、考慮すべき点は、元の会社に退職申出の時期によって、元の会社にしこりが残るかどうかです。過去、多数の企業派遣生や休職で留学したMBAの方の転職を支援してきましたが、一番揉めるのは、帰国直後半年から1年以内に退職するケースです。部署が決まり、一旦着任したのに、短期で退職申出される方が会社として迷惑です。しこりが残るケースは、留学前に退職申出を行った人より、復職後、すぐに辞める人の方が多いです。確かに、元の会社に復帰してから仕事にやりがいを感じられず、1年以内に転職する方はいますが、その場合は、計画的なものでありません。現時点で選択ができるなら、卒業、復帰前に、転職の意志決定を行い、退職申出をされることを強くお薦めします。

2点目:(1)について決めなければ、(2)は決められません。商社にもコンサルのどちらにも良い顔をしようとしたら、逆に、どちらにも、しこりが残るような対応になりかねません。これまで育てて下さった元の会社への誠意があるなら、筋を通して退職申出を行い、退職後も支援していただけるような辞め方を考えるべきでしょう。辞めるにあたって、辞める理由ももちろんですが、辞めるタイミングこそ、応対辞令の上で、もっとも重要な要素となります。

最後に、繰り返しになりますが、初めての転職にあたり、覚悟、決意ができるかどうかということが今回のご質問のポイントだと思います。新しいキャリアには将来何があるのか全てが見えないので、最初の一歩を踏み出す意思決定を躊躇するのは、どんな人でも同じです。しかし、経営者を目指すのであれば、それを乗り越えなければいけません。将来の想定外の出来ごとに対処できるビジネスリーダー、経営者とは、当初予定された選択肢から人生を選んだ人ではなく、予定外の選択枝を自ら生み出すぐらいの経験を様々な形で積んだ人だと私は思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)