転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第112回
2012.05.02

営業職のみの経験でMBAを取得すると、営業職しか選べないのでしょうか?

私は現在営業職で働いています。これまで営業職以外の仕事に就いたことはありません。

最近、MBAの取得を検討し始め、とある人材紹介会社の方に卒業後の就職について相談したところ、「MBAを取得しても営業職しか選べない可能性が高い」というアドバイスをもらいました。本当に営業職の経験しかない人は、MBA取得後も営業職しか選べない可能性が高いのでしょうか?

Answer

ご回答の前にお伝えしたいのは、その人材紹介会社の方の助言は極めて不適切だと思われることです。また、ご自身も「確率が高い」というのは何%以上が高いということで質問されているのかわかりませんが、まずはMBAの価値を改めて示しておきたいと思います。

結論から申しますと、20代の方であれば、営業経験者の方でもMBA取得後に営業ではない職種に就くことは十分に可能だと思います。

以下、MBAで真剣に学ぶことを前提でお答えします。

28歳程度までに海外の大学院でMBAを取得した場合、業界・職種の両方を変えることに成功した人は数多くいらっしゃると思います。MBA取得後、事業会社の営業から投資銀行や戦略コンサルに転職したり、事業会社の事業開発や経営企画・財務会計などにキャリアチェンジしたりという人も多いことから、営業を要求されるような会社に応募しなくても構いません。もちろん、営業やマーケティングをそのまま続ける人もいます。

ご卒業時の年齢が28歳から32歳程度になると、業種を変えなければ、営業から異なる職種に変えることは可能です。28歳未満の方に比べると難易度は高くなるものの、まだまだ営業から変えることが可能な人は多くいらっしゃいます。

ご卒業時に32歳から35歳までなら、営業しか経験のない人の場合、MBAをとって営業から異なる職種に変わるためには、MBAランキングのトップ10校を狙うだけではなく、インターンシップなどの活用や戦略的なキャリアメイクの中で、かなりの工夫や努力が必要です。

35歳を超えると、はっきり申し上げて一気に難しくなります。MBAといえど、12~13年のキャリアの資産を放棄することになるので、35歳でゼロからの出発となりますし、市場では若手ポテンシャルと競うことになるので、採用側から見たコストの面でも経済合理性がありません。

違う観点でいえば、MBAを単なる「転職や、営業から違う職種に変わるためのツール」として考えるだけではなく、MBAを取得して「何をやり遂げたいのか」を考えてみましょう。そのほうがもっと人生に広がりがありませんか?MBAの可能性や多様性をもっと知ることができれば、MBA出願の苦労も乗り切れると思います。

■今回の方同様に、MBAを検討している方からのご相談も多く、加えて先日のアゴス・ジャパン共催「20代MBA留学の意義・価値とキャリアを考える」セミナーにて沢山のご質問をいただきましたので、今後、MBAを考えている方からのご質問に対する回答をまとめて掲載します。

MBAに関連する質問と回答

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)