転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第169回
2017.03.02

履歴書だけではダメなのか…「職務経歴書(レジュメ)」の役割とは?

30代後半で、初めての転職活動を行います。転職エージェントの方などにお会いすると、皆さん「職務経歴書を提出してください」と仰います。履歴書を見ていただき、どんな組織に所属していたかが分かれば、おのずとこれまでの職歴は理解していただけるのではないでしょうか。採用面接の場で熱意をお伝えできれば、それでよいのではありませんか? そんな思いから、わざわざ時間をかけて作成するモチベーションが湧きません。職務経歴書を用意すべき理由をお教えください。

Answer

まず、他者にご自身の人材像を知ってもらうのには、様々な要素があります。採用のプロセスは、書類選考や面接を通してそれらを確認するために存在します。

職務経歴書は、実績、スキル、志望動機、性格上の強み、物事への取り組み方など…ご自身を構成する様々な要素を「効率的かつ端的に伝えるためのプレゼンテーション資料」と捉えてください。

職務経歴書の書き方そのものについては、『職務経歴書の書き方~ひとつ上の職務経歴書を作るには~』でも触れております。あわせて参考にしていただければ幸いです。

ご相談者には、展職及び採用における、職務経歴書の役割と重要性が十分に伝わっていない様子です。下記に詳しくご説明したいと思います。

<採用者の視点から>
採用者が応募者情報を見る時、ほぼ間違いなく「職務経歴書」を初めに読んでいます。エージェントからのリファレンスがあったとしても、職務経歴書の完成度が低い場合は面接にすら呼ばれないケースが増えてきており、職務経歴書の完成度を高めることは重要です。

1.書類選考において、採用したい人材像であるかの判別ツール

採用者は、「採用したい人材像が見て取れる」方にしか、実際に面接する労力を懸けません。具体的には、特定のスキル・知識・ご経験・人脈をお持ちであるか、また、任せたい職務を行うポテンシャルが期待できるか、などの軸を持ち、それに沿った特定のキーワードやアプローチ法が記載されているかによって判断します。

※採用者の求める人材像については、直接人材像をヒアリングしているエージェントが詳細を理解しています。また求人票(Job description)と呼ばれる資料からも読み取れますので、コンサルタントへの相談・参照をお薦めします。

2.書類選考において、ビジネスパーソンとしてのレポーティング・コミュニケーションスキルの判別ツール

要素をごちゃまぜに記載していたり、てにをはの運用が誤っていたり、読み進めやすい体裁に整っていなかったりといった例がよく見られますが、その場合は事象の整理能力や伝達能力に期待できないと判断されても仕方ありません。

3.面接において、建設的なディスカッションの前提資料

書類選考だけでなく面接の直前にも、職務経歴書は読まれています。採用者は、確認すべきポイントについて、書類に記載がない部分を念頭に置いてから面接を始めます。面接では職務経歴の要約を口頭で確認する場合もありますが、その後は経験の詳細を深掘りすることが多いです。例えば、「どんな問題に対し、どんな状況で、どんな選択肢を勘案し、どんなプロセスで、どうやって人を巻き込み、どうやって解決又はやり遂げたか、そこでの学びは何だったか」など具体的なエピソードを聞いて、応募者を理解しようとします。

また、わざわざ面接というコミュニケーションの時間を取るのは、互いの展望や熱意を確認したり、発展的な議論を行ったりするためでもあります。職務経歴書の記載が薄い場合、確認すべきポイントが多すぎて面談時間内にチェックしきれなかったり、スキルと経験をなぞるだけで終わってしまったりします。時間内に十分にポジティブな印象を残せていれば別ですが、そうでない場合は、情報不十分により採用が見送られてしまいます。

<ご相談者の視点から>
転職活動を行うにあたって職務経歴書をご準備される方が多いですが、じつは日ごろから職務経歴書を作成し、アップデートをかけておくことは有益です。

4.ご自身のビジネスパーソンとしての経験の棚卸し、概要把握、再確認のたたき台
面接対策をさせていただく中で多いのは、過去の経験の詳細を思い出していただくこと。いざ話そうとすると、具体的な数値を記憶からすぐに辿れなかったり、端的に言い表すことができなかったりします。日ごろから経験の棚卸として記載を重ねていただいていると、その作業に使う時間が省けます。また、書きあがった職務経歴書を読み返すと、思いがけずご自身のキャリアの全体像や特徴が浮かび上がってくることもあります。あとは、応募の際に、相手のニーズに合わせた内容にチューニングするだけで済むのです。

いかがでしょうか? 上記の通り、転職のタイミングに限らず、ご自身のキャリアを創っていただくうえで、職務経歴書は重要です。その有用性をご理解いただき、作成にも前向きになっていただければ幸いです。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)